70話ワタルの料理VSコック長の味見
遅くなってすみません
「鳥肉を浸けてる間にあれを作ってしまおう」
ミレイヌ全国では、エビの事をシュレイプと呼ぶらしい。このシュレイプはもちろん海産物で、この獣王国オウガは海からどんなに急いでも一週間は掛かる内陸に位置していた。
そんな場所で海産物は手に入らないし、もし運良く手に入っても腐ってる物だ。あともう一つ方法がある。それは氷魔法を使える魔法使いを雇い冷凍保存をする方法だ。
ただし、その方法だと常に氷魔法を掛け続けなければならなくなり、料金が滅法高くなって一般では手が出せなくなるのだ。
そんな海産物であるシュレイプをワタルは裏技で手に入れた。それは久しぶりに使う通販だ。
通販で新鮮なシュレイプの背わたを取り除き軽く洗ってから酒とすりおろした生姜で下味を加え、これでシュレイプの下処理は完了だ。酒はあると思ったが、まさか生姜まであるとは思わなかった。
シュレイプの味の決め手となる合わせ調味料を作り、中華鍋に油を引き片栗粉をまぶしたシュレイプを色が変わるまで炒め、そこに微塵切りにした長ネギ、ニンニク、生姜を加え炒め続ける。
最後に好みで豆板醤と合わせ調味料を入れ、シュレイプに火が通りトロミがついたら"エビチリ"の完成だ。
エビチリを皿に盛り付け、これをコック長にドキドキしながら味見を頼んだ。フランやテンガに通用してるワタルの料理は、コック長に通用するんだろうか。通用すると信じたい。
「コック長、出来ました。味見をお願いします」
「ふむ、これは…………シュレイプか」
コック長は、コイツは食材の選択を間違えたと思っている。前で説明した通りの理由で、新鮮なシュレイプは高級食材と化けてしまうからで、そんな事で腐り掛けのを出したと思っている。
でも、コック長にも意地がある。部下が出した料理の味見は、いつも自分がしてきた。獣王テンガや城に住まう者に出す料理を決めてきた自負がある。
よって、目の前の料理が腐り掛けの食材を使われいようとも味見をしない選択肢は存在しないのだ。それに、ワタルはコック長に料理勝負を仕掛けて両者引けない状況なのだ。
「…………(えぇい、ままよ)」
はぁむ…………プリプリ
コック長の口の中でエビがプリプリと踊り、生姜とニンニクの匂いが食欲を余計にわいてくるではないか。
それに…………旨味の後からピリッと辛味が襲ってきて手が止まらなくなってしまう。こんな料理…………自分に作れるだろうか。否、作れはしないだろう。もし、調理方を教わってしてもだ。
「どう………でしたか?」
「…………認めたくはないが、合格だ」
『おおぉぉぉぉぉ、あのコック長が一発で合格をだした!』
声には出さないが、ワタルの心の声では『よっしやぁぁぁぁ』とハイテンションな状態である。
「では、次を作ります」
「なに!次だと」
「一つだと…………つまらないじゃないですか」
と、自分の作業場に戻り作業再開した。
浸け汁に浸けてた鶏肉を小麦粉に軽くまぶしたのと、小麦粉に独自にブレンドしたカレー粉混ぜた物を同じくまぶした二種類を用意した。
これを底が深目のフライパンに油を大量に入れカリッと五分揚げればスタンダードとカレー風味の唐揚げの出来上がりだ。
「出来上がりました。味見お願いします」
「……………今度は…………鶏か」
コック長は、また変な物を出したと思ってるが先程のエビチリが衝撃的で油断にならない。
ミレイヌ全国の常識で鶏は卵を産まなくなった痩せたのしか使わないのが一般的だ。そんな物を城で出す訳にはいかない。が、コック長には一目で分かった。出された鶏は痩せてる風に見えない。むしろ卵を産む前の若鶏だと!何の躊躇いなく唐揚げを口にした。
ついでに言うと牛も牛乳が出せなくなった痩せこけたのを使う。豚だけは、他の生産物はなく成長したら解体して肉にするので『肉は豚だけは美味しい』と言ってる者がいる程だ。
カリっジュワァ
外はカリっと揚げてあり、中はジュワァっと柔らかく噛む度に肉汁が溢れてくる。
「…………な、何だ!これは」
「若鶏の唐揚げですが」
「こんな料理、初めてだ。あんな大量の油で焼くなぞ━━━」
「いえ、あれは"揚げ"という調理方法なんです」
コック長はまたもや衝撃を受けた。自分が知らない調理方法がこんな若造が知っている事に。本当なら認めたくないが……………食ってみて分かる。最初から自分の技術よりも上だったのだと思い知らされた。
「さてと、次もあるんで」
ちょっ!まだあるのか!これ以上……………儂のプライドをズタズタにしないで!




