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連日投稿しろー。と言われたから頑張ってみた結果、なんだか魔王様の独白回になってしまった。何時もの事か。

 来月提出の卒研/卒論があるんだけどなー。

 因子分析面倒なんじゃー。

 目的! 方法! 結果! 考察! 参考文献羅列! ちくしょうめぇー!

 その後、何度か人形による襲撃に遭ったが、問題なく撃退し我等は学園に、というよりも都市に到着した。

 あれからナージャは眠る事なくずっと起きていた為か、着いた瞬間、崩れ落ちるように眠りへと就いた。やはり、かなりの負担を強いてしまったようである。


 ゆっくり休め、我が愛しきナージャよ。


 耳に掛かった髪を払ってやり、我は馬車を出た。

 異界を丸々使ってるだけに、土地をこれでもかと贅沢に使った学園は最早都市と言える。異界故になのか壁の類いは存在せず、敷地に入るだけなら容易い。

 一歩踏み入れても何かが起こる訳でもなく、警備が手薄である。余程ガーディアンに自信が有るようだ。

 これを慢心と思う事なかれ。人形の放つ一撃は、この時代の人間にとっては一溜まりもないものである。

 速度差があり逃走も許されず、運良く倒せても即座に追加がやって来る悪夢的仕様だ。劣化していても、この時代の人間には十二分の効果を発揮している。


 古代装置を幾つか使っていると聞いたが、生産の類いもここにあるのか?


 街中を緩やかに走らせ、馬車の中に居る小娘共に問いを投げ掛ける。すると、小窓を開いて片割れ娘が顔を出した。


「あるよ。貰ったパンフレットによれば、大体の生産施設は揃ってるみたい。魔力を込めるだけで全自動なのに、そこらの農家が作る野菜よりも美味しいって評判なんだって」


 ……そうか。


「不服そうだけど、どうしたの?」


 いや、旧時代を知っているだけに、誤った使い方をされると思うところが出るのだ。気にするでない。個人的な事故な。


 多くの職人達の見本となる装置が、職人達の役目を全て奪っている。

 技術を遺す為の装置が、技術を衰退させる原因となっている。

 一般公開するべき装置を機密扱いし、独占している現代に、やや失望しただけのこと。

 うむ。こういったストレスは想定の範囲内である。


 何故こうも人は、稀少なものを隠したがるのであろうな。

 価値観が違うと言われればそれまでだが。うむ、まぁ、道具など、結局思うように使えば良い、か、うむ。


「おぉー、魔王が自分と戦ってる」


「え? 感心するところなのそこ?」


「響きがなんかかっこいい」


「響きかー」


 思えば包丁で切り掛かって来た剣聖も居たな。懐かしい。


「剣聖っ! ロマンだね!」


「包丁という単語を気にしようよ……」


「ねねねねねぇ!! 剣聖ってどんな人だったの? 老人? やっぱり隻眼だったり隻腕だったりするの!?」


「出たなー、謎の拘りー」


「かっこよさを求めて何が悪い! ぶっちゃけ現代よりも古代に興味があるからトレジャーハンターになったんだし。そこは拘るよね!」


「まぁ、トレジャーハンターって人種はロマンに生きる人達だけどさ」


「お宝もそうだけどさー。遺跡や曰く付きの道具とか、歴史を辿りたくなるんだー」


「それは分かる。楽しいよね!」


「壁画があると超興奮する。神秘的!」


「壁画と言えば、魔王も壁画になってたよ。勇者に打ち倒される図だったけど、あれって封印された瞬間だったんだね」


 む? あー、そうであるな。


 実際のところは死んだフリ作戦が成功した瞬間だと思うが、何やら楽しそうだし水を差すのも野暮であろう。

 その後も普通に生きていたから封印などという札を切られたのだし。まぁ、間違ってはいないか。

 正確には封印された瞬間ではなく、封印される原因ではあるが、大した違いはなかろう。


 剣聖、剣聖か。あやつが今を生きていたら山にでも籠って剣を振り、強敵が現れるのをじっくり待つであろうな。

 魔術の発達した時代に生まれながら、剣に生きる偏屈な狂人。その自覚があるからか、帰属意識の薄い、いや無い自由人ですら在った。

 会う度に腕前を上げるし、我が鋼の肉体をぶった切った後で「勿体無いからまだ殺さない」とか言って毎回見逃されるし。

 懐かしくはあるが、もう二度と会いたくない。


「……あれっ? 魔王見逃されてたの!?」


 うむ。あやつ、強敵と戦いたいだけの人間故に、人類の味方ではないのでな。

 剣聖と呼ばれ始めたのも、我と剣を交えてからである。

 それまではひっそりと暮らしていたとか。

 そういえば、弟子入り志願者が急増して鬱陶しいと酒の席で愚痴っていたな。


「飲み友達だったんだ……」


 旧時代では前衛にガーディアンの様な人形を使う。故に、剣士や武道家は次第に消滅していき、マイナーな部類とされていた。

 そんな時代でわざわざ剣を取るような酔狂者は居ないに等しい。

 寧ろ、時間を掛けてようやく一流となる剣士よりも、即戦力である人形の方が連携の意味合いも含めて都合が良すぎたのだ。

 さて、そんな魔術師共に我等である。

 我やナージャの異能は魔術師殺しの側面もあり、完全物理特化な人間とは相性が悪かった。

 勇者の居ない時代、やつは正しく人類の希望だったのだ。

 憧れの対象とお近づきになりたい若者は多く、または剣聖の弟子という泊欲しさに志願する者が増えた結果、やつは行方を眩ませた訳だ。

 剣聖の出現により、我が仕方無く剣を学び、ようやくの思いでまともに切り結べるようになったのは何時の頃だろうか。

 もう、良く思い出せない。


 何故か小娘共がしんみりとした空気を醸し出しているが、馬無しの馬車は街の学生を驚かせながら前方に聳え立つ城へ向かって進んでいる。

 わざわざ学舎を城としている辺りに強い自己顕示欲を感じる。

 まるでこの異界が自分の国だと言わんばかりではないか。

 なん足る傲慢さか、我も見習わねばな。

 恐らく、すんなり魔術装置まで案内されない事は当然として、説明すらまともに受け入れるか怪しいところである。

 まぁ、異界が崩壊して困るのは学園の生徒共とエリート教師、その他と小娘共のみである。

 崩壊の兆しが出た時点で、我等は早々におさらばするだけ故な。

 物事がどう転がろうと知った事ではない。

 そこは小娘共の頑張りどころであろう。

 あ、剣聖出てきますよ。多分友人が望んでた形、かなー?

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