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友人と賞に出せ出さないで揉めてたのはここだけの話。

 知名度なんて上げたくないんじゃー。

 当然ながら、学舎が城という事は城門があり、門を護る番人が配置されている。

 門番とは軽視されがちだが、実のところ責任重大な役職であり、新人に任せる仕事でなければ、人ならざる人形に委任して良いものでもない。

 故に、眼前に立ちはだかるガーディアン共に、我は呆れて言葉も無い。

 どうしようかと困惑する小娘共に全てを任せ、静観の構えである。

 小娘共は何やら持たされたらしき手紙を差し出しているが、物言わぬ人形が受け取る筈もなく。ならばと事情を口頭で説明するも、聞いているのかいないのか判断に困る無反応っぷりに挫けている。


「あーもう! この木偶人形ッ! 話の通じないガーディアンを置いてどうすんだよバカ野郎ッ! 責任者出て来いッ! ぶっ殺してやるッ!!」


 挫けて、元気娘が激怒していた。

 本来ならブレーキ役である片割れ娘が止めに入ってない辺り、彼女も相当頭に来ているのだろう。


「全く。この都市に宿なんか無いのに。分かってんの? ここで門前払い食らったら野宿しなくきゃなんだよ? ねぇ? 聞こえてんの? 聞こえてんのかって聞いてるの? 答えなよ、おい」


 そして、片割れ娘は人形にこれでもかと顔を近付け、ドスの利いた声音を吐き出している。その様が余りにも真に迫っていて、もしかすると元々はそういう人柄だったのやもしれぬ。

 そんな二人を、御者台にやって来たナージャを愛でながら眺めていると、恐る恐る近寄って来る気配を感じた。

 城が学舎であり、その門前で騒いでいるという事は、必然的に生徒達の注目を集める事となる。

 そう間を置かずに声を掛けられるのは想定の範囲内である。


「あの~、私達の学園に何か御用でしょうか?」


 と、女子生徒は何故か我に声を掛けてきた。


 用があるのは向こうの二人ぞ。我等は居るだけである。


 顎で小娘共を示しながら告げると、女子生徒は物凄く嫌そうな顔をする。

 確かに、荒ぶる小娘共に自分から関わるのは御免だろう。

 意志を強固に、勇気を持って突撃するのだ!


「うぅ、怖いなぁ……」


 駄目そうである。

 臆病な女子生徒は完全に腰が引けていた。それもこれも小娘共の柄が悪いからである。

 一時的なものとはいえ、第一印象は最悪であろう。


 怖がっているのに何故声を掛けようとする?


