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願いを叶える妖精

作者: 上月二郎

 私は妖精。みんなの願い事を叶える妖精。どんなことだって叶えてあげる。私が願いを叶えるとみんな笑顔になる。だから叶えてあげる。私はみんなの笑顔が好きだから。私の願いはみんなの笑顔。だからみんな私に願い事をして。




 誰かが私のもとへやってくる。さあ言ってみて?あなたの願い事は何?


「妖精様、妖精様、お願いです。雨を降らせてください。日照りが続いて作物が枯れてしまいます」


 お安い御用。雨くらい私の魔法で降らせてあげる。そーれ。


「おお、おお、雨が降り出した!ありがとうございます…ありがとうございます…」


 ああ、いい笑顔。喜んでくれて私も嬉しい。雨を降らせるくらいいつでも言って。すぐに降らせてあげるから。


「妖精様、妖精様、どうかこの子をお救いください。お医者様ももう治せないと言うのです。こんなに小さいのに、どうしてこの子は死ななければならないのでしょう」


 お安い御用。病くらい私の魔法で治してあげる。そーれ。


「まあ!熱が下がっていくわ!ありがとうございます…ありがとうございます…」


 ああ、いい笑顔。喜んでくれて私も嬉しい。病を治すくらいいつでも言って。どんな病も治すから。


 みんなみんな私の魔法で笑顔になる。みんなの笑顔は私の魔法の源になる。だからもっともっと願い事を言って。全部叶えてあげるから。




「妖精様、妖精様、お願いがあります」


 また誰かが私のもとへやってくる。さあ言ってみて?あなたの願い事は何?


「父を…殺してください」


 お安い御用。父くらい私の魔法で殺してあげる。そーれ。


「本当にやれたのか…?」


 どうして疑う?あなたの願いは叶えた。だから笑って。

 待って。待って。行かないで。私は願いを叶えた。今度はあなたが私の願いを叶える番。

 …行ってしまった。何が気に食わなかったのかわからない。考える。考える。わからない。わからない。

 足音。さっきの人間と同じ足音。帰ってきた。私の願いを携えて。


「ははは!妖精様!妖精様!ありがとうございます!ありがとうございます!これでやつに母さんと俺が殴られずに済む!」


 ああ、いい笑顔。今までで誰よりも一番いい笑顔。喜んでくれて私も嬉しい。殺すことくらいいつでも言って。誰でもいつでも殺してあげるから。




「妖精様、妖精様、弟を殺してください」

「妖精様、妖精様、村のあいつを殺してください」

「妖精様、妖精様、貴族の――を殺しください」

「妖精様、妖精様、隣国の王を殺してください」


 お安い御用。お安い御用。近頃、みんな同じ願いばかり。でもお安い御用。どんな人も私の魔法で殺してあげる。そーれ。


「ありがとうございます。ありがとうございます」


 喜んでくれて私も嬉しい。殺すことくらいいつでも言って。誰でもいつでも殺してあげるから。




「こいつか…」


 今日もまた誰かが私のもとへやってくる。険しい顔をして。きっと難しい願い事を持っている。でも大丈夫。笑顔をたくさんもらった私がなんでも叶えてあげる。

 さあ言ってみて?あなたの願い事は何?


「悪逆非道の妖魔め!消え失せろ!」


 お安い御用。私くらい私の魔法で消してあげる。そーれ。


「な!?自滅した…?」


 薄れていく意識の中で困惑する人間。どうして笑ってくれない?あなたの願いは叶えた。だから笑って。考える。考える。わからない。わからな……――




 小さな村の祠に妖魔が住んでいた。

 人の死を望めばすぐさま叶えるという恐ろしい妖魔であった。

 血を好む妖魔は勇者の手によって討たれた。

 世界に平和が訪れた。

連載で性格悪い主人公書いてるのでとてもいい子を書いてみました。

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