表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
匿名の恋愛相談サイトで、恋に悩む少女に俺がしてあげたアドバイス。 ~学校で評判の美少女が、アドバイスどおりのことを俺にしてくるんだが?  作者: 波瀾 紡
◆第二部:こっちか!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/56

【43:白井くんのお察しの通りです。】

 一匠は理緒に向かって、つい自分の口から『青島さんはいつも俺に好意的に接してくれる』と言ってしまった。


 単なる自分の思い過ごしかもしれないのに、と恥ずかしくなる。

 理緒にそう言うと、彼女は手を口に押えて、ぷっと笑った。


「いいえ。そんなことないですよ。白井くんのお察しの通りです。私は好意的に白井君と接していますよ」


 まさか、という答えを理緒は口にした。


 もちろん好意的という言葉は、異性としてというだけでなく、人としての意味もある。好意を持ってると言うのと、好意的に接すると言うのは大きな違いがあるのだ。


 だが一匠にとっては、どちらにしても信じがたいくらい嬉しい言葉だった。


「えっ……? そ、そうなの? あ、ありがとう青島さん。俺なんかなんの取り柄もないのに」

「なんの取り柄もないなんて、とんでもない! 白井くんは、真面目で誠実で、いい加減なことをしない人です。それに思ってもいないことを適当に言ったりしません。そういうところは凄くいいと思います。人として尊敬しています。一緒に委員会活動をしていて、前からそう思っています」

「そ……そうかなぁ? 自分でも自信ないや」

「残念ながら私の周りには、私を表面的にだけ見て、近寄ってくる人も多いのです。だから私も白井くんとは違った意味で、その人がどういう人かよく見ています。だから間違いありませんよ」


(そっか。青島さんは、ちゃんと俺のことを見て、そして俺に好意的に接してくれているのか)


 最近は瑠衣華のことを考えることで精一杯だったけど、理緒の好意に触れるとやはりホッとする。


「だからこそさっきも、白井くんならわかってくれるかと……ついつい毒舌を吐きました」

「うん、大丈夫だ。ああやって青島さんが本音を出してくれるのは、逆に俺も嬉しい」

「ありがとうございます。ホントに白井くんは良い人です」


 それにしても、人気者の理緒が自分をそんなふうに思ってくれているなんて。

 決して自分だけの思い上がりじゃなかったんだ。


 そう思うとあまりに面映ゆくて、一匠はまともに理緒の顔を見ることができない。

 だから少し視線を外したまま答えた。


「あ、ありがとう青島さん。そう言ってくれてめちゃくちゃ嬉しいよ。そんなことを言ってくれるのは青島さんだけだ。あはは」

「いえ、そんなことないと思いますよ。だって……」


 そのあと理緒の口から出た言葉は、一匠にとって衝撃的なものだった。


「赤坂さんなんか、白井君のことを大好きでしょうしね」

「えっ……?」


 突然理緒の口から出た瑠衣華の名前。

 一匠は何がなにやらわからない。


「赤坂さんが俺を大好きって……?」

「あれっ? 白井くん、気づいてないのですか……?」


(いや、気づいてる。気づいてるどころか、本人がそう言ってることを知ってる。だけどなんで青島さんがそれを知っているんだ?)


「いやいや。気づいてないかって言われても……なんのことやらわからないなぁ」

「そうなんですか? てっきり白井くんもそれをわかってるのかと思っていました」

「いや赤坂さんは、俺のことをそんなふうに思っていないって」


 とにかく否定しなきゃと、一匠はちょっと必死になっていた。

 そんな一匠を見て、理緒はぷっと笑う。


「白井くんはやっぱり誠実な人ですね。嘘が下手です。顔に『わかってた』って書いてありますよ」

「え?」


 一匠は思わず自分の顔を撫でた。

 必死になって否定したのが悪かったのだろうか? あっという間に理緒に見抜かれた。


「赤坂さんが白井くんのことを好きなのは……たぶん入学した最初の頃から、ですよね。最初は気づきませんでしたけど、そのうちこれは間違いないなって」

「そ……そうかなぁ? そんなことはないと思うよ」

「だって……赤坂さんが白井くんと話してる態度を見てたらわかりますよ。あれは恋する乙女の態度です」

「ええーっ? まさかー?」


 一匠のリアクションは、ちょっとわざとらしかったかもしれない。


「ふふふ。赤坂さんも最初はなかなか素直になれなかったみたいですけどね。最近はそんなこともないし」


 まさにその通りで、一匠はもう返す言葉もない。理緒の洞察力の凄さに感服するしかなかった。


「それに私が白井くんと仲良く話していたら、それを見る赤坂さんの顔って……それはもうこの世の終わりみたいに悲しい顔をしてますもんね」

「そ、そうかな?」

「そうですよ、ふふふ。私もちょっと妬いちゃいます」

「えっ……?」


 理緒は少し意地悪そうな顔をしている。

 しかしどこまで本気なのか、ちょっとわからない。


 ──青島さんは、俺のことどう思ってるの?


 そんな言葉が喉まで出かけた一匠だったが、さすがにそれをストレートに問う勇気はなかった。


 しかし瑠衣華のことを落ち着いた笑顔で言ってきたことを考えると、やはり異性として好き、とうわけではない感じなのがわかる。


「ところで赤坂さん。風邪の具合はどうなんでしょうね?」


 理緒の言葉で一匠は我に返った。


(そうだ。赤坂さんの風邪……)


「どうなんだろうね……?」

「心配ですね」

「あ、ああ。そうだね」


(大したことなければいいのだけど……)


 少し考え込んだ一匠を見て、理緒はなぜかくすくすと笑ってこう言った。


「じゃあ白井くん。そろそろ帰りましょうか」

「あ、うん。そうだね」

「今日は本当にありがとうございました。助かりました」

「あ、いえ。どういたしまして」


 本当に嬉しそうに笑顔を浮かべる理緒。

 すっかり気持ちは落ち着いたようで、一匠はホッとした。




 それから駅まで二人で一緒に歩いた。


 その後の理緒は、瑠衣華の話をすることもなかった。さっきの話の続きで、理緒はまた一匠の真面目で誠実なところを褒める話をする。


「いやいや。青島さんこそ優しくて真面目で、ホントにいい人だよ」


 一匠は照れながらも、普段から思っていることを正直に伝えた。


「そうですか。ありがとうございます」


 理緒は嬉しそうにはにかんで、そう答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 青島さんはあざとく来るのかなぁと思った事もありました。 が、しかし何か違うなとも。 赤坂嬢の好意が丸分かりと言う事でしたが、それならもう少し周りは騒ぐのでは無いかと。 と、言う事は青島さん…
[良い点] 素直になれない瑠衣華に対して、真っ直ぐな青島さんの対比かと思っていたけど、また1つスパイスが追加されてますね 青島さんの態度には色んな理由がありそうだけど、三角関係が複雑になってきそうで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