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冒険者ギルド

はい

 次の日の朝はギルドへ向かう。いつも来ているギルドなのに、いつもとは違うように感じる。レイクはいつもみんなの後ろを歩いていたから、背中越しからのギルドしか見たことがない。しかし、一人で行動している今は、それだけでいつもと違う景色に見えてしまう。


 まずレイクが向かったのはクエストボード。魔物討伐から採取、護衛、その他さまざまなクエストが張り出されている。仕事を見つけなければいけないレイクはここから仕事を探す。


 しかし採取の知識があるわけでも護衛の経験があるわけでもない。その他の仕事にしてもそう。いままで魔物討伐ばかりしてきたレイクは戦うことしかできなかった。

 となれば魔物討伐の依頼から探せばいいのだが、基本的にはパーティーを組むことが推奨されている。一人でクエストとなると採取が主な仕事になり、一人でもできる魔物討伐の仕事はあまりない。


 一人でも受けられないことはないが、初めて一人でクエストをこなすレイクにとって、身の丈以上の仕事は何かあったときに対応できない可能性がある。そこらへんを踏まえてレイクは一つのクエスト用紙を手に取る。

 フォレストドッグの討伐。森に住む犬型の魔物。隣街までの道付近に巣を作ったため、討伐してほしいとの依頼。

 フォレストドッグは家族単位で群れる。多くてもせいぜい5匹程度、少なければ2,3匹だろう。フォレストドッグを討伐し、巣を破壊することで依頼完了となる。


 クエストはクエスト用紙を持って受付すればいいだけ。ウエストによって違う報酬、期限、失敗時の罰金などの説明を受け、あとは各自期限以内にクエストをこなす。

 それだけなのだが……レイクは紙を持ったままギルド内をさまよっていた。同じ場所を行ったり来たり。周りからも不審な目を向けられていた。

 5分くらいその行動をしていると、一人のギルド職員がレイクに声をかける。


「あの……レイクさん?」


 女性の職員に声をかけられたレイクは体をビクリと震わせて、女性職員のほうを向く。レイクの半分ほどしかない身長。身長に反して腰まで伸びた金髪。ゆったりとしたたれ目に困惑した眉。少しだぼついたギルド職員の服を着た、一人の女性職員がレイクの不振行動に見かねて声をかけてきた。

 女性職員の名前はエミリア。クエスト受付などを担当しており、パーティーにいたころから、お世話になっている。


「他のみなさんはどうしたんですか?」


 いつもパーティーで一緒に来ていたレイクが、初めて一人でいるところを見てエミリアは疑問を持つ。困惑した表情でレイクを見上げる。


「実はパーティーを抜けまして」


 不安そうな表情のエミリアを少しでも安心させようと笑って言ってはみたものの、所詮無理やり作った笑顔でしかなく、その笑顔は歪なものになってしまった。

 エミリアの表情は困惑に悲し気な表情が混ざって余計に心配させてしまったようだった。


「どうして……あんなに仲が良かったのに」


 エミリアから見たパーティーの雰囲気は決して悪くなく、むしろいいものだった。パーティーの解散やパーティーからの脱退、追放は、パーティーメンバーとの不仲によるものが多かったりする。それを知っているエミリアはレイクたちの仲を疑ったが、以前から見ているパーティーの様子からは考えられなかった。


「俺がいると、ギロたちは前に進めないから……」

「レイクさん……」


 エミリアもレイクの事情は知っている。今の言葉でだいたいのことは察することができるだろう。


「これからどうするんですか?新しくパーティーとか……」

「ははっ」


 レイクは困ったように乾いた笑みをこぼす。


「いますかねぇ……こんなお荷物、パーティーに入れてくれる人格者」


 自虐で返されたアイリスは何と返していいのかわからずオロオロしていた。


「はみ出し者たちが集まったパーティーなら入れてくれるかもしれません!」


 から元気にしか見えない笑顔を向けられた彼女はもう泣きそうだった。

 (それに)

 新しくパーティーを作ってそこで元気に過ごすなんて、レイク自身があまり気乗りしない提案だった。いつかきちんと戦えるようになってギロたちのパーティー戻れるかもしれないという願いを捨てきれずにいるレイクには。


「当分は一人でもクエスト受けて生活していきます。それで自我が保ったまま動ける戦い方を見つけていこうかと」


 レイクは先ほどクエストボードから取ったフォレストドッグのクエスト用紙をアイリスに渡す。


「フォレストドッグ……そうですね、一人での討伐クエストは初めてですから、このあたりからしてみるのがいいかもしれません」


 エミリアはさっきまでいた場所から小さな台を持ってきて、その台に乗ってカウンターから顔を出す。台に乗らないと身長が足りないからである。カウンター越しに顔を合わせてクエストの受注を進めていく。冒険者の持つ登録証を呈示して、誰がどのクエストを受けたのかを書いて行く。

 問題もなく受注を終えてあとはクエストに行くだけになったレイクをエミリアは引き留める。


「困ったことがあったら相談、してくださいね?」


 レイクは何も言わずに頭を深く下げてギルドから出ていった。

ほい

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