第8話 侵入者
裏ギルドとの戦いを終えてミレイの畑にて水を撒いていると土から出た眼がこちらを見ている。
「この調子なら夜くらいには収穫できそうだな。」
「それにしても大変でしたね。」
「ああ、裏ギルドの“強制ルール”のスキルには驚かされたよ。」
「でもアレス様、一人で全ての敵の相手をして無傷で勝つのは当然よね♡」
「今回ばかりは流石にだめかと思ったが水使いの力があって助かったな。」
一方その頃、クロスレッグ王国へと逃げ込んだ元パーティーと国王陛下とバロスは傷だらけになりながらも城内の比較的安全な一室に入り、これからのどうするかを話し合う。
「クソが! 何故ワシがこんな目に合わねばならぬ!!」
「ウィンビス王国への潜入に成功した裏ギルドの魔族もやられてしまいましたし。」
「あひゃひゃひゃひゃ……」
「レイドもこんなだしな、どうすんだよコレ。」
「仕方あるまい、最後の手段じゃが“ブサイ帝国”に援助を求めるとするかの。」
「正気かよ国王陛下!? ブサイ帝国と言ったら肌が黒くブクブク太った醜く汚い上に自分を絶世の美女と疑わない気色の悪い姫の【ベル・ブサイ】の居るところだぞ!?」
「そんな事は分かっておる! 休んだら行くぞブサイ帝国へな。」
休憩を終えブサイ帝国へと訪れた国王陛下は援助を求めるとレイドとベルの婚約を本人の意志とは無関係に決めることで援助してもらう。
「ウブブブ、やっぱりわたくしに相応しい男は王族じゃないとね〜♪ それにしても気に入らないウィンビス王国を攻め落とすなら早くした方がいいわ〜、だってそうでしょ? わたくしを差し置いて世界中から絶世の美女なんて言われてるだけで自分が世界で一番なんて勘違いしてるお姫様にはお灸を据えてあげなきゃ♪」
くっちゃくっちゃと片手に持ったケーキをほうばりながらウィンビス王国への苛立ちを見せるベル。
「うむ、どいつもこいつも我が娘のことを汚らしい眼で見おって! ウィンビス王国を滅ぼしさえすれば我が娘が一番美しいことが伝わるだろう、直ぐにでも攻め入るぞ準備せい!!」
「はっ!!」
ブサイ王は黒人騎士団を呼び戦争の体制を整え直ぐに進軍させる。
「では、そろそろ貴様らも黒人になってもらおうか?」
「それはどう言う?」
「なーに簡単なことさ、この国では白人は皆悪、黒人は皆正義の何をやっても許される帝国なのだからな。 無論この考えを世界共通にすべく我々は“多様性を謳う”のだ!!」
(それって多様性か? なんか気に入らない物を排除してるだけのような……)
「さあ、始めようか……やれ。」
「ぎゃあああああ!? あちいいいい!!」
「あっつ!? 何をする!!」
「焦げる!? 肌が焼けただれるうううう!!」
ブサイ帝国の魔法使いは高火力の火属性魔法で元パーティーと国王陛下とバロスを一気に焼き上げ黒人へと変えていく。
「あ〜たまらないわ、香ばしい香りが素敵ね♪ 黒人って最高よ何をしても許されるし白人なんて黒人を見ると殺しにかかって来るサイコ集団なんだから絶滅させないとね♪」
数時間に渡り燃やされた元パーティーと国王陛下とバロスは髪の毛を失い全身黒焦げになることで黒人へと生まれ変わる。
「あら? 動かなくなったわね、やり過ぎかしら?」
「いえ、まだ息の根は在るので生きてはいますね。」
「それより、もうウィンビス王国を攻め落としている頃だろう。 そろそろ報告しに我が帝国の最強の騎士団が戻り吉報を」
「陛下!!」
「ほうれ戻って来た、ご苦労であったな。」
「陛下それが……」
「なんじゃ慌ただしい、ウィンビス王国を攻め落としたのであるのよな?」
「いえ、なにやらバリアに阻まれ進軍できず更には兵力の半数以上を失いました!!」
「なんじゃと!? ばかを申すな!! 我が最強の騎士団じゃぞ!? ええい物量が駄目なら魔導部隊を出せ!! たかがバリア程度、魔力で出来ていよう?」
「はっ!! 魔導部隊出撃します!!」
魔導部隊を出撃させるも水のバリアに魔法も効かないどころか弾かれほぼ全滅しブサイ帝国へと報告しに逃げ帰る。
「陛下、駄目です! あれは魔法の類ですらありません!!」
「なっ!? ばかな、そんなことが……まさかスキルだと言うのか!?」
「このままでは我が帝国が亡き者にされるのも時間の問題かと。」
「おのれウィンビス王国め!! 敵の数はどうなっておる!? 1万か? 百万か?」
「それが、0です!!」
「0!? ばかを申すな!! 戦力0でどう負けてくるのだ貴様らは!? ええいこうなったらワシが出る!! 本当の戦いと言うのを見せてやろうではないか!!」
ブサイ帝国国王【マックロイ・ブサイ】は武器になる物全てを操るスキルを持っており城内にある武器を宙に浮かせウィンビス王国の前に立つ。
「マックロイ陛下!? あのバリアは危険です!! お下がりください!!」
「何を言う、敵前逃亡など王の恥! これだけの凶器を叩き込めば流石に割れるだろう、ふんぬ!!」
剣、槍、斧、弓矢、鉄球など様々な武器を四方八方から水のバリアへと向けて超高速でぶつけるも、その弾力性の前では全て弾かれ武器が騎士団へと突き刺さる。
「ぎゃああああああああああああああああ!!」
「チィ、思ったより硬いバリアじゃな……かくなるうえはこの転移魔法で中に侵入するしかあるまい。」
マックロイ王は転移魔法のスクロールを取り出し発動させると一瞬にして身体が消え、ウィンビス王国内部への侵入を成功させる。
「おお! 流石はマックロイ陛下、我々には考えつかぬ方法で侵入した!?」
「ふん、役立たずなお前達は城へ帰っておれワシが全てを終わらせといてやろう吉報を待つのだな。」
マックロイ王は侵入後、そのまま真っ直ぐにウィンビス城へと脚を進める。
一方で俺は誰かがウィンビス王国内へと侵入したことを察知し、その方向へと駆ける。
「アレス様? 急にどうしたの!?」
「侵入者だ! 明らかに邪悪な者が入り込んだ!!」
「そうなの!? アタシも行く!!」
「ああ、またあんな訳の分からないスキルを持った奴かもしれないし頼む!!」