第3話 セレナ姫との婚約
「水ファイヤーボール!」
俺はセレナ姫を助け来た道を戻るとゴーレムが神父に両手を振り下ろす動作をしているのを見かけ魔法を飛ばし当てると粉々に粉砕する。
「アレス様、凄いわ抵抗属性の魔法でゴーレムを粉々にするなんて!」
「助かった……のか……?」
「神父さん大丈夫?」
「なんとか……、まさか一国の王がこの様な仕打ちをするとは思いませんでした。」
助けたのは俺の信託の儀を行った神父であり黒髪でオカッパヘアーで男と思われる様な顔立ちで翠色のツリ目、身体付きはよく見ると若干胸が膨らんでおり脚はスラッと伸びており高身長だ。 因みに名前は“クローシェ・ノートン”と言うらしい。
「アレス様、その一国の王と言うのはクロスレッグ王国のことでしょうか?」
「間違いなくそうだな。」
「なんてこと!? 私はそのような愚息な国へ嫁ぐ約束をさせられていた訳ですね!! 許せないわ!!」
「これから私はどうすれば……」
「国へ帰れないし、そうだセレナの国へ住ませてもらうのは?」
「私からも頼んで見ます、アレス様も来ますか?」
「助かる、国外追放されて帰る場所が無かったんだ。」
「決まりね、帰ったら婚約破棄しないと。」
「ここは危険だから俺の魔法で帰るか、“転移魔法”!!」
三人の体は光に包まれ一瞬にして【ウィンビス王国】へと飛び、辺りを見渡すと夜だと言うのに人で溢れかえっていた。
「あら、クロスレッグ王国の方達ばかりいますね。 何が合ったのでしょうか?」
「お、アレス様じゃあないか!」
「オジサン、何か合ったのか? ここに居る人達ってクロスレッグ王国に住んでる人達だよな?」
「ああそうだな、あの愚王がアレス様を国外追放するって宣言してから魔導具全般が使えなくなってな。 それだけじゃない、聴いた話しじゃ小精霊が一体も居なくなったって聴いてよ、ウィンビス王国に避難しに来たって訳さ。」
「大変な事が起こってるみたいだな。」
「そうだな、大変な事はウィンビス王国でも起こってるらしいな。 王女様が病に伏せられているとか。」
「一度診てみないと分からないな。」
俺とセレナはウィンビス城で寝ている王女の病を診に城内へと入り、状態を見てみる。
「顔色が悪いな、しかも痩せ細ってる。」
「アレス様、これが何の病気か分かりますか?」
「誰が吹聴したのか知らんがこれは“栄養失調”だな。」
「え!? 栄養失調!?」
「いつ頃からこうなったか分かるか?」
「確か一ヶ月くらい前から野菜しか食べなくなってたわ。」
「その頃に誰か謁見に来たか?」
「うーん、そうそう確かクロスレッグ王国の使者が野菜だけ食べる事で健康になれるとか美肌になるとか言ってた気がするわ。」
「それが原因だな、動物性のタンパク質が足りてないんだな。」
「え、でも大豆とか食べてタンパク質は摂ってたわよ?」
「それは植物性のタンパク質だな、見なよ健康的な身体か? 顔も老けて美肌と言えるか?」
「じゃあ薬草を使っても効果が無かったのって!」
「ただの栄養不足だからだな、肉はあるか?」
「うん、有るけど何するの?」
「決まってるだろ、料理するんだよ。」
「でもお母様、食べてくれるかな?」
「なーに、菜食主義者にはチートデイとか言う本末転倒な日が存在するんだ今日をそのチートデイと言えば食べてくれるさ。 キッチン借りるぞ?」
「うん、こっちだよ。」
セレナにキッチンへと案内され冷蔵庫を開くと野菜ばかりで肉が一つも備蓄されていなかった。
「まいったな、肉が一つも無いな。」
「そうだ! 一刻を争うから今から肉屋に行きましょう!!」
「こんな夜中に開いてるとこあるか?」
「大丈夫、私が呼びかけるから。」
仕方なく肉屋へと足を運ぶが案の定閉まっており、俺達はドアを叩いて中から人が出て来るまで待つ事にした。
「誰か居るー? おーい、誰かー開けてくれないかー?」
「全然出て来る気配がありませんね。」
「流石に寝てるか、どうするかな。」
「あら、セレナ姫とアレス様ではありませんか。」
そこへクローシェが手に大量の手羽先を抱え、食べ歩きをしていた。
「丁度良いとこに来てくれた、その手羽先くれないか?」
「あー、セレナ姫もアレス様も庶民の食べ物は始めてですか? 構いませんよ、どうぞ。」
手羽先を受け取るとキッチンへ向かいナイフを使って骨から身を削ぎ落とし、皿に盛り付け女王の元へと持って行く。
「お母様のお肉よ食べて!」
「セレナ……、駄目よ……健康の為にお肉は食べられないわ……」
「女王様、菜食主義者にはチートデイと言う物が存在します。 肉を食べないと筋力低下や思考能力の欠如と言った不健康まっしぐらの未来しかありませんよ?」
「ですが……」
「お母様、お願い食べてください!」
「…………」
「娘を悲しませないでくれるか? そんなに食べられないなら俺が食べさせてやるよ。」
「アレス様、何を!?」
俺は肉を口に入れ噛み砕き柔らかくしてから女王様に口移しで食べさせる。
「!?」
「アレス様!?」
それでも飲み込めそうにない女王に水使いの力を使い飲み込ませる。
「肉が……全身を這いずり回る感覚……あ、あ、ああああああああああああああああああああん♡」
女王様は久々の肉が体内に入りビクンビクンと身体をのけ反らせ反応しまくるとガリガリだった腕や脚に筋力が戻り老け顔だった顔にもツヤやハリが戻り以前の美しい姿を取り戻す。
「お母様!?」
「心配をかけましたねセレナ、この様なことで民に迷惑をかけてしまうとは……アレスさん有難う御座いました。」
「そうだ、お母様! 私クロスレッグ王国への婚約破棄をしとうございます。」
「それは何故です?」
「あー、今クロスレッグ王国には小精霊が居なくなっててな危険な地となっているからだな。」
「まあなんてこと!? ではそのように使いの者を出しましょう。」
「それと、お母様さえ良ければその……」
「ん、俺の顔に何か付いてるか?」
「私アレス様と添い遂げたくありますわ♡」
「ふふ悪くありませんねアレス様、娘共々宜しくお願いするわ。」
こうして俺はウィンビス王国のセレナ姫と婚約することになり、ウィンビス王国の国民達も賛成し現在クロスレッグ王国の民が避難しに来た事で起きている食料問題を解決すべく行動を起こすのであった。