10.緊急依頼⑤
ミノタウロスと対峙し、改めて実力差を実感する。
先ほど放った氷球は手に持った両刃斧で軽くはじかれ、まったくダメージは通っていない。
ならば今度は早さ重視。
「水弾」
身体に当たりパァーンといい音が鳴り響くもミノタウロスは関係ないとばかりに突っ込んでくる。
ヒュンッ
目の前を斧が通り過ぎる。
「うぉっ」
慌てて距離をとるが、ミノタウロスの追撃は止まらない。
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ
重たい斧を軽々と振り回す。
「氷盾」
パリンッ
(ダメだ、攻撃を止めれない)
壁際に追いこまれ、斧の振りかぶりが大きくなる。
「1枚でだめなら3枚でどうだ。氷盾、氷盾、氷盾 」
パリンッ、パリッ、ピキッ
目の前で斧を止める。
すぐに斧の纏う炎で氷が融けるも、一瞬動きが止まった。
その僅かなスキにミノタウロスの足に触れる。
「うおぉぉぉ、送雷」
自爆覚悟で電気を流し込む。
「グゥゥゥゥ」
ミノタウロスは突然の電撃に身体が硬直する。
おれ自身もかなり痺れたが、何とか窮地を脱して、ミノタウロスを鑑定する。
『特別魔物 ミノタウロス 弱点 ??』
(嘘だろ……何もわからん。スキルが低すぎたか)
ミノタウロスは走りながら横に斧を構え、振り抜く。
こちらも水防膜を発動し迎え撃つ。
「水刃ッ」
両刃斧と水の刃が衝突。
「ぐぅっ」
ドンッ
水刃は斧に貫かれ、おれは壁に叩きつけられた。
腹部には深い傷。
吹き出る血液。
氷で固めて止血する。
痛みで気絶しそうだが、何とか立ち上がるが、ミノタウロスの攻撃は止まらない。
「グモォォォォ」
突進してきては、斧をぶん回す。
それを氷盾と水防膜で受けて、なんとかダメージを抑える。
氷盾と水防膜のおかげで致命傷は避けられているが、有効な攻撃手段を見つけられずにいた。
◆◆◆◆
「ぐっっ」
積み重なったダメージで身体が動かず、ミノタウロスの攻撃を受けることが多くなってきた。
攻勢にでたいが……ダメージを与える手段もない。
粘り続けるおれに痺れを切らしたミノタウロスは両刃斧に力を籠め、炎を全開に噴出した状態で切りかかってくる。
今までの攻撃をはるかに上回るパワーだ。
(受けきれないっ――)
「風壁」
どこからか放たれた風魔法はおれを吹き飛ばした。
おれはミノタウロスの攻撃を受けてないことに驚きながら、目を開くとそこにはボロボロのリートが立っていた。
「アルス、諦めるな。まだ、やれることがあるだろっ。これで理解しろっ」
リートは痛みで顔を歪めながら、魔法を放つ。
「水風刃!」
ザシュッッ
遠方から放たれた水の刃をミノタウロスは回避し、壁に衝突する。
魔力を使い果たしたリートは地面に倒れ、動かない。
(この魔法は攻撃じゃない。おれに対するアドバイスだ。さっきの魔法は、魔力を「混ぜて」いる)
さっきの水風刃は水刃を風魔法で覆うだけでなく、風魔法を混ぜ合わせて魔法を構成していた。
足りなかったピースを手に入れ、おれは立ち上がった。
「水風刃ッ!」
リートのそれよりも大きな水風刃は、油断していたミノタウロスの左腕をスパンと切断した。
「まずはリートさんの腕の分だ」
「グゴッォォ」
何が起きたか分からず、慌てるミノタウロス。
すぐに左腕がないことに気付き、鋭い眼光でおれをにらみつける。
その表情にさっきまでの余裕はない。
右手の両刃斧を構え、一気におれとの距離を詰める。
勢いよく振り降ろされる斧、受け止める氷壁。
一瞬の膠着を見逃さない。
「最後は切られたおれの分だぁぁぁ」
放たれた水風刃はミノタウロスの胴体を分断した。
今日の更新は少し短めです・・・




