脳の損傷による幻覚、幻想(クローン人間)
店の近くの道路を、病衣を着たまま歩いていると後ろからパトカーのサイレンがけたたましく聞こえて振り向くと、
赤色の軽の車を数台のパトカーが追っていて、目の前でガードレールにぶつかり運転席から男が下りてこっちに近づいて来て、その姿に驚いた。
その男は自分にそっくりで、目の前まで来て、
「お前の事を捜していて、向かう途中で見つかってしまい、追われていた」
「え」と驚きながら混乱していると、大きな爆発音が聞こえて車が炎上し始め、慌てて男と車の近くに行った。
中を見ると若い女が意識を失っているようで、動かずに炎に包まれていて「早く助けないと」と、男に言ったが
「もう無理だ」と首を横に振り、
「俺はお前のクローンだ。
都大学病院で手術をした時に医者の実験で、細胞を取られて俺が作られた。
警官が来るからもう行くけど絶対に誰も信用するな、必ず会いに行くから」と言って、走って行った。
すぐに警官に囲まれ、荒々しく「こっちに来い」と、パトカーの後ろの席に2人の警官に挟まれるように乗せられた。
逃げ奴と同じ顔をしているのに驚く様子もなく、
「何を話していたんだ」と、凄まれ
「車に乗っている女を助けようと、『助けなくてもいいのか』と」
「それだけじゃないだろう、正直に言えよ」
「本当ですよ。
あんな短い時間でそんなに話は出来ないでしょ」
「そうか、まぁいい。お前も探していたから。
今から病院に連れて行く」と車を発進させ、
病院に着くと警官と看護師達に囲まれ、無理やりベッドに寝かされて医者に注射を打たれ、意識が無くなった。
目が覚めると、白いカーテンで仕切られただけの大きな病室に体を縛られ寝かされていた。
両手は動くので、縛っているの元を外そうとしたが外れず、ナースコールの配線を見つけ鳴らした。
直ぐに看護師が来て
「目を覚ましましたか」
「これを外して欲しい、トイレに行きたい」
「尿ですか便ですか」
「尿」
「分かりました」と1度で出て行き、尿瓶を持ってきた。
「歩いて行けるからこれを外してくれ、気が変になりそうで、便もしたいし」
「分かりました、少し待っていて下さいと」と言っ出て行き、オマルを持って来て、
さすがに腹が立ち「自分で行けるわ」と、大声で怒鳴りつけた。
慌てた様子で「少し待っていて下さい」と出て行き、2人の男の看護師を連れて来て、縛っている工具を外してくれ、2人に連れられカーテンから出ると左右にカーテンで仕切られている部屋が幾つか会って、右側に透明なアクリル板で仕切られたナースステーションがあり、正面に大きな部屋があった。
看護師に付き添われながら左側を進むと、正面の大きな部屋に入る頑丈そうな鉄の扉があって、扉の上に手術室と大きく書かれてあり、そこを過ぎてトイレに向かった。
トイレから戻り「お願いだから縛り付けるのだけは止めてくれ」と頼むと、
看護師同士で少し話した後、
「私達から見える様に、カーテンを開けても良いのだったら拘束をしなくてもいいけど、どうしますか」と、めんどくさそうに言われ、
「縛り付けられないのだったら、全然カーテンを開けてもらっても構いませんよ」と言って、ため息を付いた。