vol.25(3)
おんぼろママチャリ、ゆうなはカンナの後ろに横座り
ゆうなはカンナの腰に腕を巻かせて身を任せ、それだけで気分は踊り、
カンナはゆうなの腕を腰に巻かれて身を任され、それだけで上機嫌。
タイヤの空気は足りないけれど、ふたりの心が存分弾んでいた。
ゆるく続く下り坂
カンナは足を広げて、右に左にくねくね運転
ゆうなはカンナのくねくねリズムに、素足のサンダルをぶらりぶらり合わせると
浴衣の裾がそよそようれしそうに笑って見せた。
住宅街を抜け、土手に上がると、
河を渡ってきた涼風が、カンナの脇をすり抜け、ゆうなの衿を舞いすぎる。
<夏に頂点があるとしたら、今年のてっぺんはきっとここなんだぁ>
まだ夏は終わっていないのに、ふたりはそんなに感じていた。
話し少なく、ふたりはふたりのカプセル空間に今宵に酔い痴れている。
ビッピー 後ろから単車の警笛
単車がふたりの横に並び、
「止まりなさい。」
<ヤバっ! おまわりさんだぁ>
カンナの心の叫びに、ゆうなは腰の腕をキュッと締めて応える。
「わかってるね、おふたりさん。二人乗りは禁止だよ。」
と、おまわりさんはにっこり、二人が自転車から降りるを促した。
ドンッドドン、ばちばちばち
花火の炸裂する音、それに弾ける音
「こんなにきれいなんだから、歩いて見ないと見損なっちゃうよ。」
ふたり揃えて、子供がお母さんに怒られたときのように、 「は~い。」
おまわりさんは頷き、ゆっくり単車を発進させながらひと言、
「浴衣にサンダル・・・けっこう、それもありかもね。」
ふたりはその後ろ姿に、なぜか親しみとカッコよさを覚え、クスっとなった。




