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匿名の恋愛相談サイトで、恋に悩む少女に俺がしてあげたアドバイス。 ~学校で評判の美少女が、アドバイスどおりのことを俺にしてくるんだが?  作者: 波瀾 紡
◆第二部:こっちか!

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【47:私ホントは、今でもね……】

 瑠衣華は自分と付き合っていたことをカッコ悪いと思って、周りに内緒にしたがっている。

 一匠は疑いもなくそう思っていたが、瑠衣華の本当の気持ちはそうではなかった。


 瑠衣華と一匠が元カップルだという事実が周りに浸透することで、再び付き合う可能性がついえてしまうと思った、というのが真相だった。


「そう……なんだ」


 そう言えばこの前、駅前のコンビニでたまたま出会った時に、瑠衣華はこう言っていた。


『事実かどうかと、他人に言いふらすことは別。他の人に知られたくないだけで、私たち二人の間ではそれは事実なんだから』


 周りに知られたくないのは、決して恥ずかしいからではないとも言っていた。

 だから今瑠衣華が言ったことは、きっと事実なのだろう。


 ──と言うことはつまり、瑠衣華は、今も……


 再び一匠とよりを戻したいと思っているということだ。しかもその気持ちを、遠回しではあるものの、今、直接一匠に伝えた。


「瑠衣華……」


 瑠衣華はしばらくじっとしたまま、何も答えない。目は閉じているし、もしかしたら眠ってしまったのか?


 一匠がそう考えていると、ふと瑠衣華はまた薄目を開けて口を開いた。しかし相変わらず、ぼんやりした表情と話し方だ。


「ん……? いっしょー君、私のこと……瑠衣華って呼んでる……?」

「ああ。瑠衣華だっていっしょー君って呼んでるじゃないか」

「あは、そだね。……で、なぁに?」

「瑠衣華がそんなふうに思ってたなんて、俺……全然気づいてなかったよ」

「うん……わかってる。だけどね……私ホントは、今でもね……いっしょー君のことが……」


 一匠はドキリとする。

 今度は遠回しではなく、そのものずばり、想いを一匠に伝えようとしているのだ。


 しかし瑠衣華は黙り込んだままになった。

 一匠が瑠衣華の顔を見ると、目を完全に閉じてすぅすぅと寝息を立てている。


(あれ? 寝ちまった? ホントは俺のことが……なんなんだよ、あはは)


 一匠は苦笑いを浮かべて、瑠衣華の寝顔をしばらく眺めていた。


 また何か話し出すかと思って見ていたのだけれども……瑠衣華はがっつり寝入ったようで、何も言わない。


 すぅすぅと寝息を立てる瑠衣華が、とても愛おしく思えてきた。


 一生懸命一匠と関わろうとする瑠衣華。

 色々と何度も失敗しながらも前向きに頑張る瑠衣華。

 別れた時のことを素直に謝り、そして自分の想いを打ち明けた瑠衣華。


 そのすべてがとても可愛くて愛おしい。

 そんな気持ちが一匠の胸の中に、どんどん広がっていく。


 決して見た目が可愛くなったから、というだけではない。瑠衣華の言動のひとつひとつが、一匠の心を撃ち抜くように、甘く切ない感情を呼び起こす。


 一匠は思わず、すやすやと眠る瑠衣華の頭に手を伸ばした。そして栗色の髪を優しく撫でる。


 すると突然瑠衣華は「うふふ」と、小さく微笑んだ。


(もしかして起きてるのかっ!?)


 ビクッとして手を引いた一匠だが、よく見ると瑠衣華は目を閉じてまだ眠っている。だがその表情は、一匠に頭を撫でられたことが嬉しいかのような、そんな微笑みだ。

 何か楽しい夢でも見ているのだろうか?


 一匠はまたしばらく瑠衣華の顔を眺めていたが、その後は瑠衣華は何も話すことはなかった。本格的に寝入ってしまったようだ。


 その寝顔は落ち着いているし、辛そうな感じはない。少し体調は良くなったようで、一匠も安心した。


 そのまま30分は様子を見ていただろうか。けれども瑠衣華が目を覚ます様子がない。

 夕方にはお母さんが帰って来ると言ってたし、このままずっと瑠衣華の部屋に居るのもマズいかもしれない。


 瑠衣華の病状も落ち着いているし、一匠は帰ることにした。瑠衣華を起こさないように、静かに歩いて彼女の部屋を出た。



◆◇◆◇◆


 自宅に帰って、一匠は自室のベッドに仰向いて寝転んだ。色んな思いが頭を巡って、なかなか考えがまとまらない。


 とうとう瑠衣華は、中学の別れのことについて面と向かって話をしてくれた。


 その理由は、確かに瑠衣華の思い込みによるところも多い。しかし彼女に不安な気持ちを抱かせたのは、他ならぬ一匠自身だとわかった。


 一匠には、瑠衣華が悪いというふうには思えない。瑠衣華は自分に自信がなくて、思い詰めてしまうところがある。

 そしてどうしたらいいのか、わからなくなる。


 だからこそ友達などへの相談ではなくて、恋愛相談サイトなんかで相談してきたのだろう。


 その相談サイトでは、瑠衣華は一貫して一匠のことが好きだと言い続けてきた。


 最初は誰なのかわからなかったけど、今から振り返ると、彼女は少しの曇りもなく一匠のことを思い続けているのだ。それは間違いない。


 そして今日。瑠衣華は一匠がアドバイスした通りのことを、勇気を持って行動した。

 ただでさえ気持ちを伝えるのが苦手な瑠衣華だ。とても勇気がいっただろうに。


 瑠衣華が一匠を思って、精一杯の行動をしてくれた。そして一匠は瑠衣華の本当の気持ちを知った。


 それを考えると……


(俺は……瑠衣華に、どう接するべきだろうか。……いや、俺自身はどうしたいのか?)


 一匠は自分の心の内に、何度となく目を向ける。


 ぼんやりと室内を眺めていたら、ふと本棚の漫画本が目に入った。付き合っていた頃に瑠衣華が来て、読み耽っていた全30巻の本だ。


「あの頃は……あれはあれで楽しかったよなぁ……」


 一匠は別れることになった時もその後も──


『瑠衣華のことをそんなに好きというわけじゃなかった。好きになりかけてはいたけれど』


 ──と、自分でもずっとそう思っていた。


 しかしそれは自分を誤魔化していたのかもしれない。もしかしたらフラれた悔しさを紛らすために、そう思い込もうとしていたのかもしれない。


 そんな気がしてきた。


 ──一匠は思った。


 ホントはそれよりももう少し、瑠衣華のことが好きだったのだと。


 そして理緒のことも少し気になる。

 しかし理緒とも色々とやり取りする中で、彼女の自分に対する好意は、異性というより人としてのものだと確信した。


 そういう状況の中で、これから自分が何をどうすべきなのか……


「やっぱそうだよな」


 一匠は何かを決意したような顔で、コクンとうなずいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] おっ、ついに俺の望むルートに行くか?
[良い点] 一匠君が決意! どうなる?青島さん!? 個人的にはもっと振り回されて欲しい! でも、赤坂嬢がここに来て非常に可愛いくなってきました! 好きになった時の詳細も描いていただけると・・・ いえ…
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