8話名刀・桜花人間になる
フランとは違う美少女が隣でスヤスヤと寝ていたので、ワタルは飛び起きた。
「あ、おはようございます。マスター」
裸のまま、土下座で挨拶する謎の美少女。
「き、君は一体....」
「うるさいな。一体何....」
ワタルの大声でフランが起きてしまい、裸の美少女を見てからワタルを見ると『これはどういうことかな?』と口元は笑ってるが目が笑ってない。
「ご、誤解だ。フラン」
「な、何が誤解なのかな?目の前に証拠があるのに」
う、それを言われると男はつらいよ。
「どういうことか説明なさいよ」
裸のまま、ワタルの肩を掴みグラグラと揺らす。揺れてるのはワタルなのにフランの胸もポヨンポヨンと揺れて良い眺めかもしれない。
「お、俺だって知らないよ」
この女性に見覚えはワタルはもちろん、フランも魔王城から出てからはずっとワタルと一緒にいたから見覚えはない。
「マスター、驚かせてすみません」
フランと口論になってこの謎の女の事忘れてた。
「マスター、私は桜花です」
「え、今何て....」
ありえない名前が出たので聞き返した。だってその名前は俺の....
「だから、あなたの刀である桜花です。マスター」
謎の少女がハッキリと自分の事を桜花と言うとフランが何か集中するように目を瞑った。
「ふむ、確かにあの刀と同じ気配に魔力の流れが感じるよ。武器が人化するとは聞いたことないよ」
フランにも桜花が人化になった原因はわからないみたいだが、まずは....
「なぁ、考えるのはいいけどまず服着ないか?」
「「あっ」」
自分の今の状態を見る。
「にゃはははは!すっかり忘れてたよ」
「すみません。マスター、すぐに着替えます」
桜花と名乗る少女は目を瞑ると瞬時に桜模様の着物を着ていた。肩は出ていて、裾はミニスカートよりは若干長いがそれでも普通の着物よりは露出は多めである。
フランはワタルが通販で見せて買ってあげたチビTシャツに短パンというフランクな格好でブラを着けてないので、もろにスタイルが分かって少し目のやり場に困る。
「さて、全員着替えたところで君は桜花というけれど、何か証拠ないかな?例えば、刀に戻るとか?」
「そうですね。実際に見てもらった方がいいですね」
桜花と名乗る少女はその場に立つとガッチャンと名刀・桜花の姿に変わり床に落ちた。
ワタルは刀になった桜花を手にとり鞘から抜き、本当に桜花だと隅々までジックリと確認した。
『マ、マスター、そんなに見つめられると恥ずかしいですっ』
「わ、悪いっ」
急いで鞘に戻し床に置くと桜花は人化した。
「これで分かってもらったと思います。マスター」
「あぁ、疑って悪かったよ」
「まったくだよ。私はワタルの事を信じていたからね」
そんな事を言うフランにワタルがジーーーっと疑いの眼差しで見ている。
「真っ先に疑っていたのはどこの誰だったかな?」
「うぐっ、ごめんなさいです」
素直に謝るフラン。格好から見ても魔王とは誰にも思われないだろう。ワタルの世界の服を着て出歩いても大丈夫かと心配したが似たような服もこちらの世界にもあるらしく、何の心配もいらなかった。
「さてと、朝食にしようと思うのだが、桜花は食べるのか?」
「いいえ、食べなくても平気です。私は刀ですので」
桜花を部屋に置いて、宿の食堂でフランと二人で朝食を召し上がった。
「モグモグ、それにしても桜花が人間になるとはな」
桜花の裸を不可抗力とはいえ見てしまい、思い出す度に頭を振り忘れようとする。桜花は相棒として使ってきたので、今さら異性として見ることは難しいだろう。桜花自身はワタルの事をどう見ているかわからないが....