「私、これでも生徒会長なので。今放置しても後々対応する事になるなら早い方がいいかなって」


 成る程。子供らの代表であったか。


「学園長のバカぁ。なんでガーディアンなんか門番にするのよぉ。人件費削る程切羽詰まってない癖にぃ」


 そんな泣き言を呟きながら、生徒会長はおっかなびっくり二人の娘へと近付いて行った。

 なんだかんだで度胸のある娘であった。


「あ、あの。私達の学園に何か御用でしょうか?」


 今にも消え入りそうな声量なれど、小娘共の耳には届いたようだ。

 無遠慮に浴びせられる二人の視線に生徒会長はびくりと身をすくませる。


「私、この学園で生徒会長をやらせてもらっている者です。あの、何か御用でしょうか?」


 再度確認を入れる生徒会長。小娘共は顔を俯かせ、体をぷるぷると震わせている。

 そんな二人の様子に、気付かず何かやってしまったかと不安を募らせる生徒会長の顔から血の気が引いていた。

 彼女が何か言おうと口を開いた瞬間、小娘共はがばり! と生徒会長に抱き着いた。


「うわぁはぁぁぁあん! やっと話の通じる人が来たぁぁあ!!」


「ありがとう。ありがとうっ!」


「あのあのあのあのっ!?」


 言葉の通じない人形を相手に挫けてしまった心を回復させる為か、生徒会長に熱い包容をかます小娘共。その様子から相当のストレスを溜め込んでいた事が窺える。

 急変する事態について行けず、生徒会長が目をぐるぐる回している事を除けば、なんと微笑ましい光景だろうか。

 傷付いた心の修復が終わったのか、片割れ娘が人形に見せていた手紙を生徒会長に渡した。彼女は突然渡された手紙の扱いに困った様子で、これは何かと問い掛ける。


「こんな木偶人形を門番にする学園だもの。学園長には期待できないから、なら生徒の代表である貴女に渡すのが一番かなって」


「えっと、私が読んでも大丈夫なものなんですか?」


「多分ダメ。でもきっと学園長よりはマシだと思うの」


「では、失礼して」


 生徒会長は丁寧に封を切り、手紙を読むと、こちらを二度見した。そしてガタガタと震え始める。


「こんなの私にどうしろって言うんですかぁーっ!!」


 周囲の注目を一身に受けて、生徒会長は泣き言を言う。


「なんで! どうして! 私の代でこんな面倒な案件が舞い込むんですか!? こんなの抱え込める訳ないじゃないですかぁ! 処理オーバーですぅ! 私の容量じゃ扱いきれませんよ!!」


「ま、まぁ、ほら、魔王も特に害を与える気はないらしいからさ。変な事しなければ無害だよ」


「その変な事をしそうな生徒に心当たりがあるから困ってるんですよ! バカァ!!」


「ごめんなさい!?」


 元気娘が気圧されて思わず謝っていた。一応、現役のトレジャーハンターを下がらせるとは、生徒会長は伊達ではないらしい。

 一向に話が進まず、片割れ娘が溜め息を吐いて我を見た。


「いい加減中に入りたいから、魔王からも何か言って」


 分かった。伝承通りの魔王らしい言葉を贈ってやろう。


「普通の、貴方の言葉で十分よ。悪い王様じゃないんでしょ?」


 はっはっはっ! 我の言葉を鵜呑みにするとは、少し軽率ではないかね?


「ただの勘だから気にしないで。知ってる? トレジャーハンターの勘は当たるの」


 成る程、成る程。では一つ、その勘が間違いでないか確かめてみるとしよう。


 我の膝に頭を乗せているナージャを起こして、御者台から飛び降りる。

 これでもかと威圧感を発し、演出として黒いオーラを身に纏い、我の背後に人の本能に恐怖を与える幻影を作り出す。


 ふははははは!! そこな娘よ! 無駄な抵抗は止め、大人しく我を受け入れるが良い!


「ひぃ!?」


 身をすくませ、脚を縺れさせた生徒会長は尻餅をついて近付く我を恐怖に染まった顔で見上げている。あまりの恐怖に体は小刻みに震え、歯がカチカチと打ち鳴らされていた。

 何やら片割れ娘が呆れている気配を感じるが、我は魔王、そんなの気にしない。


 我は古の時代より甦った、恐怖をもたらす魔王なり! 貴様程度が抵抗したところで、我を束縛するなど不可能と知れぃ!

 我に変な事をする輩など、そこらの有象無象となんら変わらん。寧ろその程度で我が困る等と侮る事こそが不敬と知れ! この愚か者めが。


「……言い方がアレなだけで、内容は自分でどうにかするから気にするなだよね」


「……止めなさい。偉い人はね、簡単な内容でも尊大な言い回しをしないといけない面倒な人種なの。そっとして置きましょ」


「魔王様、かっこいー」


「「…………」」

 最近、描写で飛ばす癖が酷いので意識して会話多めにしていきます。

 後、友人になんの為に小説家いてるの? と言われたんですが、趣味と答えたらつまらなそうな顔をされました。

 野心の高い友人である。

 そしてやたらと格ゲー勝負を仕掛けて来るので、その内罰ゲームとしてなんちゃら賞のタグをつけられるかもしれない。

 おのれ、作者が格ゲー苦手だと知っておろうに。コンボ研究とかしないから基本的に分からん殺しされる。

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