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エッセイシリーズ

さユりさんのライブに行ってきた

作者: 夢野亜樹

「こんにちは、さユりです。今日は振り替え休日の日です。」

とステージに立った女の子が言う。


会場は温かい笑顔で包まれていた。



そんな彼女だが歌っている時は目の色が変わる。

そして僕らは彼女の歌を耳に焼き付ける。


最初の一曲が終わり彼女は言った。

「何かを信じるという事は何かを信じないこと。何かを選ぶという事は他の何かを選ばないということ。何かを得るには、何かを捨てる。それには強く無いといけない。私は強くないかもしれないけどそうやって先に進む、そんな曲を作りました」



彼女は2013年の高校2年生の夏に高校を退学して東京で路上ライブなどをしていた。

これは、そんな彼女だから言う言葉で彼女の言葉は他の誰の言葉よりも説得力があった。



そんな彼女と僕は21才、同い年だ。これには自分が情けなく見える。


僕はインターハイを目指して高校に入ったが、インターハイ予選で負けて、適当な大学をみつけて、高校を卒業した。

僕みたいな人は結構いると思う。

誰が優勝したら、誰かは負けるから。

しかし、やっぱり成功している人はそのために色々なものを捨てているそう学んだ。


僕はあの頃、もっと走れた。

もっと集中出来た。

もっと声を出せた。

最後の試合から3年と8ヶ月が経ち、今は大学3年生だ。今でも思う。悔しい。

そして、この悔しさを味わったらもう成功するしか無いと思う。

まるでワンピースの三巻に出てくる宝箱に嵌った男だ。


彼は20年間1人でその島にある宝箱を守るため、島に上陸する海賊を追いやった。そして信頼できる海賊ルフィと出会い、守ってきた宝箱箱の中身を見るときがきた。しかし20年間守ってきた宝箱は空箱だったことが分かるのだ。ルフィは言った

「これだけバカみちまったら後は〝ワンピース〟しかねェよ!!もう一回おれと海賊やろう!!」

確かにルフィの言う通りだ。僕も大きい夢を叶えるしか取り戻せないと思う。



「最後に私のデビュー曲を歌います。ミカヅキ。」


渋谷や新宿や柏で路上ライブをやっていた彼女。

自分と向き合うことでできたオリジナルの曲。

道を歩く人々に歌っていた曲だ。


僕が寝てる間に、僕が恋人とキスしてる間に、僕が泣いてる間に作った曲だ。僕が足を止めている間に彼女は必死に走ってきたのだろう。

髪の毛を振ってアコースティックギターをかき鳴らしている姿は僕に勇気を与えた。


帰り道、僕はチェスターコートのポケットに手を入れて中のパーカーのフードをかぶり彼女の曲を口ずさんで歩いていた。


その日はとても寒い日で僕は身体が震えていた。


それは寒さなのか、彼女の歌になのかは分からない。

頭上には小さな星と三日月が輝いていた。


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