90話強欲に知識というオモチャを与えしワタルその2
ワタルがプレゼントしたノートパソコンをマモンは、もう使いこなしておりタイピングなんてお手の物、むしろワタルよりも早い。
マモンは研究者であると同時にフランの参謀として活躍してるらしく、幹部の七人の中では一番頭がきれる。それ故にノートパソコンの操作を難なく覚え何の問題なく使える訳だ。
「ぶほぉ~、これがワタル殿の世界ですか。何とも素晴らしい、天を貫きそうな程高い建物が何軒もあり、信じられません」
タラタラとマモンの鼻から血が垂れてる。
何を見てるのかとカズトは覗き見ると、マモンは日本の東京の風景の画像を見てるようで、普通ならエロ動画を見てる風に興奮のし過ぎで鼻血を出してしまったようだ。
興奮のツボは人(マモンは魔族だが)それぞれだと思う。だが、日本の━━━東京の風景で鼻血出る程興奮するとはドン引きだ。まぁワタルには理解出来ない領域である。
「ワタル殿、これは何ですか?」
鼻血出たままこちらに近寄らないでほしい。
俺はマモンの鼻血を止めるため容赦なくティッシュを丸め、マモンの鼻の穴へと突っ込んだ。ブヘっと魔族の幹部らしくない声を出し鼻を痛がっているが関係ない。
「痛いじゃないの。って、これってもしかして紙なの!」
折角、鼻に突っ込んだティッシュを取り出そうとしてる。俺は「出すな!」と叱責した。
この世界では紙と言ったら羊皮紙、皮を鋤いて作った物が一般的だ。和紙やティッシュ等の植物の繊維で作る紙は存在しない。なので、研究者気質のマモンには興奮してしまう物質の一つなのだ。
「ほれ、新しいのやるから鼻血が止まるまで、けして出すなよ」
「か、カズト殿あなたは神様ですか!紙だけに」
別に面白くねぇぞ。むしろ、オヤジギャグで寒い。ていうか、この世界にも"お笑い"って文化存在するのだろうか?
「いんにゃ、白猫様があちらに行った時に有名な芸人とやらに教わったと言ってました。私にも簡単なものをご教授してくださいまして」
白猫よ、何をフランの幹部に教えてるんだ?!もし、お笑い文化が存在してるなら見てみたいと気持ちがあったが、ないならしょうがない。
「それにしても、この紙は皮じゃないようだけど……」
「それは植物の繊維で出来てるんだ。ただし、そのティッシュは鼻をかむ用で、こちらの方が良いだろう」
俺は通販で大学ノートを買い与えた。何かを書く事に適してるのは、やはりノートと考えた訳だ。
それに加え、鉛筆・消しゴム・鉛筆削りを子供がオモチャをプレゼントされたかのようにマモンはドン引きする程スゴい笑顔で受け取った。
「ぶほぉ~ぶほぉ~、これはまた感触が違い皮と比べ書き安いですよ。それに加え書いても消せるとは、画期的な発明ですな」
俺が発明した訳じゃないけど、喜んでくれたようで良かった。まぁ興奮過ぎる点は少々引くけど、それ以外は好感が持てるようで安心する。今の俺では絶対に勝てない相手だから。
「では、早速"分析"………ふむふむ、成る程そういう事ですか」
マモンは大学ノートに分析を掛けると、大学ノートに魔法陣が浮かび、ブツブツと独り言で喋り一人で何やら納得してる。
「マモンさん、何をやってるのですか?」
大体予想は出来るが、一応聞いて見る。
「これは"分析"と言ってだな」
マモンの説明だとこうだ。
分析とは、その名の通りに物質を分析する魔法だ。唯一、マモンが自分自身で身に付けようとして取得した魔法だ。
物質と言っても生物には使えない。ただし、死骸になれば使える。といった制限はある。
鑑定と違うところは、鑑定はステータスとして表示されるが、分析はその先をいく。成分・構造・仕組み等々ありとあらゆるものが分かる。しかし、あまりにも情報量が多いため一般人や一般的な冒険者ならまず頭がパンクして気絶してしまうう。
でも、研究気質なマモンなら迫り来る情報を瞬時に理解し処理出来る彼女だからこそ出来る芸当だ。一応フランも使用だけなら出来る。が、気絶してしまう。
「す、スゴいですね。俺にはけして真似出来ません」
「むふふふふ、これを開発━━いえ、作製出来れば、この世界はひっくり返りますよ」
大学ノートを手にクルクルとマモンは回る。回るったら回っている。この隙にワタルは立ち去ろうとドアに向かっていた。
ガシッ
「何処に行こうとしてるのですか?」
マモンにスゴい形相で肩を掴まれドアに行き着く前に捕まってしまう。掴まれた肩はギシギシと鳴ってはいけない音が鳴ってる気がする。ていうか、痛い。
そして、俺は夜通しで紙の研究を付き合わされた。因みに研究材料としてワタルは他の紙と文房具を提供した訳である。
次回は多分GWに入るまでには更新すると思います。