4-1 私たちは絶滅しましたが
絶滅種シリーズ第五弾 ニホンオオカミ編
はじまります。
はじめまして。私、ニホンオオカミと申します。脊椎動物亜門、哺乳網ネコ目 (食肉目)。イヌ科イヌ属に分類される、オオカミの一亜種。
・・・・・・絶滅種です。
実はニホンオオカミという呼び名は、明治時代になって現れたモノ。じゃぁ、それまでは?
オイヌとかオオカミとか、ヤマイヌと呼ばれて居りました。漢字だと御犬、大神。山犬、犲とも書きます。
『大神』は神を敬って言う語。つまり日本では、古くから『超自然の能力を持つ獣』とされ、山神の化身・使者、『御犬様』として敬われました。
『犲』は『豺』と同字。犭は犬、才は断ち切る。つまり『肉を食いちぎるヤマイヌ』という意味です。
オオカミと聞いてポンと浮かぶのは、『狼』でしょう。この字の良は、浪を表します。『押し寄せる浪のように、群れを成して襲う』という意味です。
コレだけ聞くとブルっとしますが、犲は生態系の頂点捕食者。畑を荒らす害獣の天敵。つまりソレらを退治してくれる、有り難い存在でした。
日本各地の神社で祭られている『犬神』や『大口の真神』も、ニホンオオカミです。
奥多摩の武蔵御嶽神社や、秩父の三峰神社を中心とする山間部には、魔除けや憑き物落とし、害獣除けナドの霊験を持つ、オオカミ信仰が存在します。
つまり迷惑していた、というコトですヨ。鹿や猪、猿などの困ったチャンに。
私どもと同じく絶滅種である、北海道のエゾオオカミは別亜種です。エゾオオカミは大陸の、ハイイロオオカミの別亜種なので。
諸説あるようですが、ニホンオオカミもエゾオオカミも絶滅しました。つまり、解明したくても出来ません。
ニホンオオカミが大陸のハイイロオオカミと分岐したのは、約17万年前だとか。・・・・・・考えたダケでクラクラします。
アレですか? 日本列島が大陸と別れた時、違う道を選んだと。島で暮らすうち、小型化したと。
そうなんです。私どもニホンオオカミは、他のオオカミよりコンパクト。スラリと伸びた脚は、山を駆け回るのに最適。脚力も強く、最強ハンター集団でした。
人との共存を選んだ犬は野で暮らし、私どもは山暮らし。だからヤマイヌ。違いは他にも。尾です。クルンとしているのが犬、垂れているのがオオカミ。
耳が小さく、周囲の環境にも溶け込み易い。夏と冬で、毛色が変化するんですヨ。黄褐色から灰褐色へ。オシャレで機能的でしょ?
私どもの好物はカノシシ、イノシシ。そしてサル。エゾオオカミと違って大規模な群れを作らず、少数精鋭。二頭から十頭ホドで行動します。
因みに中国でオオカミと言えば、『豺』か『狼』です。ベツモノですので、混同される事は有りませんでした。今は、どうなんでしょう。
『豺』はドール。
食肉目イヌ科の哺乳類で、体長76㎝から100㎝。体形はキツネ似。耳の先は丸く、尾はフサフサした毛に覆われています。体色は黄褐色ないし赤褐色。
アカオオカミと言った方が、通りが良いでしょうか。
『狼』はタイリクオオカミ。
食肉目イヌ科の哺乳類で、体長60㎝から90㎝。体形はイヌ似。吻は長く、耳は小さくて直立。尾は垂れ、体色は灰褐色のモノが多いですね。
どちらも気性が荒く、現役バリバリ。私どもは絶滅しましたが、末永くお元気で。