59話ワタルVS雷姫改めララ・前編
ガキンガキンガキンガキン
「くっ、しつこいな」
攻撃してくる雷鳴剣タケノミカヅチを回避又は弾き返すが、再び向かって来るのループで体力が削れる一方である。
何処かに雷鳴剣タケノミカヅチを操作してる雷姫リリーがいるはずだが、こう攻撃されちゃ捜索に集中出来やしない。
どうにか弾き返し隙を作るとワタルは桜花を鞘に納刀すると瞳を閉じとある技の構えをとった。
「桜流一刀術居の型…………」
納刀して瞳を閉じてる間、雷鳴剣タケノミカヅチの気配に集中するのと同時に脱力をする。居合いは刀を納刀してる間の脱力と抜刀した時の瞬発力の差が大きければ大きい程に威力が増大していくのだ。
ビューンブンブンビューンブンブン
雷鳴剣タケノミカヅチが動く度に蜂に似た風切り音を頼りに場所と距離感を計り一気に抜刀する。
「はああぁぁぁぁぁ"雷花一閃"」
━━━━━━━━キイィィィィン
音を置き去りに放たれる雷速の居合いは回避不可能の速さにて雷鳴剣タケノミカヅチに見事に命中し刀身を根元から粉々に打ち砕いた。
柄部分のみ残りそのまま落下したが、その下にいた雷姫リリーがいたようでキャッチしワタルのとこまで飛んで来た。
「酷い事をするもんだわ。私の剣が壊れちゃったじゃないのよ」
酷いも何も襲ってきたから砕いたまでだ。だが、壊したのは俺だ。悪い事したなと思って謝ろうとしたら━━━
「まあ良いですわ。こうすれば、直りますしね」
雷姫リリーはそう言うと柄部分に魔力を流した瞬間、若干残った刃部分が雷を帯びて見る見るうちに綺麗な刀身が蘇った。
「直るのかい!」
折角、謝ろうとしたのに俺の良心を返せ。と言いたい。
「うふふふふ、見事なツッコミをありがとう」
「うるせぇよ。そんな事よりお前誰だ?」
「……………」
「沈黙は肯定ととるぜ」
「………何処で分かったのかしら」
「強いて言えば、雰囲気だな」
「そう、でもこの体はリリーよ。ワタシはリリーのもう一つの人格なの。名前は無いわ」
誰かが変装ではなく、多重人格とは驚きである。どうやら、雷姫リリーは暴走で気絶した時に入れ替わってしまったようだ。
「うーん、名前ないのも不便だしな。よし、俺がつけてやろう」
「はぁー、そんなの良いわよ」
拒否るが満更でもないようで顔が深紅に染まる。
「そうだな、ララってどうだろ?」
「ララ………ララ………ふん、安易そうだけど仕方ないから、そうつけさせてあげるわ。そう、仕方なくよ」
ツンデレ来たぁーっとワタルが内心でこっそり喜んでいると、ララは目頭に涙を浮かべていた。こちらはこちらで内心喜んでくれたようだ。名前を付けたかいがあるものだ。
「名前を付けてくれたお礼として━━━」
「お礼?やっぱり嬉しいんじゃ………」
「いらないなら良いのよ」
「ご免なさい、俺が悪ぅごさんした」
「ふん、リリーの情報よ。リリーはね、転移者よ。で、この隷属の腕輪によって記憶を改竄されてるのよね」
「他人事だな。いや、別人格だから他人なのか」
「うん、他人みたいなものだよ。ただね、ワタシはリリーの事を大切にしたいし、幸せにしたいと思ってるの」
それは、同じ体を共有してるからだろうか?
「ワタシという人格が生まれてから、ずっと見守ってるけれど………涙は見せないし、あの王様の言う事を頑なに守ってる。ただ、ワタシには分かるのよ。内面では苦しんでる事を」
何処か悲しそうに空の彼方を見るララ。
「それで俺に何かやらせる気か?」
「ふふっ、簡単な事よ。ワタシと戦いなさい。そして、あなたが勝ったならリリーを託すわ」
俺を託せる人物かどうか試すのか。受けて立ってやるぜ。
「あぁ、その勝負受けてやる」
「ありがとう。お礼を言うわ。あともう一つ…………せめて油断はしないよにね。本気で来ないと………殺すよ」
そうララは言うと、雷の魔力が溢れ周囲の大気が揺れ鳥達が逃げ出した。
「くっ、何て魔力なんだ。この俺が冷や汗が掻くとは、雷姫よりも高くないか!」
雷姫リリー改めララと戦闘する事になり、絶対勝ってやるとワタルも闇反の魔力を展開して応戦する。
バチバチガキンガキンザシュガキンガキンバチバチ
「ふはははは、おら死ねシネしね死ねしねシネ死ね」
何か口調と性格変わってねぇか!目も怖いくなってるし、これ死ぬんじゃないか。
斬り返してる際、俺の肌に雷の魔力が当たり昔テレビで見た静電気の実験みたいに地味に痛い。
「くっ、痛っ痛っ」
「そんなことじゃ、リリーを助けられねぇよ。オラオラオラ」
バチバチバチバチバチバチバチバチ
肌の上を闇反魔法でコーティングされてるから、本来は例外なく魔法は無効化され透さないはずだがララの雷魔法の電気は透ってしまう。
「それじゃ、これで最後にするぜ。『タケノミカヅチよ、ララの名において命ずる。神々の名を解放し、真の力を解放す"雷神の鉄槌"』」
雷鳴剣タケノミカヅチから天まで届くであろうと思わせる程の雷の魔力が展開され雲━━いや、空を貫いた。




