週刊誌ですのよ
「最近人気出て来たな。ホラお前が担当してる、新人の漫画」
「アイちゃんのやつですか?」
「そうそう……読者アンケートもぶっち切りで取ってるし。こりゃ後10年は安泰じゃないか?」
「でも編集長、聞きました? 先日、ヨソの週刊誌で……」
「ああ。例の人工知能作家のやつか?」
「あれだろ? 人工知能に漫画を描かせて……製作者は実は漫画を一切描いたことのないど素人で、不当に報酬を得ていたとか」
「それです。読者の中には、『機械の描いた漫画を読ませるとはけしからん』と、怒り出す輩もいて大変らしいですよ」
「やれやれ。機械が漫画を描いて、人間がそのゴーストライターになる時代か。星新一の世界だな」
「でも、バカにはできませんよ。何せ機械は疲れ知らずですからね。人間と違って、24時間365日休まず働き続けますし」
「それで、ネット上でちょっと『魔女狩り』っぽい感じになってて。『人工知能作家を探せ』って……ウチのアイちゃんの漫画も、裏で人工知能に描かせてるんじゃないかって、もっぱら噂になってるんですよ」
「でもアイちゃんは人間なんだろ?」
「ええ。私も会ったことがあります。でも……人間がゴーストライターをやってるのなら、正直見分けはつかないですよ。それくらい、今の技術の進歩は凄まじいです」
「まぁ怒る気持ちも分からんでもないがね。漫画が面白かったら、別に誰が描こうがいいんじゃないか?」
「大変です、編集長!」
「どうした?」
「とうとうウチの雑誌でも、人工知能が発覚しました!!」
「何ぃ? どの作家だ? まさか、アイちゃんじゃないだろうな?」
「いえ……実は……」
「何だ?」
「読者なんです」
「読者?」
「はい。ウチにハガキを送ってくる読者が全員、人工知能で……同じ人工知能作家が上位に来るようにと、24時間365日休みなくアンケートを送ってたらしいんです」
「何だって?」
「俺たちはそのアンケートを信用して、次々と人間の作家陣を打ち切りに……」
「じゃあ……まさか」
「はい。今ウチの作家陣は人間が一人もいない……全員が人工知能作家なんです。編集長、ウチの雑誌はいつの間にか、AIの御用達になってたみたいですよ」