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心の中で

ちょっと時間あきました

 時間が経って呼吸を整えることはできたが、常に闇の中に対して警戒しなくてはいけなくて心はまったく休まらなかった。

 しかしこの場で留まっていたところで、状況は変わらない。出口を探すために動かなければならない。

 壁を伝っていけばいつかは洞窟の外に出られるだろうか。魔物との戦闘はできるだけ最小限にして……といってもこちらから魔物の居場所を知るすべがないからどうしようもないが。


 洞窟を出たらエミリスに文句を言ってやる、と意気込んで再び洞窟を進むために立ち上がって足を進める。

 否、進めようとした。

 しかしうまく立ち上がることができずに前のめりに倒れて両手をついてしまう。

 何かがレイクの足を掴んだ。わけではない。ただ足が動かなかった。足はかすかに震えて力が入らない。


 レイクは立ち上がろうと足に力をいれとうとするがそれでも足は動かない。自分の意思に逆らって本能が前に進むことを許してはくれない。

 闇が、こわい。

 何がいるか、何があるか、わからない、わからないものはこわい。

 だから動けない。

 動かない足を無理に動かそうとするのを諦めて、その場に座り込む。


「もう、いい」


 もういいじゃないか、このままこの場で待っていればさすがのエミリスも数日後には探しに来てくれる。かなり厳しいエミリスだが見殺しにするほど冷徹な人間ではない。

 それまで警戒を緩めず、近づいてきた魔物を倒していけば生きて帰ることはできるだろう。危険を冒して出口を探さなければいけないこともないだろう。


「そうだ、このままここにいればなにか戦い方をみいたすことができるかもしれない!」


 そんな言い訳じみた言葉が口に出てしまうほど自分を騙したがっていた。


 闇が本音を映し出す。

 暗い。怖い。疲れた。足が痛い。腕も痛い。全身が痛い。痛いのは嫌だ。お腹すいた。シチューが食べたい。温かい物食べたい。冷たい酒が飲みたい。浴びるほど飲みたい。酔って寝たい。みんなと笑っていたい。会いたい。笑ってご飯を一緒に食べたい。一緒にお酒を飲みたい。くだらないことを話したい。なんでこんなことを。助けて。しんどい。つらい。面倒臭い。帰りたい。


 魔物が憎い。


 身体が痛いのも、家族を殺したのも、こんなことをしなければいけないのも、すべて、すべて、すべて魔物のせいだ。


「ちゃんとしなきゃだめだよレイク」


 懐かしい声を聞いた気がした。

 もちろん幻聴だ。だって声の主はあの日魔物に殺されて死んだのだから。


「殺さなきゃ」


 痛い。胸が痛い。黒く澱んだ感情が胸の中で渦巻いて、胸のうちから刺してくるような。

 いつもの魔物を見たときみたいに狂ってしまいそうな感覚。

 だけど壊れることもできずに理性はまだ動き続けてる。それが逆に不快感は増して、気持ちが悪い。


 必要なものは集中。音を聞き分けろ。音の距離と方角を正確に。

 相手の場所がわからなければ剣が当てられない。剣が当てられなければ殺せない。


 見えなくても殺すために全てを聞き逃すな。

 レイクはまた闇の中へと歩き出す。ゆっくりではあるがしっかりとした足取りで。

またちょっとあくかもてす

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