anemone's gift
掲載日:2019/01/20
「私は風の娘なのよ」
そう娘は言った。
「私からの祝福をあげるわ」
娘は微笑むと私に向かって手をかざした。
突風が私の周りを吹きぬける。
驚いて両腕で顔を覆った。
一体、何の祝福だというのか?
迷惑以外の何者でもない。
私は文句をいってやろうと顔を上げた。
しかしそこに広がっている風景に、私は唖然とする。
私は知らない場所に立っていた。
今までいた街の中ではない。
ここは森の中?
周りには木々と花々が咲き乱れている。
そして足元に咲く花は…
幻と言われている花であった。
植物学者の私は興奮した。
見ることも触れることも出来ないだろうと思っていた花。
それが今、目の前にある。
触れられる!
私はしゃがみこむと、そっとその花に触れた。
軟らかい感触。甘い香り。
なんて素晴らしいんだ!
私は夢中で花を観察した。
「どう?満足した?」
声をかけられてハッとする。
目の前に風の娘が立っている。
そして私も街に立っている。
「あの花は?」
あれはやはり夢だったのか?
「あれは過去の遠い風の記憶。貴方が求めていたものでしょう?」
ああ、過去の幻なのか。
それでも、一瞬でも、触れることが出来たのだから。
感謝をしなければ。
「ありがとう」
私がお礼を言うと、風の娘は嬉しそうに微笑んだ。




