60話ワタルVS雷姫改めララ・中編
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ
雷鳴剣タケノミカヅチから発してるとんでもない雷の魔力を前にワタルは金縛りにあったかのように動けないでいた。これを前に通常状態で動けるヤツはバケモノだとワタルは思う。
「こ、これは凄まじいな。こんなの人一人に放つ技じゃないだろ」
あれを喰らったら黒炭を通り過ぎて影のみを残して消滅するだろう。あれを簡単に防げるのは、この世界ではフランぐらいなものだ。でも、それは今までの話だ。
「ふはははは、これぞ、神の成せる業だ。あの魔王でも倒せそうだ」
いや、それは無理だろう。フランを本気で倒したいなら星を砕くパワーでない限り無理だとワタルは思っている。
「プックククク、そんなもので魔王を倒せるなんて笑わせてくれるな。ジョークの才能あるんじゃないか」
わざとララを挑発するワタル。それに対しララは「ふん」と鼻を鳴らす。
「ワタルよ、挑発しても無駄だよ。時間稼ぎの腹積もりだろうがワタシには引っ掛からないわよ」
そんな積もりは更々ないのだが、勘違いしてるならしたままにしとこう。何か面白い事が起こるかもしれない。
「ダメな事はしょうがないか。仕方ない、我の敵を全て防ぎ跳ね返せ"娯楽魔法・装飾系反射鏡」
ワタルはパアァンっと両手の掌を合わせ、合わせた掌を横側にし円形になるよう徐々に離していくと、円形状の水の塊?みたいな物が出現し大きくなっていく。
最終的にはワタルの顔より一回り大きくなり、その物の正体が分かるようになる。
簡単に言えば鏡だ。後ろに持ちやすいよう取っ手が付いた鏡の盾だ。
「それは何なの?そんな薄くて平凡な盾を出して一体何をやろうというの?」
「さぁ?何なんでしょうね」
やはり、この世界には"鏡"は存在しない。今までワタルは一度も見掛けた事は無かったが、王族の雷姫リリーの人格の一つであるララが知らないとすれば完璧に存在しないとこれで確信を得た。
その無知がララの敗北を意味するとはララ自身思いもしなかった。
「何だって良いわ。この神の業に敵うはずないもの」
なら、何故使った!お前は雷姫リリーを俺に託したいはずじゃなかったのか。と、ワタルはツッコミたい。
「おしゃべりはここまでよ。はああぁあぁぁぁ、雷神の鉄槌ああぁぁあぁぁ」
「うおぉぉおおぉぉ(ぎゃあぁぁぁあぁぁ、これは死ぬぅ死ぬって)」
とうとう、振り下ろされワタルは右腕に装着した鏡の盾"反射鏡"で防御しようとするが、あまりに相手の攻撃が巨大すぎて傍目から見ると防ぐ以前に飲み込まれた風に見える。
実際にはララから見ても確実に飲み込まれ、数十㎞先の山を三峰程破壊した。
「死んだか?死んだならそこまでの男だったという事だな。ふっはははは」
普通ならば山を三峰破壊する業(魔法に近い)が炸裂すれば例外(魔王)以外は塵も残さぬだろう。ただし、それが普通ならの話だ。
「うん?誰が死んだって?」
煙が晴れ本来ならララの前に立ってるのは無傷のワタルであった。というか、無傷どころか服も破けてない事にララは驚愕している。
「な、何故生きてる!消し飛んだはずなのに」
「ハァハァ、消し飛んでないから、ここにいるんだけど………(ドキドキバクバク)」
まさにワタルの言う通りで正論である。あるのだが━━━
無傷で無事のワタルの内心はドキドキでバクバクと心臓が高鳴っていた。大丈夫だと最初から分かってはいたが、まるで生きた心地がしない。
だって………だって、例えばだけど巨大竜巻に巻き込まれて、それで無事でピンピンしてるのと同じだよ。周囲からは歓喜の声が騰がる一方で何故無事なの?と疑問の声も騰がりそうな例えだ。
「ハァハァ、次はこちらの反撃だな。覚悟しろよ、こっちは怖かったんだからな」
マジで本当に怖かったんだからな。グスン、こうなったら雷姫リリーが正常に戻った時にどんなお仕置きをしてやろうか。と、考えていた。
「さてさてさーて、自分の技で殺られるがいい。反射鏡解放」
ワタルの右腕に装着している鏡の盾を外し上空に向け投げた。そのまま、落下すると思いきやピタッと上空を向いたまま静止し数秒後、鏡から波紋が拡がるように何かが出てきた。
まずは剣が徐々に出て来た。うーん、最近何処かで見た覚えがある剣が…………というか、雷鳴剣タケノミカヅチじゃないか!
雷鳴剣タケノミカヅチの刀身が出現し柄が出たとこで柄に誰かの手が握られたまま腕一本が出て来た。
まるで、テレビや鏡から這いつくばって出て来るようなホラー映画の中途半端verって感じだ。