64戦神とのとある契約
『もう良いか?それでは選定を始める。勝利者に褒美を敗者に罰を………神魔法━━━』
戦神セクメトが魔法を使用する瞬間━━━
「ちょっと、待ったあぁぁあぁぁぁ」
ワタルがフランに頼んでムライア国側の陣地へとワープさせてもらった。ついでに、フラン本人に加えオウガ側の重要人物一通りワープした。
『何じゃ、次から次へと』
ワタルがストップをかけたお陰で戦神セクメトの魔法は中断した。取り敢えず時間は稼げた。
「戦神セクメトよ、代わりにムライア国王と王妃の罰は私に任せてもらえないだろうか?」
ワタルの提案に姿は見えないが眉をひそめる戦神セクメト。
『何ゆえ、そんな提案をする?』
「それは我等オウガ側の褒美となるからでごさいます」
『むぅ、そんな事が褒美になるのか?いや、しかし……………』
「罰を与える権限をくれる代わりにこれを………」
ワタルは懐からビンを取り出し戦神セクメトに見せるように天に掲げた。
『そ、それはまさか!い、いやしかし、こんな所にあるはずが………』
「戦神セクメト様は無類のお酒好きと聞く。そんなセクメト様の目にはこれが偽物に見えると…………」
『ムムッ、そこまで言うなら試して見よう。もし、偽物なら分かっておるな』
戦神セクメトがそう言うと、ワタルが両手に持ってたビンが光と共にその場から消えた。
『ゴクゴクっプハアァ…………これは正しく、幻の純米大吟醸ではないか!どこでこれを』
ワタル以外何の事だか理解出来ていない。何故なら、この世界には存在しない物だからだ。それにフラン達には、この酒(他にもあるが)を飲ませた事はない。だってぇ、単純に高いんだもの。
「それはですね、私の故郷のお酒でして、その中でも高級品の物を選ばせて貰いました」
嘘は言ってない。ワタルがいた世界でも五万円はする。良い酒は良い値段がするものだ。まぁ五万円で神の一人を買えたと思えば全然安い方だと思う。
「ワタルぅ、我もあれを飲みたいのじゃ」
フランがワタルの袖を引っ張り催促をするが━━━
「………ダメというより今は無理だな。本当に高いんだよ」
「…………ショボーンなのじゃ」
フランと話していると戦神セクメトがお酒を飲み終えたらしく話し掛けてきた。
『おい人間、この酒はお前の故郷のだと言ったな?』
「はい、申しました」
『もしかして転移者かそれとも転生者か?』
「前者でございます」
『そうか!そうかそうか。気に入った。其奴らに罰を与える権限をソナタに譲渡する。これでいいな?』
「ありがとうございます」
ワタルの心内で『よっしゃあぁ』とガッツポーズをし、これで復讐出来るぞ。そう考えていると頭の中に声が響いてきた。
『貴様の頭の話しけておる。名前を聞こうか』
『ワタルでございます』
『それは嘘じゃろ?真名を申せ』
やはり神だからか…………いや、おそらく神族か。声のみだから推測になってしまうが。
『すみませんでした。桜井歩夢です』
『うむ、正直でよろしい。歩夢であったか、頼みがあるのだが………』
神様が俺に頼みなんてなんだろうか?無理難題な事でなければ良いんだけれど…………?
『な、何でしょうか?』
『そう固くならなくても良い。簡単な事よ、定期的にお酒とそれに合うツマミを奉納せよ』
奉納よりは、ただ酒の間違いじゃないか。
『うん?何か言ったか?』
神様だけに勘は鋭いようだ。
『いえ、何も言っておりません。はぁ、分かりました。それで奉納する代わりに何かあるのでしょうか?』
『むぅ、しょうがないの。我、戦神の加護を与えよう』
そう言うとワタルの右手の甲に斧みたいな印が光り数秒後消えた。
・戦神セクメトの加護
効果:ステータス全般を最低二倍から最高六千倍まで変更できる。
変更の仕方は上げたいステータスを何倍にするか念じるだけです。
な、なにっ!まだ二倍や十倍なら分かるが六千倍って何だ!六千倍って何だ!大事?な事なので二度言ったよ。
『あ、ありがとうございます。それで、もう一つお願いがございます』
『もう一つとな、欲張りなヤツよの』
『いえ、いつか叶うならば神の国ファザーのご入国を許してもらえればと…………』
しばらくの沈黙が続いた後、戦神セクメトが答えを出した。ワタルはファンタジーなら一回は行ってみたいベスト3に入ってる場所なのだ。"許可を出して"と手を合わせ神頼み?をするのである。
『…………良かろう。ただし、ワタル一人で来るのだ。その際にはお酒とツマミを忘れぬようにな。我々の国ファザーの入り口なのだが、それぞれ教会にある。入りたければ、いつでも念じればよい。詳しい場所を教えてやるぞい』
教会か、近くにあるのかな?後で探してみよう。
『では奉納を待ってるのでな。今から楽しみじゃい』
戦神セクメトの声が聞こえなくなると、周囲の時間が進み始めるかの如く再び騒がしくなり始める。