【25:白井ぃ。お前やっぱすげぇな】
田中と鈴木は、一匠のおかげで理緒と瑠衣華の二人に会えて良かったと、ニコニコしながら礼を言ってくれた。
二人がファンだと言う理緒や瑠衣華とは、彼らは結局遠くから眺めるだけだったけど。それでも会話を交わせて良かったと二人は言った。
「ところで白井ぃ。お前やっぱすげぇな」
「何が?」
「姫様と可憐ちゃん、2人とも連れて来れる男なんてそうはいない!」
「あ、それはホントにたまたまだって」
「そうだよ白井君、凄いよ」
横から鈴木までもが、感心した口調で同調する。
「姫様は高嶺の花感満載で、なかなか気軽に話せる男子なんかいませんし」
「そうそう! 可憐ちゃんはちょっとクールな感じで、男子と仲良くしてる場面なんか見たことないからなぁ」
理緒のことは、確かにそうだが。
瑠衣華はクールというよりも、元々コミュ障気味だから男子と話すのが苦手なだけだと思うけど……と一匠は思うが、あえて口にはしない。
「しかも2人とも、白井君の近くに座って仲良さそうにしてましたからねぇ」
「そうだぞ白井ぃ! 俺らからしたら、お前はまさに神だぁ!」
「うん、そうですね。これから白井君のことを神と呼びましょう」
「お願いだからやめてくれっ!」
「なんでぇ?」
「クラスのみんなから変に思われる」
教室の中で田中と鈴木が、一匠を神なんて呼んだら。
しかも今の彼らの様子からすると、一匠を崇め奉るような態度を取るに違いない。
そんなことをされたら、どう考えてもクラスの友達から変な目で見られるに違いない。
「そぉかなぁ……?」
「そうだよっ! 神とか姫様と可憐ちゃんとか。他のヤツが聞いたらおかしいと思うぞ。同級生を変な二つ名で呼ぶのはやめとけ」
一匠が速攻で否定したら、田中と鈴木は残念そうな顔をしながらも「わかったよ」と答えた。
まあそうは言いながらも。
彼らが楽しそうな顔をしているのを見て、少しほのぼのとした気分になる一匠だった。
◆◇◆◇◆
その夜。ノートパソコンで恋愛相談サイトを開くと、RAさんからのメッセージが届いていた。それはこんな書き出しだった。
『こんばんは。実は今日、彼とたまたまカラオケルームで遭遇したんです。それで近くの席に座りました。ドキドキしちゃいました♡』
「うっわ!!」
その文章を読んだ一匠は、思わず声をあげた。
そして椅子から転げ落ちそうになる。
ギリギリのところで踏ん張って、ずっこけるのは回避したけれど。
──なんと。こんな偶然が果たしてあるのだろうか?
いやこれはもう、RAさんが理緒か瑠衣華のどちらかで、そして好きな彼とは自分なのだという可能性が極めて高いとしか思えない。
「ま……マジで?」
一匠は信じられない思いで、その文章に見入っていた。
この広いインターネットの世界で、たまたま身近な人がメッセージを送ってくるってだけでも驚くような偶然だ。
しかもその相手が自分を好きだなんて確率は……限りなくゼロに近いはずだ。
だがしかし──
RAさんが言っている出来事が、ことごとく一匠の身の回りで起きている。もはや逆に、RAさんが理緒か瑠衣華じゃない確率の方が、極めて低いだろう。
そしてこれが二人のどちらかなのだとしたら──
瑠衣華にはほんの数ヶ月前にふられたばかりだし、俺を嫌ってることだろう。だからその可能性は極めて低い。
一匠はそう考える。
そしてカラオケでの理緒の好意的なあの態度。
それを考え合わせると──
(これは……あ、青島さん!?)
その考えが繰り返し繰り返し、頭の中をぐるぐると回る。
そう──
一匠にはもはや、その答えしか考えられなくなってしまっていた。
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