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闇の中で

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  ごつごつと尖った岩肌に身体を打ち続けながら転がり落ちていく。手を伸ばして掴める場所を探すが、手のひらはどこも掴むこともなく空を切る。


 全身ボロボロになりながらようやく一番下まで落ちて止まることができた。上を見上げれば急な坂が壁のように立ちはだかっている。岩の凹凸を利用して上ることができるかもしれないが、もう一度この坂道を転がり落ちれば命に関わるかもしれない。


 洞窟の先を見ても暗闇で、奥へいけばいくほど何も見えなくなっていく。戻ることもできず、進むのも困難。いつもと違って目隠しをとって逃げることもできない。エミリスはこの状況が作り出したかったのだろう。


 少し乱れた服を直して背負っていた大剣を構える。

 強くなるためには、目を塞いでも戦えるようになるためには、この先へ進まなければならない。


 進めば進むほど入口の穴から入る光は届かなくなっていく。それでもレイクは進み続ける。

 進めば進むほど光は減っていき、ついにはまったく何も見えない闇の中にレイクはいた。


顔を動かしても、瞼を閉じて開いても視界から得られる情報は変わらない。

しかしそれ故、他の情報は異様にレイクの中に入ってくる。

吹き抜けるヒヤリとした風の感触も、上から滴る水音も、どこからか流れてくるカビ臭い匂いも。


水音の反響音から空間を把握していく。なんて技術はもっていない。手探り。文字通りに手探りで進んでいく。


どこまで進んだのだろう。どれくらいここにいるのだろう。何も見えない闇の中をひたすら歩いて気が狂いそうになる。


だけどそんな変わらない状況に変化が訪れる。

カビ臭かった洞窟だがそれよりもひどい。雨に濡れた生ゴミの袋のような腐った匂いが漂い始めた。

それに合わせて小さな複数の足音。場所が違えば子供がいるのかと錯覚してしまうところだ。

しかしそれが発する声は低く下卑た笑い声のように聞こえる。


つまりは魔物だ。


この洞窟に住む魔物は一応頭に入ってる。声の特徴からおそらくこいつらはゴブリン。しかもこの洞窟特有の、闇の中でも夜目の効く闇ゴブリンだろう。

洞窟の岩を砕いて作った不格好な自然の武器を使う。


姿は見えないが囲まれている、のだろう。四方八方から声が聞こえる。逃げるか、戦うか。どちらにしても囲まれている以上何か考えなければ難しいだろう。


「……っ!」


前方に構えた大剣を振り下ろす。

駆け寄る足跡と闇ゴブリンの息が近づいてきたのだ。

しかし大剣が何かを捉えることはなく、ただ地面を派手に割っただけだった。


「いっ……つ!」


それに合わせたように何匹かの闇ゴブリンが切りつけてくる。ふともも、横脇、頬。鋭い痛みが走る。


闇ゴブリンが通ったであろう方向に大剣を振りかぶっても駄目で、大剣はやはり空を切ってしまう。


何度やっても当たらない攻撃、だけど切り傷はただただ増えていく。

次第に呼吸は荒くなって全身から不快な汗が湧き出て地面に滴り落ちていった。


「う、あぁ……うわぁぁ!」


ついに恐怖に耐えきれなくなったレイクは目の前の闇へと大剣を振り回しながら走って進む。


それを見逃さず、進行方向にいた闇ゴブリン数匹がレイクに向かって飛びかかってきた。

もちろんレイクにはそれが見えていない。闇ゴブリンの声から近づいてきたのがわかるくらいだろう。


それでも恐怖にのまれたレイクの振り回す大剣が数匹の闇ゴブリンを巻き込んで、遠くに吹き飛ばす。

それによって生まれた包囲の穴から走り去っていく。


何度も壁にぶつかりながら、それでも足を止めずに、ただ闇ゴブリンから遠ざかろうと走り続ける。


無我夢中で走って辺りに生き物の気配がないと気がつく頃には息絶え絶えで、壁にぶつかったことで新たな傷は増えて満身創痍だった。

壁にもたれかかるように腰をおろして体を休める。


しかし気を抜くことはできない。いつでも敵に対応できるように剣を突き立てて、警戒を緩めることは許されない。

久々の投稿でした。

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