序章
感想へのコメント返し等は、何か話を更新した際の活動報告で行っております。
返事が遅くなる事が多いと思いますが、お許しください。
暗い部屋。
光源は一つ。
蝋燭の小さな炎が揺らめいている。
燭台に載せられた蝋燭は、ついさっき火を灯されたのだろう。
ほぼ原型を保っていた。
燭台は小さなテーブルの上に置かれていて、緩やかな光の円で闇を切り取っている。
テーブルの横には椅子がある。
その椅子には、誰かが座っていた。
蝋燭の灯りはその人物の右半身、それも右腕と組まれた両足の膝だけを闇の中に浮かび上がらせる。
「お名前は?」
その人物……男は訊ねる。
「不動……」
闇の中から声が聞こえる。
灯りに照らされた男の向かい側、闇の中には別の人物がいた。
「下のお名前は?」
「……」
逡巡があって、不動と名乗った人物は名を答えた。
「そうですか。良いお名前ですね。一応、お答えになりたくない事は無理に答えなくても結構ですよ」
灯りに照らされた男は優しい口調で告げる。
「ただ、こちらとしてはあなたと寄り添う形の治療を心がけたいと思います。あなたという人間を知るために、どのような事でも構いません。話しても構わないという範囲であなたの話をうかがいたい」
闇の中、不動の頷く気配があった。
「何か、今お困りの事などはありますか? 差し当たって今すぐにでも何とか、してほしいと思う事など……」
灯りに照らされた男は、そう問いかける。
それに応じ、不動は口を開いた。
「……辛い」
「辛い、ですか?」
「命を奪う事……。たとえそれが、どんな人間であろうとも、その人生を終わらせる事が、辛い……」
「そうですか……。では、そういった事をしない、という事はできないのでしょうか?」
不動は首を左右に振った。
「それはできない」
「どうして?」
「絶対に、しなければならない事だから……。僕は、殺さなくちゃならないんだ。この世界の人間を不幸へ陥れる、召喚者を……!」
灯りに照らされた男は、「ふむ」と小さく唸り、息を吐き出した。
「では、どうしてそう考えるようになったのか……。そのきっかけについて、差し支えなければお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」
その問いに、不動はゆっくりとうなずいた。
そして、語り始めた。
不動の名前については、特に決めていないだけです。
デーモンニナッチャったりはしません。