第5話 裏ギルド
早朝セレナに連れられウィンビス王国内にある農家へと赴き食物が全て枯れているのを見て原因が何かを考えていると黒髪で翠色の眼をした猫耳と尻尾の生えたフェルパーと呼ばれる種族に話しかけられる。
「酷いものですよね?」
「君は?」
「アタシはミレイ、この農家で働いてるフェルパーです。」
「アレス様、原因は分かりましたか?」
「もう分かってるけど、まずはいつから枯れ始めたか聴かないとな。 ミレイ、最近何か変わったことは無かったか?」
「最近だと、あまり雨の降らない日が続いて井戸水が枯れて……それから確か悪徳裏ギルドの人から水を貰いましたよ?」
「その水を見せて貰ってもいいか?」
「はい、これです。」
水の入った桶を見せてもらい指で少しすくい舐めるとしょっぱかった。
「何か分かった?」
「これは塩害!!」
「塩害!? って何?」
「塩害ってのは植物に付いた塩が水分を奪う事で枯れてしまう事を言うんだ。」
「じゃあこの水のせいで食物が枯れたってこと!?」
「そうなるな、しかも塩分の多い海水だ。」
「許せないわ! でも裏ギルドの場所は誰にも知られてないからどこに行けばいいか分からないのよね。」
「それなら問題ない、この海水の匂いを辿ればどこに裏ギルドがあるのか分かりそうだしな。」
「じゃあ早速」
「いや、まずはこの畑を元の状態に戻すのが先だ。」
「どうして?」
「ほらよく言うだろ? 犯人は現場に戻ってくるって。」
「なるほどね、アレス様はそこまで見越しているのね!」
俺は広大な畑の枯れた原因である塩を水で全て吸い上げ、乾燥させると大量の塩を容器に入れる事で解決する。
「ま、こんなところかな。」
「枯れたのは残念だけど、これで普通に食物を育てられるようになったのね! ありがとうございました。」
「まあ待て、まだ終わりじゃないから。」
「他に何かすることでもありますか?」
「植物ってのは水だけじゃ成長出来ないのは分かるな?」
「え、そうなの!?」
「土にも気を使わないと直ぐに駄目になるんだ、だから塩とは真逆の砂糖を振り撒いておく。 つまりミレイだって辛い物ばかり食わせられたら嫌だろ? だからこうやってたまに甘い物で調整する必要があるのさ。」
「知らなかった、これで食物が甘い物が好きだったなんて!?」
「水は俺が必要な時に雨を降らせておくから心配すんな、この調子なら明日の朝になれば目が出て歯が出て鼻がさくことだろう。」
「それまでミレイの家に寝泊まりさせてもらいましょうかアレス様♡」
その日の夜、ミレイの家にて新鮮な採れたての野菜のスープをご馳走になった。
「美味いな、ミレイは料理も出来るんだな。」
「アタシは元々奴隷でしたので、色々あって料理くらいは出来ないといけなかったので。」
「ちょっと服を脱いでもらっていいか?」
「え、はい……」
ミレイは服を脱ぎ背中を見せる、その背中には奴隷の印である刻印がハッキリと浮かび上がっており未だに解放されていないことが分かる。
「アレス様、ミレイの奴隷の刻印消せない?」
「消すのは無理だな、代わりに所有者を俺に変えることくらいしか出来ないな。」
「ならお願いします! 所有者をアレスさんにしてください!! もうあんな辛い目には会いたくありません!!」
「分かった、セレナちょっと二人だけにしてくれるか?」
「はいアレス様♡」
セレナに外に出てもらうと俺は早速ミレイに服を全て脱いでもらい、俺も服を全て脱ぎ奴隷所有者変更の為の儀式を行う。
「まずは力を抜いて目を閉じて深呼吸をしてくれ。」
「はい、すーはー……」
「その状態で全てを俺に委ねてくれ。」
「はい。」
力を抜いたミレイは俺によりかかり、俺はミレイを抱き支えキスをする。 3分間キスをし続けたあと、床へとゆっくりミレイを寝かせ最後の仕上げとして営みを開始する。
「〜〜〜〜♡」
ことを済ませるとミレイは先程までの暗い表情から、ほんのりと顔を赤くし俺を見つめる。
「これでミレイは俺の者になったぞ?」
「今までの不安が一気に無くなって嘘みたい! アレス様と呼ばせてください♡」
「いや、今まで通りにアレスさんでいいぞ。」
「じゃあアレスさんと呼びますね♡」
「きゃあああああああああ!!」
儀式を終えた直後、外からセレナの悲鳴が聴こえ窓から覗くと筋肉質で右腕に“裏ギルド長”とタトューの入った男がセレナを連れ去って行くのが見えた。
「あの人、アタシの前の所有者!?」
「なんだって!? つまりミレイの所有者が変更されたことを知ってセレナをさらった訳か!!」
「早く追わないと何されるか分からないよ!?」
「そうだな、儀式の後だからちゃんと風呂に入って汗を洗い流した後じゃないと!! 風呂場はどこだ?」
「こっち!!」
切羽詰まった状況でミレイと風呂で身体を洗い急いで入浴すると、ちゃんと髪まで洗い更には食べた後と言うこともあり、しっかりと歯磨きをする。
「ガラガラガラ……ぺっ、よし追いかけるぞ!!」
「はい、あっ! 待って!!」
「なんだ?」
「まだ化粧してない!!」
「化粧か、確かに女の子にとっては大事なことだ。」
ミレイはパパパと化粧を済まし俺と二人で外に出ると裏ギルドの者と思われる人物はセレナと共にいつのまにか姿を消していた。
「逃げられたか!」
「ごめんなさい、アタシの化粧が遅いばかりに……」
「気にするな、裏ギルドの場所は既に特定してある。」
「え、そうなの!?」
「さっきの儀式中に所有者が誰でどこにいるのかは確実に場所までは分かっているからな。」
俺はセレナを連れ去って行った裏ギルドの者が逃げた先へとミレイと共に駆ける。
「え、ここって冒険者ギルド!?」
「なるほど、気を隠すなら森の中ってことか。」
「どういうこと?」
「おそらく、ギルド内には道は無いだろうな。」
「じゃあどこに?」
「冒険者ギルドの周辺を調べるぞ!」
俺とミレイは冒険者ギルドの周辺を調べると裏ギルドと書かれた鉄の扉が地面に剥き出しになっていることに気付き中へと侵入し様子を見ることにした。