11.戦いの後に
戦いの後の高揚感が身体を包み込む。
格上のミノタウロスを倒せた。
喜びよりも安心感がどっとでてくる。
その場にバタンと倒れる。
「あぁぁ、もう一歩も動けねぇ。」
ミノタウロスとの戦いは紙一重だった。
おれ一人では絶対に勝てなかった。
倒したのはおれだが誰も死なずに済んだのはリートさんのおかげだろう。
そして強敵との戦いは実力を引き上げる。
命のやり取りという極限状態でおれのスキルも魔法技術も成長した。
おそらくリートさんの教育スキルの効果もあるのではないか。
ステータス
名前 アルス
スキル 教師(鑑定D/S、教育C/S、武具扱いE/A、スタミナC/A)
魔法(火E/S、水C/S、風C/S、氷C/S、雷D/S)
秘匿D/A
戦闘が終わって4時間ぐらいたった頃だろうか。
レクチェや他の冒険者が助けに来てくれた。
「アルス君、生きてる?」
「何とかね……死ぬかと思ったよ」
「よかったぁー。ほんとによかったぁ」
涙目になりながら、おれをそっと抱きしめてくれる。
レクチェの温もりを感じ、少し顔が緩む。
(他の冒険者からの嫉妬の視線がすごい…)
「早く手当てをしないと」
持ってきた回復ポーションをおれに飲ませようとする。
「おれより先にリートさんを頼む。右腕が……」
「大丈夫。そっちは別の冒険者が対応してるよ。命は助かるよ」
その言葉でほっと一安心する。
「アルス君も重症だよ。戻ったら安静だね」
「そうだな。モンスター討伐はちょっと休みたいかも」
そんな話をしながら、応急手当をしてもらい、ダンジョンから脱出した。
負傷者が多かったためか、帰りは馬車が用意され街に帰った。
到着したのは明け方だった。
そのまま治療を受けた後、ギルドの用意した少し高めの宿で気絶するように眠った。
誰かが部屋に入ってきた気もするが、あまり覚えていない。
そのまま1日寝続け、起きたのは次の日の朝だった。
部屋を出ると、宿の女将さんからギルドに来るようにとの伝言を受け取った。
ギルドに到着し一緒に緊急依頼を受けた仲間たちから手荒い祝福を受けた後、ギルドマスター室に呼ばれた。
ギルマス室には、ギルマスのモラード、黒鉄のキズナのリーダーサンビ、レクチェ、メープルがいた。
「おぉ、目を覚ましたか。よく生きて帰ってきてくれた。今回の緊急依頼の成功、バレルのギルドマスターとして心から感謝する。ありがとう」
とモラードからすごい勢いで感謝された。
「アルスさんのおかげで誰も亡くならずにすみました。アルスさんが無事でほんとに…よがっだでず……」
メープルには泣かれてしまった。
サンビからも
「おれたちが弱かった。すまなかった」
と謝罪された。
おれが戸惑っていると、レクチェが助け舟を出してくれた。
「はいはい。みんな落ち着いて―。まずはアルス君からダンジョンでの話を聞かないとっ!!」
みんな席に着き、ダンジョンでの話が始まる。
まずはおれがミノタウロスとの戦闘のことをモラードに報告する。
「――で、ギリギリミノタウロスを倒せたって感じです」
「お前が規格外なことがよく分かった。持ち帰ったミノタウロスを鑑定させて、特別魔ってことも分かった。特殊な武器も持ってたし、モンスターのランクはB以上なのは確実で、もしかしたらAの下位ぐらいになるな」
「間違いないと思う。おれもミノタウロスを近くで見たけど、あれには一生勝てないと思ってしまったよ」
サンビは俯いたまま話す。
モラードは少し考えた後
「おそらく今回の新ダンジョンの異変の原因は、そのミノタウロスだな。通常ボスクラス魔物は階層移動することはない。ボスクラスで移動するのは特別魔物だけだ。あまりのレベル差に魔物が逃げ出して上層部に集まって、溢れかえってしまったってところか。早いとこダンジョン最下層まで確認しないとまずいな。メープル、王都のギルドに連絡を取っておいていれ」
メープルは連絡を取りに部屋から出ていった。
ダンジョンの話が一通り終わり、報酬の話となった。
今回の緊急依頼の危険性を加味して、報酬が上乗せされるらしい。
「レクチェ、渡してくれ」
「はい、アルス君。中身を確認してね」
もらった袋の中を確認すると大量の金貨が入っていた。
驚いているとレクチェが教えてくれた。
「今回の依頼のMVPのアルス君には金貨20枚だよ。ボアとかの素材は全部換金して、報酬に含んでますっ。あとは倒したミノタウロスの素材とはこのあと話し合いをお願いしてもいいかな?」
持ち帰った素材はミノタウロスの角、両手斧、大魔石、宝珠があるそうだ。
ミノタウロスの角、宝珠は武器の素材
両手斧は火炎のラブリュスという特殊武器
大魔石もボアとは比べ物にはならないサイズで買い取りの打診も来ているそうだ。
レクチェの説明が終わると
「おれたち黒鉄は当たり前だが辞退するよ。今回おれたちは何も出来なかった。命を助けてもらっただけで十分だ。リートさんとアルスには感謝しかない」
「じゃあアルス君とリートさんの話し合いが終わったら、素材をわたすね」
「おう。そういえばリートさんはどうなった?」
「リートさんかなり重症で、まだ教会で治療を受けてます。失った右腕はこの街の教会ではどうにも……」
「そうか。あとで行ってみるよ」
ギルドでの話し合いが終わり、おれはリートさんのお見舞いに行くことにした。




