閑話 アレックス・キングトンの想い
僕は女神の加護を受けなかったので、家族からも周りからも虐げられてきました。
魔法が使えない分、剣術で補おうと365日昼夜問わず剣術の稽古をしたおかげで、ほかの人より優れた剣の腕が手に入りました。
でも剣の腕は魔法が使えない僕の欠点を補うものだけにすぎない。
決して誇れるものじゃない。
魔法が使えることが常識のこの世界で、僕が周りの人より優れているものなんてない。
そんなある日、僕と友達になってくれたオルガは、俺の考えを覆す温かい言葉を言ってくれました。
『あなたは魔法が使えない分、努力をして手に入れた誰にも負けない剣術の腕を持っているじゃない。それは血の滲むような努力の結果なんだから、生まれながらに魔法が使えるだけの人よりもずっとすごい事よ』
そんな風に考えたことがなかったから僕は衝撃を受けました。
今まで僕が血の滲むような努力をしても、褒めてくれる人もいなければ、認めてくれる人もいなかったからです。
それは女神の加護を受けなかった僕がこの世界で生きていくには、努力して剣術の腕を磨くしかなかった。
その努力が魔法を使える人よりすごいことと言ってくれたことが、今までの努力が報われたようですごくうれしかったです。
これからも剣術の腕を磨いて、僕を友達と言ってくれたオルガを守れるくらい強くなろう、そう誓いました。
そんなある日、勇者にふさわしい剣の腕を持った人を選別する祭典があると風の噂で耳にしました。
どうやら聖剣を握って光が放たれたら剣聖の証らしいです。
剣聖とは騎士団の中でも聖剣を持つことを許された唯一の存在です。
数百年と聖剣に選ばれたものはおらず、剣聖はしばらくの間空席で、選ばれれば騎士団での地位が保証され、剣聖になる道が決まっているということらしいです。
もしかしたら、もしかしたら今まで必死で剣術の腕を磨いてきた僕なら、聖剣に選ばれるかもしれません。
それは期待でしかなかったけど、やらずに後悔するよりやって後悔したほうがいいはず。
でも、こんな出来損ないの僕が聖剣に選ばれるのだろうか?
不安だからオルガに相談してみよう。
僕は騎士科から遠く離されたオルガが通っている裁縫科の教室に向かう。
裁縫科の教室に着き、オルガを探すけどオルガの姿はない。
教室にいた女子生徒にオルガはどこにいるのか聞くと、ついさっき教室を出たばかりだと言っていたので、僕はすかさずオルガの後を追いました。
廊下を走り出してすぐ、幼い見た目の少年と話しているオルガを見つけた僕はオルガに駆け寄ろうとした時でした。
「オル……」
「やっぱり持っているものが大事よね。いいものを持っていて損はないわ」
……やっぱりそうですよね。
生まれ持ったものには敵わない。
努力をしても結局はいい才能がものを言うんですよね。
魔法も使えない僕が聖剣に選ばれるわけがない。
そんな事最初から分かっていたから、少しでも希望を持った自分が情けないです。
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