タイトル未定2024/06/29 17:10
澄香に会いたいーー
ああ澄香に会いたい。
寂しいよ、澄香。
もし、この身が2つあったなら、1つは仕事。もう1つはーー当たり前だろ、澄香。
「うわー!気持ち悪いー!」
自分で言ってて何を言う。あと、何が当たり前なんだ?
とにかく、いろいろあったけど、一番愛してるのは澄香だけ。もしまた来世で出逢えたならーー
「2人だけの楽園を築こう」って言うね。
今世は奨学金と住宅ローンに追われてそれどころじゃないから。
プロポーズの時も・・・
「今世は奨学金と住宅ローンに追われるから、楽園を築くのは来世にしようーー」
きっと、澄香なら分かってくれるさ。
なかなか『町中の南波』に行けないからな。
出逢った時のように、飾らず、気取らず、仲良く付き合ってくれたらーー
思い立ったから、電話しよう。
コール5回で澄香は電話に出た。
「もしもし、義範君?もしもーし」
「やあ、澄香ちゃんーー」
「嫌いよ」
「えっ、ええ~っ!?」
「何で今まで、連絡くれなかったの?」
「えっと・・・なんだかんだ忙しくてーー」
「メールでもいいじゃん!」
「あの、マジで忙しくて、ついーー」
「もういい!」
「・・・澄香ちゃん?」
「もういい!って言ってんの!一回逢えば、あとは何とかなるんだから」
「澄香ちゃんーー」
「今からそちらに行くから、待っててよね」
「え?来てくれるの?」
「うんーーそうだよ」
「んじゃ、待ってるよ」
「はい、じゃ、またあとでね~」
ウキウキしていた。澄香ちゃんが家に来る。
部屋は片付いているから、コーヒーを飲むためのお湯を沸かそう。あとは、気になった箇所を整理してーー
ピンポーン
えっ!もう来たの?
ドアの向こうには、花邑杏子が。
「ダメだ、帰れ」
「まだ、何も言ってないじゃんーー」
「帰れ」
「あのな、私ーー」
「帰れと言ったら、帰れぇ!」
「そんなに言うことないじゃん!」
「五月蝿い!帰れ!」
「覚えてろよ、貴様・・・わーん!」
花邑杏子は泣きながら帰っていった。
さてーー澄香はまだか。
待ちきれないや。愛しすぎて。
ピンポーン
今度は間違いなし!
「こんばんは」
来たぁーーーーーーーーーー!
我が愛しの澄香ちゃん。
あら、両手にはたくさんの荷物が。
「今日は飲もう♪」
沢山の缶ビールと、何か美味しそうな肉が。
「今日は凄いよ。神戸牛の燻製だよ!」
よく見るとーータンやハラミ、サガリなどが真空パックに入っている。
「これらは、焼くんだよね」
「そうだよ。だからキッチン貸して」
「その必要はないよ」
「何で?」
「七輪あるから」
「ああ、そう~」
義範の部屋には、四畳半のバルコニーがある。心地の良い休日の午後に『東雲うみ等身大抱き枕』を熱く抱いて惰眠を貪っていたが、花邑杏子に取られて以来、ゲンナリしてしまった。以来、あまり有効活用していなかったのだが・・・
「う~ん、開放的」
澄香ちゃんは気に入ってくれたようだ。
炭おこしも完了。最初はタンから。
「ねえ、恐ろしくいい臭いがするよ・・・」
「でも、澄香ちゃんは嗅ぎ慣れてない?」
「知っての通り、うちはガスだから。炭火のポテンシャルには敵わないわ」
「軽く炙るだけでいいんだよね」
「ほんのりと火は通ってるからね」
仰せの通り、軽くジュージューと炙ってーー
上がり~!
お皿に取り分けて、2人同時に口へと運ぶーー
嗚咽しか出てこなかった!
あまりにも旨すぎて・・・まさに神が食すと言われる神戸牛。しかし、まだハラミとかが控えている。これからどうなっちゃうんだろう。
じっと、将来の妻を見るーー
もう、ほろ酔い加減だ。いいなあ。愛しいなあ。