「そうだね。魔法の武器でも、ビックリだね。モグモグ....」
この世界の魔法を極めたフランでも桜花のような武器を作製する事は不可能である。まだ、ワタルの魔法の方が現実的である。
「ねぇ、ワタル...」
「だめだよ」
フランが何を考えてるか覚ったワタルは先手を打って断った。
「まだ、何も言ってないじゃない」
「はぁ、どうせ桜花を調べさせろ!と言うつもりだろ」
ギクッと擬音が実際に聞こえそうな程動揺して目を泳がせている。
「な、何のことかな?そ、そんな事一切お、思ってないよ」
魔王と思えない程動揺しまくりである。
「やはり、やろうとしていたんだね」
「うぐっ、やっぱりダメ?」
ウルウルと上目遣いでお願いしてくるが、これだけはワタルの答えは変わらない。
「桜花は俺にとって相棒、いや家族みたいなもんだからダメだよ。その代わりに娯楽や甘えてもいいからな」
照れくさそうに言うとフランが「ぷっ!」と笑った。
「ぷっくくく、何そのキザなセリフ、似合わないね」
フランが笑うので余計にワタルの顔が紅くなった。
「あ、照れてる。かっわいい」
「う、うるさいよ。もう、食べたね。部屋に戻るよ」
ワタルが席を立つとフランも席を立ちついていく。
部屋に戻り、準備をすると冒険者ギルドに行き、最初の指名依頼を除いて初めてのクエストをやるつもりである。
Dランクでめぼしいクエストだとレッドブルと言う赤い牛の魔物討伐が良さそうなので受注して出掛けることにする。
「レッドブルだとこの近くの草原にいるみたいね」
フランと手を繋ぎ、フランの転移の魔法でレッドブルが生息すると思われる草原まで一瞬で飛んだ。
「本当にここなのか?見当たらいけど」
「ここのはずよ。私の魔法で誘き寄せてあげる」
ワタルには聞き取れないがフランが魔法の呪文を唱えると甘い香りが草原周辺を包みこんだ瞬間にドドドと地震みたいに近づいくる。
「ちょ、ちょっと多過ぎやしないか」
「あ、あはははっ、ごめん。やり過ぎた。」
本来なら5匹がノルマのはずたが、実際にフランの魔法で50匹と10倍の数が引き寄せれてしまった。
「はぁ~、しょうがないか。いくよ、桜花」
『はい、仰せのままに。マスター』
刀状態の桜花を鞘から抜かずに腰の辺りで侍の達人がやるように居合の構えをとった。
「桜流一刀術第六・居の型....」
居合の構えをとっていると思ったら、レッドブルの群れの向こう側で桜花を鞘から抜いてる状態で歩いていた。
「桔梗」
技名を叫ぶと同時にスーーーと桜花を鞘に納刀していきガチンと完璧に納めるとレッドブルの首が50匹全部その場で落ちた。
「ふぅ、さすがに疲れたよ」
その場で座りこむと人化した桜花がワタルの体を支える。
「お疲れ様です。マスター」
「さすがだね。ワタルお疲れ様」
フランは50匹のレッドブルの肉と依頼完了部位である角を5匹分を宝部屋に入れ、ワタルの側に寄って来た。
「フランのおかげで疲れたよ」
おかげの箇所を敢えて強調する。
「あっはははっ、ごめんなさい。まぁ、食料を手に入ったし、レッドブルの肉美味しいんだよね」
一様は謝るが直ぐにフランは詫びれた様子はなくなる。ワタルもフランの性格が分かってきたので、敢えて追及しないでおく。
「あーーー、姫様見つけましたよ」
耳と尻尾が生えてるので獣人だろうか。服装は腹が出ており露出があるくノ一衣装に身を包んだ獣人の少女がシュタッと地面に着地して叫びながらこちらに近寄ってくる。
「げっ!セツナか」
くノ一獣人少女の姿を見ると嫌そうな顔をして一歩ずつ後退る。
「知り合いか?」
「ま、魔王城にいた時の部下よ。と、取り敢えず逃げるわよ」
フランに腕を引っ張れる形で走りだした。
「そうは行きませんよ。この閃光のセツナからは逃げることは出来ませんよ。姫様」
一見、とても速そうな二つ名だと思いきや....
「誰が付けたのよ。そんな二つ名」
「あ、今私が付けました」
ズコッと転びそうになるワタル。自分で付けたんかいとツッコミたいがセツナと呼ばれたくノ一獣人少女は格好通りに速く余裕がない。
「そんなスピードで私から逃げられるとお思いかな。姫様」
さらにスピードを上げたと思ったらシュッと姿が消えフランの目の前に現れた。
「姫様~、お会いしたかったです」
フランに抱きつこうとしたが出来なかった。
「鬱陶しいわよ」
抱きつく瞬間にセツナの顔面にフランが回し蹴りを見事にクリーンヒットさせぶっ飛んだ。
「ヴへぇ....¥#?!@,¥#*&$☆♪」
ぶっ飛んだ先には太い木があり、それを5本程根元から折れた。一般人なら確実に死ぬ重症になるだろう。
「あれ大丈夫か?」
「大丈夫よ。あの子はタフなのが取り柄だから。ほら見てなさい」
フランが指指した先には折れた木の残骸を退けながら起きてきたセツナの姿があった。
「あぁ~、久しぶりに喰らった姫様の蹴りは最っ高です」
うっとりとした表情で良くみたら顔等の肌がツヤツヤと輝いてみえる。
「あの~、フランさんもしかして、あのセツナと言う娘は....」
「ワタル、言いたい事は分かるからそれ以上言わないで....背筋が凍るから」
ブルブルと震えている。なるほど、セツナはフランさえも退く程のドMらしい。
「姫様、魔王城に戻りましょうよ。おじいちゃんも探してますよ」
「グリムか。妾はしばらくは戻らないのじゃ。この人間のワタルと旅をしている。それにふ、夫婦になったのじゃから」
夫婦の箇所をモジモジしながら恥ずかしそうに言うとセツナは驚愕した。
「な、な、姫様が人間と!ありえないよ。あの姫様が....ブツブツ」
ブツブツと言い出すセツナがワタルにある提案を出してきた。
「そこの人間、ワタルと言ったか。もし、私が勝ったら姫様と別れて一生近づくな」
セツナの提案にフランが何か言おうとした瞬間、ワタルは手を出しセツナの提案に乗った。