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12.別れと約束

 教会に着いて、事情を話すとリートさんのもとに案内された。


「おっ、アルスか。けがは大丈夫か?」


「リートさんほどのけがはしてないですよ」


 右腕の無いリートさんを見て何とも言えない気分になる。


「俺は生きてただけで、十分だよ。もう、あそこで死ぬつもりだった。でも君のおかげで僕は命を救われたんだ。ほんとにありがとう」

 少し目に涙を浮かべながら感謝を言われる。


「おれも一人じゃ、あのミノタウロスは倒せなかったです。途中全く歯が立たなくなって……死にかけたときにリートさんがおれを助けてくれた。あの時ハイブリット魔法を教えてくれなかったら……」


「力になれたなら、よかったよ。ところで、俺に複数属性のことを隠してたな。まったく規格外な男だよ」


「それをいうならリートさんだって、ハイブリット魔法の説明、ちょっと隠してましたよね。魔法を別の属性で覆うって、混ぜる方が重要じゃないですか」


「まぁまぁ。ちゃんと意味があるんだよ。俺の最近の仕事は少し話したよな。王都で魔法の家庭教師をやっているんだ。俺の持っているスキルのせいで受け持った生徒の魔法の習得がかなり早いんだ。良いことかもしれないがそのせいで、魔法を創造する、応用する力が身につかないことが多い。だから、自分で考えて、自分で見つけてほしかったってことなんだ」


「そういわれたら……言い返せないですね」


「ところで何か用があるんじゃないのか?」


「あぁ、実は――」


 ミノタウロスの素材の話をする。

 おれは全部リートさんに譲りたいといったが、断られてしまった。

 結局ミノタウロスの角と宝珠はおれが、大魔石と両手斧はリートさんがもらうことになった。

 宝珠は強力な杖の素材になるらしい。


 その後は魔法の話やリートさんの今後の話を聞いた。


 バレル子爵の依頼の内容は娘の家庭教師だったが、治療で王都に戻ることになり、仕事を断ったこと。

 ギルマスの好意で明日王都に送ってもらえること。

 冒険者はもうやめて、右腕の治療が終わったら、魔法の先生をすること。

 右腕がどうなるかは今のところはわからないとのこと。


(もっと、魔法を教わりたかったが……)


「もしアルスが王都に来ることがあれば、会いに来てくれよな」


「もちろんです。ありがとうございました」


 別れを告げ、ギルドに報告に向かった。


 受付にいたメープルが気付いてくれた。

「あ、アルスさん。お疲れ様です。分配の件はどうなりましたか?」


 先ほどの話をメープルにもする。


「分かりました。少し待っててください」


 メープルは素材を取りに席を外す。


「あ、アルス君。話し合いは終わった?」

「あぁ。その受け取りに……」


「そっかー。ところでアルス君、今回の件で懐がうるおったようですなー」

ふざけながらレクチェが指でつついてくる。


「そうだな。ちょっとした小金持ちになった気分だよ」


「そんなアルス君にクイズです。アルス君がダンジョンから帰ってきたあと、寝らずに傷の治療をしてくれた人がいます。誰でしょうーか?」


「ベットに倒れた後の記憶が……もしかしてレクチェか?」


「ブッブー。レクチェちゃんもアルス君がミノタウロスと戦ってると聞いた後に、助けに向かっちゃう健気な乙女ですが、あの日世話をしてくれたのは、メープルだよっ」


「そうだったんだな。ありがとうな。あとでメープルにもお礼をしとくよ」


「せっかくだからメープルが欲しがっていたもの、好きなお店を教えてあげる。明日デートに誘ってあげてよ。あの子あした非番だから」


「う、うん」

レクチェの勢いにのまれて返事をする。


「ちなみに明後日はあたしが非番なんだけどなー」


「わかった、分かったから。明日はメープルをデートに誘う。明後日はおれとデートしないか?」


「やったー。アルス君ならOKだよ。なら明後日ねー」


 そういうと颯爽と受付業務に戻っていった。



「お待たせしました。こちらの二つですね。どうぞ」


「ありがとう。メープルは明日非番だと聞いたんだが、少し買い物に付き合ってもらってもいいか」


「……はい。いいですよ」

 照れながらもOKをくれた。


「じゃあ、明日の10時にギルドの外でいいか?」


 メープルはコクリと頷いた。



 さて、デートなんていつ以来だろうと考えながら、その日は宿に戻った。




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