74話ワタル元の世界の身内を紹介する
ワタルは説明した。この二人は自分の身内だという事を。そして、仲間に加えたいという事を。それを聞いた面々は、しばし考えた末に各々の考えを口にした。
「妾は良いと思うのぅ。こやつらには罪は無いとは言えんが、これからワタル達と一緒に罪滅ぼしをしてけば良かろうて」
さすが俺のフランだ。世界最強の魔王に寛大な言葉を言われては他の者は何も言われなくなるだろう。もしも、殺せとか言った場合は逆に魔王に殺される未來しかないからだ。
「我も賛成じゃ(魔王フランシスカに反対したら殺されてしまう)」
「私はフラン様に従うだけです」
「にゃふふふふ、賛成した方が面白くなりそうにゃ(まだ、死にたくないしにゃ)」
「何だか良く分からないが、我も賛成としとこうかの」
他の兵士達は騒ぐだろうが、獣王テンガ、魔王フラン、夜の女王ルリが言えば黙るだろう。
「取り敢えず反対はいないな。よし、自己紹介を頼む」
「はひぃ、わ、私は夏希です。あ、アユム兄とは従兄妹になります」
「…………わ、私は遥と言います。アユムちゃんとは幼馴染みになります」
良くこのメンツの前で話せたな。召喚されたばかりの俺だったら気絶してるかも。
「幼馴染みとな…………それにしては、ちっこいな。プックククク」
「なっ!ちっこいって言うな。好きでこうなったんじゃないやい」
「ほう、妾に意見するとは面白い輩よのぅ。のぅワタルよ」
遥の頬がぷくぅっと膨らむ。背が縮んでるせいか昔よりも余計に可愛いく見えるのは俺の気のせいか。まぁ昔から知ってるおかげで小悪魔的な性格を熟知しておる。だから、きっと気のせいだろうと勉は考える事にした。
だが、フランが俺に話を振ってきたせいかいつの間にか遥の頭を小さな子供を愛でるみたいに撫でていた。
「…………まぁまぁそうそう怒るな」
「そう言って何故私の頭を撫でてるのですか?」
「悪い悪い。ついな」
「謝るならまず止めてください」
そう言いながらも遥の頬はピンクに染まっている。嫌々と言いながらも好きの内という事だろうか。
「だから…………止めてって言ってるじゃない?!」
遥は出そうと思い発動した訳ではないが、無意識で中級風魔法であるトルネードを発動しゼロ距離にいたワタルを吹き飛ばしてしまう。
「ゲフっ?!&#@☆@§%♯◯♯♭」
「「ワタル!」」
「お主やはり敵なのか!」
「えっ!いやその~」
「待て、これは事故みたいなものじゃ」
遥が風魔法で吹き飛ばしたせいで、テンガが遥に殺意剥き出しにすると、フランが遥の前へ立ち塞がり、テンガの殺意に殺意をぶつけ相殺した。そうしなければ、遥と後ろにいた夏希も気絶していたことだろう。
「大丈夫かや、遥とやら」
「あ、ありがとうございます。えぇーと」
「まだ名前を言ってなかったの。妾はフランシスカ…………特別にフランと呼べば良いぞ。そちらの夏希とやらもじゃ」
「フランさん、ありがとうございます。先程は噛み付いてすみませんでした」
「うむ、許してやろうぞ。これからも仲良くやれそうじゃ」
ふぅ、フランとは仲良くやってくれそうだ。一番の懸念が一番早く解決してワタルはホッと胸を撫で下ろす。
「して、魔王よ。先程の魔法が事故だとはどういう事だ」
「「えっ!魔王!」」
まぁ初めはビックリするよね。それに…………ロリ体型だし魔王に見えませんよね。
子供の頃から知ってるが、この二人がフランを魔王と知った位で恐怖に陥る事はないとワタルは確信している。何故ならこの二人は―――――
「「フランさんは魔王何ですか?」」
「うむ、妾が世界最強にして歴代最強のフランシスカなのじゃ。畏れ戦くのがいいぞ(決まったのじゃ)」
中二病ぽいポーズを決めフラン自身は格好良く決められたと思っている。が、ワタルからしたら「やっちゃったな」と心奥底で密かに感じてる。
「か…………」
「か?」
「可愛いぃぃぃいいぃぃ!ねぇねぇアユムちゃんこれお持ち帰りして良い?良いよね。良いでしょ。ダメだって言ってもお持ち帰るから」
ワタルの予想が的中し遥が暴走した。フランの体をペタペタとここでは証言しがたい箇所まで触り続けてる。遥は可愛い物に目がなく、たまに家へとお持ち帰りしようと暴走するのだ。
まだ小物なら大丈夫だが薬局やケーキ屋の人形を始め小さな子供をお持ち帰りしそうになった時はさすがに俺と夏希で必死に止めたのを今でも覚えてる。
「止めるのじゃ。そこは…………触ったら、ひゃん………や、やめっ」
「いい加減にせい」
バチコーンと鉄製のハリセンでツッコミの要領で遥の頭を叩いてやった。ワタルは昔の事を思い出し、その仕返しで紙ではなく鉄にしたのはご愛敬である。何の仕返しなのかはこの際置いとくとする。
「いたぁぁぁい、アユムちゃんそれか弱き乙女の頭を叩く物じゃないよね?」
「何のことだ?それより…………俺の嫁に何をしてんだ?」
そう言ってるがフランの件と昔の仕返しで半々といったところだ。
バチコーン
「ぎゃぁぁぁぁああぁぁぁ」
遥は頭を押さえ悶絶してる。ただ、遥自身はまだ自覚ないが風姫の頃の身体能力により、涙目と悶絶だけで死なずに済んでる。