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5話 洗濯洗剤

 学園に入学することになっているのは明日だけど、どうしてもアンの汚したドレスが着たくて仕方がない。

 あれは私の要望を詰め込み、高級な生地や装飾を使ったもので、完成を待ちに待っていたのよね。


 だからアンが汚したときはこの世の終わりのように絶望したわ。

 もう一着同じものを作る時間もないし、あのドレスを着るには汚れを落とすしかないんだけど、あんなべったり生クリームのついた汚れをきれいに落とす方法なんて……。



『ありますよ』



 本当にっ!?



『ええ、そのためには必要なものがあります。簡単に集められるものばかりなので、それだけ集めてもらえれば、ドレスに着いた汚れは落ちるはずです』



 そうとなれば必要なものを教えて! 今すぐ準備するから!


 そして、美の女神に必要なものを教えてもらい、洗濯洗剤を作る上で必要なものが揃っていて、作業のしやすい厨房に移動した。

 シェフたちは普段、料理とは縁遠い私が厨房を貸してほしいと頼んできて、顔を見合わせて動揺していた。

 厨房に必要な材料をメイドたちに集めてもらい、一通りの準備ができた私は、エプロンをつけ、腕まくりをして洗剤作りに取り掛かることにした。




 材料

 石鹸 70g

 重曹 2カップ(180mlの計量カップ)

 塩  大さじ2


 ・オーブンの天板に1カップのベーキングパウダーを広げ、約30分加熱する。

 ・ベーキングパウダーを加熱している間に石鹸をおろし金ですりおろす。

 ・加熱したことでサラサラの顆粒になったベーキングパウダーを冷ましたものに、すりおろした石鹸、残りのベーキングパウダー1カップと、塩を混ぜれば完成!




 ——と、いう感じらしい。

 この作業の映像が頭に流れてきたので、私は映像通りに作業する。

 美の女神が言うには、これをぬるま湯に大さじ1~2入れて、普通に手洗いすれば服がきれいになるとのこと。


 石鹸は屋敷にあるものを使わせてもらった。

 どうやら一般的に石鹼は高級なものらしいが、わがままを言えばどんなことでも叶えられる私が一言言えば、いくらでも与えてもらえるのだ。


 さっそく、完成した洗濯洗剤で、生クリームがべっとりついたドレスを洗ってみるとしましょう。

 正直、生クリームがついてからしばらく時間が経っていて、汚れが定着しているドレスは、汚れが完全に落ちることは期待していない。

 人前に出られる程度にきれいになっていればいいのだ。


 期待と不安に押しつぶされそうになりながら、メイドたちの反対を押し切って私自ら洗濯すると、汚れは見る見るうちに落ちていき、汚れがついていたとは思えないほどきれいに落ちた。


 まるで新品そのものじゃない!

 ここまできれいに汚れが落ちるとは思ってもみなかったわ。

 前世で使っていた時よりきれいに落ちている気がするわ。

 これも美魔法が関係しているのかしら?

 まあ、綺麗に落ちたならどうでもいいわ。

 早速ドレスを乾かして着てみるとしましょう!




 着てみたけど、後ろが長く、前だけミニ丈になっているデザインのフィッシュテールは気に入っているんだけど、魔法石がふんだんに使われていて重いわ。

 それに何より、コルセットとバッスルが堅苦しくて邪魔ね。


 この世界には暗黙の了解がある。

 それは階級によって着る服に決まりがあること。

 平民は白と黒一色のズボンやスカート、シャツなど単純な作りの服しか着る。


 貴族は【バッスルスタイル】という、スカートの後ろの部分に『バッスル』と呼ばれる腰当てを入れて膨らまし、コルセットを締めてウエストを強調するドレスを着るのよね。


 王族は、『クリノリン』と呼ばれる針金を輪状にして重ねた大きな骨組みを使って、スカートを膨らませたドレスにコルセットをつける。


 特に力を持つ聖女はなんでも着ていいとされている。


 平民は国や町の洋裁師ギルドから、白と黒の単純な服を無料で配給されていて、服にお金がかからないことから不満に思う人は少ないけど、貴族との大きな差は明白ね。


 貴族が着る【バッスルスタイル】というドレスを着るにはまず、シフトドレスというウエストを縛らないワンピースの上から、『ストマッカー』というⅤ字型のパネル状胸衣を差し込み、『コルセット』を絞める。

 そして、『ペチコート』と呼ばれるスカートを2枚重ねて紐で腰に固定するという感じね。

 最後に、大きなハンカチを肩にかけ、ハンカチの先をコルセットの中にしまい込み、エプロンをつけてようやく完成よ。



『思うんですけど、異世界の結婚式で着るようなドレスは、この世界の貴族が着る【バッスルドレス】よりだいぶ楽な上、見た目もきれいですよ』



 そうなの!? 着てみたいっ!!



『この世界ではまず見たことのないドレスですけど、貴族のコルセットとバッスルをつけたドレスを常識にしないことが、世界を変えるきっかけだと思います』



 美の女神の意見に賛成よ。

 世界を変えようとしているなら、まず自分から変わらなくちゃね。



『バッスルドレスに比べたら必要なパーツも少ないし、作業も楽だし、手伝ってくれるメイドの人数も少なくて済むはずですよ。何より、締め付けがコルセットとは違い、紐で固定されるだけだから、普段の生活も楽になるに違いないはずです』



 よし、ここはコルセットもバッスルも使わず、前世の日本で着られていたようなドレスを作るとしますか!



 美の女神の言っていたドレスの着方は、バッスルドレスよりはるかに楽なものだったわ。


 ドレスを足元着用後、脇のファスナー上部のカギホックを留め、ファスナーを上げる。

 ドレスのバスト上部分を自分のバストラインより少し上気味に合わせ、背中の紐を上から下に締め上げる。

 最後に背中の紐をお好みで締め上げたら、最後に少し下に引っ張り。バストラインの位置をきれいに整えれば完成!



 これだけできれいなドレスが着られるなら、試してみるほかないわね。

 私は、ヴェールトウ魔法学園に入学するために作られたドレスを参考に、一から異世界で着られていたドレスを作って、そのドレスをヴェールトウ魔法学園の入学式に着ていこうと思います!


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