68話闇のゲーム"オセロ編"決着
白い光が収まると、ワタルの目の前にはゲームの"設定"を行った際に出現した本が現れパラパラとページが捲られてとあるページで止まった。
そのページに文字が浮かび上がり"勝者はワタル"と書いてあり、その文字が消えパタンと閉じたと同時に目が開けられない程の黒い風が辺りを包み込んだ。
「みんな大丈夫か?」
風は止みワタル自身も予想外な風の強さに、全員の安否を確認する。獣王国オウガ側は全員無事だ。ムロイア国側というと全員、糸が切れた人形のように倒れ込みピクリとも動かない。
ワタルの目の前にいるムライア王は椅子に腰を掛けてはいるが前のめりに疼くまって他の人同様に動かない。
あのワタルの部下にしてくれと懇願した男も同様だ。あの短時間で心変わりも出来るはずがない。もし、出来ていたのならある種の達人かもしれない。
「み、みんな死んだのかや?」
「いや、一応は生きてるよ。ただ、廃人というよりは生きた人形みたくはなってるけど」
「生きた人形?」
「自分の意思では、動けないけど他人の命令で動くんだよ。テンガ、こいつらどうする?」
「うーむ、そうじゃな…………これじゃ、公開処刑をやっても意味あるまい。おい、こいつらを牢屋にぶちこんでおけ」
テンガの部下達がムライア王を含めた幹部達全員に命令すると、一応命令通りに動いてくれたが、その動き方がまるでゾンビやキョンシーぽくって子供が見たら泣きそうだ。
「あっ、そうだ。フラン頼みがあるが良いか?」
「ワタルの頼みなら何でも良いのじゃ。世界征服でも良いのじゃ」
いやいや、世界征服ってそんなものいらないから。世界中が敵になっちゃうじゃないか。
俺は戦争で捕縛した雷姫リリー・ムライアと黒猫が捕縛したルー・ムライアをフランの前に転がした。二人共、魔力を封じ込められてるので魔力で作ってた鎧は無く、今現在は下着姿だ。
「こいつらは…………元王の娘達ではないか」
「こんな惨めな格好でいるくらいなら…………いっそう殺してくれ」
「殺すのは、ルー一人だけでお願いします。リリー姉様は助けて下さい」
「ルーお前…………」
こういう姉妹の絆は、いつ見ても素晴らしいものだな。これで殺したら俺達が悪者扱いになってしまう。
「ワタル殿、何故この二人は"生きる人形"となってないのじゃ?」
「それは…………あの元豚王と無関係になったからだよ。フラン、これを取る事出来るか?俺には、まだ無理のようでな」
ワタルが指を差した先には、雷姫と風姫の腕…………いや、腕についている腕輪だ。
「こ、これは…………何という物を!あの元王は本当にクズのようじゃな」
フランが二人が装着してる腕輪を見て絶句してる。それほど危険な代物なのだろうかと状況を知らない周りの人はザワザワと騒いでいる。
「これは…………隸属の腕輪じゃ。これを装着された者は強制的に文字通り隸属されてしまう。全部の国で固く製造と使用を禁じられている魔道具じゃ。
これの厄介なとこは装着されている本人自身が隸属されている事に気がつかない事じゃな。つまり、装着した者に崇拝や尊敬に近い形で従う事になるじゃろう」
フランの説明によって、さらに周囲がザワザワとうるさくなる。
「それが本当なら許してやっても良いじゃないか」「しかし、元王の娘だぞ、許してたまるか」
と、許すか許さないかで二分に話が割れている。
「静かに!皆さん、ここは俺に任せて貰えませんか?」
「うむ、儂はワタル殿に任せてみようと思うが…………みなの衆はどうだろうか?」
「獣王様がそう言うのであれば」「私達もそれで構いません」
テンガの宣言でみんなの意見が纏まった。テンガありがとうと心の中で思い、フランに腕輪を外して欲しいと頼んだ。
「うむ、出来るぞ。ちょっと離れておれ。小物転移」
二人の腕にあった腕輪は瞬時に消えフランの手の中に瞬間移動していた。流石は俺のフランだ。こんな容易く解決していまうとはな。
「「うぅ………」」
「おい、二人共大丈夫か?」
隸属の腕輪を外した瞬間にその場で気絶してしまった。何かマズイ事したか?
「長年、隸属され続けていたのじゃろう。その後遺症で記憶の混濁や隸属解消による別人格の消滅等が起こって今は気絶してるだけじゃ」
「それ、大丈夫なのか?」
フランの説明を聞くと超危険な感じしか聞こえないんだが。
「大丈夫じゃ、直に目が覚めて元通りじゃろう」
ほっ、安心した。だって、二人共俺の知り合いなんだもん。もちろん、俺が前にいた世界の知り合いだ。どうやって来たのかは…………十中八九あの豚王の仕業だろうな。
「それじゃぁ、この二人の身柄はこっちで預かるでいいんだな?テンガ」
「あぁ任せる」
まぁこれで戦争も終結し平和になったわけだ。ムロイア王国はどうなるかと言うと獣王国オウガと合併され獣連合国オウガと名前を変え獣人と人間が一緒に暮らせる国になるそうだ。
「取り敢えず、俺達も戻るか?」
「そうじゃそうじゃ、帰って宴なのじゃ」
「宴か……………よし、オウガ一の宴にするぞ。お前ら帰って準備を致せ」
「ええぇぇぇぇ!獣王様、あの者達はどうするのです?」
「ムロイア王…………いや、ムロイア元王か、ほっといても大丈夫じゃろ。自分の意思では動けないしな。それに儂は早く宴をやりたい」
「はぁぁ、分かりました。しかし、宴が終わりましたら会議ですからね」
「ええぇぇ…………良いよ」
テンガって獣王だよな、偉いんじゃないのか。顔だけは怖いが初めて会った時から威厳は感じなかったからな。しょうがないよな。
「さーて、みんなで帰るぞ」
「なら、妾にお任せなのじゃ」
フランの転移魔法で全員をオウガへ転移して、みんなで今生きてる事を噛み締めた。
これで戦争は終わり、後三話程で二章は終わります。




