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第1話 【水使い】と隣国の姫

 俺の名は“アレス・ラインハルト”現在Sランクパーティー【王の剣】のメンバーとダンジョンアタックをしている最中なのだが迷宮内で15歳の誕生日を迎えわざわざ戦闘中に神父に呼ばれ【信託の儀】を行っている最中だ。


「ではアレスよ、この水晶玉に手を翳しなさい。」


「これで良いか?」


「くっ、このモンスター硬いな……ロア!」


 水晶玉に手を翳すと後ろからガキンとパーティーのリーダー“レイド・クロスレッグ”王子の声が響く、彼はクロスレッグ王国の王子であり、その国王陛下も俺の信託の儀の立会人としてこの場にいる。


「分かってるよ! “メルトダウン”!!」


 次に声を発したのは仲間の“ロア・ギブリット”魔法を得意としモンスターに弱体化や仲間に強化といったバフやデバフを使用できる。


「国王陛下、我が息子のことです当然ながら【剣聖】のギフトが与えられましょう。」


 ヒゲの先を指で摘み伸ばしながら語るのは俺の親父で先祖代々【剣聖】のギフトを授かりクロスレッグ王国の騎士として努めを果たしてきたラインハルト家の大黒柱である。


「それは頼もしい限りじゃな、してギフトは何かな? 無論剣聖であろうな?」


「むっ、どうしたのだ?」


「国王陛下、ラインハルト様……それが……」


 神父の顔は青ざめており、言いづらそうに目を逸らす。


「ハッキリ言わんか! 黙っておっては分かららんじゃろ!!」


「は、はい! その【水使い】です。」


「は?」


(水使い!? やった、剣聖よりも扱い易く自由な戦術をとれるし父上も納得してくれるはず!!)


 【水使い】俺が転生前に限界を迎え最も欲したギフトだ、何故なら水は何処にでも存在し形を自由に変えられるからだ。


「父上! 水使いですよ!! やりましたね!! ……父上?」


 父上の顔は怒りに歪んでおり俺を睨みつけていた。


「何が“やりましたね”だ貴様! 我が家系は代々【剣聖】を排出して来たのだ!! 【水使い】だと? こんなしょうもないギフトを授かりおって、よくも私に恥をかかせてくれたな! 本日を以て貴様はラインハルトと名乗るな!!」


「そんな! 父上、それはつまり……」


「家から出て行けと言っておるのだ、まさか理解出来ない訳でもあるまいな?」


「全く、ワシにまで恥をかかせるとは」


「国王陛下?」


「今日はラインハルト家から【剣聖】のギフトを持った者を我が兵力へと迎え入れるつもりがこの様な事になるとはの。」


「国王陛下、何もこの場に居る者が話さなければ恥にはならないかと」


「ふん、何を言っておる! 既に全国民に魔法でこの場の映像が流れておるのだ!! ワシを危険なダンジョンに呼んだだけでなく恥までかかせる様な輩は我が国には要らぬ!! 即刻国外追放されるが良い!!」


「そんな!?」


「ぷくく……、いい気味だな。」


「ホントだな、どれだけ自分が役に立ってないか理解してないぜ。」


「え?」


 レイドとロアはモンスターを倒したタイミングで俺に振り返り嘲笑う。


「まだ分からないのか? オレ達だけでこの前人未到のSランクダンジョンは踏破できると言っているんだよ。」


「そうそう、回復する必要もねえし見ろよこんな武器でもモンスターを倒せる力があるんだ。」


 レイドの剣とロアの杖は刃こぼれしており俺の“耐久力上昇”の魔法で壊れていないだけであり、更に言うと二人が無傷でいられるのは攻撃を受けた瞬間傷が開く前に“リジェネレーション”自然回復魔法のおかげである事もすっかり忘れてしまっているようだ。


「だからそれは!」


「この期に及んでまだ自分が有能だとぬかすつもりかアレス! いい加減眼の前から消えろ……さもなくば」


 父上はゆっくりと腰に携えた剣を抜刀し俺に鋭利な刃を向ける。


「父上……」

(本気だ……俺よりも遥かに弱い父上が無理のに俺を本気で殺そうとしている?)

「分かったよ、けどこれだけは言っておくよ俺が居なくなった事で国は衰退する。」


「あ? 負け惜しみか? 意味不明なこと言ってないで何処かへ行けよ無能が!」


 俺は踵を返すとダンジョンの奥から女性の悲鳴が響いてきた。


「きゃあああああ!!」


「悲鳴!? それも近くだ!!」


「はっ、大した実力も無い女冒険者が自分の力を過信して見合わない場所へ来ただけだな。」


「助けないのかよ!!」


「助ける訳無いだろ、自業自得だ。 オレ達は国王陛下を国へ送る事の方が先決だからな、そんなに助けたきゃお前が行けばいいだろ? これで2度とお前の顔を見なくて済むんだからよ!」


「では、国王陛下行きましょうか。」


「うむ、ワシを危険な場所まで連れてきおって……」


 俺は仲間だった奴らと父上を見送らず悲鳴の聞こえた方へと駆けると壁沿いまで追い詰められた怪我をした女の子がドラゴンに襲われており、今にもその鋭い牙で噛み付かれそうになっていた。


「グオオオオオオオオ!!」


(間に合わない! いや方法はある、人間は約70%は水分で出来ている。 ならば!!)


 俺は左手をドラゴンの方へ右手を女の子の方へと翳し同時に無詠唱魔法を発動させる。


二重魔法デュアルマジック!!」


 ドラゴンを最小限まで弱体化させ、女の子を最大限まで強化すると女の子に噛み付いたドラゴンの牙は豆腐の様に脆く崩れ、その場から逃げ去って行った。


「大丈夫、……てあれ? 君は確か隣国の。」


「はい、セレナ・ウィンビスです。」


 助けた女の子はセレナ・ウィンビス、隣国のウィンビス王国の姫様であり冒険者である。

 その美しく長い金髪と吸い込まれそうなくらい澄んだ蒼い眼は世界中の国から婚約を迫られる程であり背丈は低いが芯のある性格である。


「なんでこんな所に居るんだ?」


「その、お母様の病気を治す為に薬草を取りに来たのです。」


「薬草ね、普通の病気じゃないのか?」


「はい、全ての薬草は試しました。 それが駄目でして、このダンジョンなら効く薬草があるかと思いまして。」


「よし、なら俺が治してやるから悲しい顔をするなよ。」


「ん。」


 そう言いセレナの頭を撫でると顔を赤くしうつむく、安心したのだろう。

 俺はセレナの怪我を治すとお姫様抱っこをしウィンビス王国へと向かう事にした。

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