57話ワタルVS雷姫・中編
雷の障壁?に周囲を囲まれネズミ一匹も通り抜ける隙間もない。ただの障壁?なら壊すまで攻撃を繰り出せば普通なら良かっただろう。
だが、この障壁?は時間が経つにつれ収縮している。このままだと圧迫され圧迫死+感電死が待っている。
時間がないなか雷の障壁を切り刻み小さな穴を開ける事は出来るが直ぐに修復して元通りになってしまう。
本当はまだ使いたくなかったがしょうがない。背に腹は変えられない。
「………娯楽魔法・装飾系"鏡収縮砲"作製に入れ」
次から次へと鏡が出現すると、自動的に鏡と鏡がくっつき徐々に大砲の形に形成されていく。数分後、大砲は出来あがった。問題はここからだ。
「エネルギー充填……10%……20%……30%……」
と、砲口から光が溢れてくる。問題は鏡の大砲が充填されるエネルギーに耐えてくれるかどうかだ。
「60%………70%………80%」
ピキっピキ
エネルギー充填率80%越えたところで砲身にヒビが入った。ここで止めて放つべきか?いや、そんな事やってこわせるとは思えない。
「耐えてくれよ。90%………100%……全充填」
ピキっピキっピキっ
さらにヒビが広がり嫌な音が響き渡る。
「鏡収縮砲発射」
ブオォォォォォォォォォン
発射されたと同時にヒビが走り、今直ぐにでも壊れてもおかしくない。
「いけぇぇぇぇぇぇ」
雷の障壁?に光エネルギーが当たり貫こうとしている。障壁を壊すのが先か、大砲が壊れるのが先か時間の勝負である。
ピキっピキっピキっピキっピキピキピキ
ヒビが大砲全体に走ってしまい、行き場のなくなった光エネルギーは暴発一歩手前まで迫っていた。
「あっ!ヤバっ」
━━━雷姫リリーside━━━
少し時間は遡り、ワタルが充填中の時、雷姫リリーはワタルが閉じ込められている雷の障壁?を見上げていた。
「ふっははははは、この"雷宝球"からはけして逃げられないわね」
雷宝球は、相手の周囲を雷の壁で覆うだけのシンプルな業だが、シンプルだからこそ強力無比な業なのだ。
雷宝球の中で攻撃し続けて、もし壁が壊れてもそこから修復してしまうのだ。
そして、一番の特徴は壁が縮んでいき最終的には相手共々消滅する事だ。
「うん?何か魔力を感じるわね。何かしようとしても無駄だというのにね。ご苦労様だこと」
だが、この魔法には弱点があるのだ。それは、その場所から移動出来ない点である。移動してしまったら、雷宝球との魔力の繋がりが切れ雷宝球が霧散してしまう。
「あら、これはえーと、ヤバくないかしら」
雷宝球の一ヶ所が妙に引っ張られ突き破られそうな感じで、そのまま突き破られたら雷姫リリーに直撃しそうな位置が徐々に膨らんでいく。
だが、雷宝球の性質上その場所がら動けない。雷宝球を敗れないことを祈るのみだ。
ブオォォォォォォォォォン
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
祈りは虚しく雷宝球は突き破られてしまい、突き破った光エネルギーは身動き取れない雷姫リリーに直撃し飲み込んだ。
だが、雷宝球に空いた穴はみるみる内に閉じていく。これで、ワタルは脱出失敗と思いきや雷宝球が爆発してしまった。
「ゲホゲホ、いやぁ、危ねぇ危ねぇ。死ぬところだったよ」
雷宝球が爆発した後、出てきたのは黒い球体だった。それが割れて登場したのがワタルだった。
『マスター、危ないではありません。もし、死んでしまったら私はフラン様達に顔向け出来ません。これからは、こんな無茶はしないで下さい』
「桜花すまんすまん。だが、断る!」
『マ、マスター!』
「俺だって死にたくないし、出来るだけ無茶はしないけどさ。仲間を守る為の無茶は少しくらい目を瞑ってくれよ」
『………はぁ、しょうがないですね。でも、それがマスターという人です』
「サンキュー。それで………あの姫様は死んだか?」
「はぁはぁ、さすがです。私の雷宝球を壊すとは大した威力ですね。どうやって破ったのかしら」
「それは機密事項という事で秘密だ」
━━━回想━━━━
どうやってワタルが雷宝球を破壊したのか?それは━━━
「あっ!ヤバっ」
ピキピキピキピキピキピキピキ
鏡の砲身にヒビが全体に走り、ヒビから光が漏れ暴発スレスレだ。周りは雷の壁、目の前には暴発寸前の鏡の大砲、どう考えても普通は逃げ場がなく絶対絶命だ。
「くそっ!こうなれば、ぶっつけ本番だ」
ワタルは魔法発動のため、目を瞑り魔力を高め周囲に目に見える程に魔力が高まっている。
「異質な黒き大盾よ、我に害なすすべての物から我を護れ。闇反魔法・何物も防ぐ黒き大盾」
ワタルの周囲にどこまでも黒い障壁が包み込み少しの隙間もなく覆った。ぶっつけ本番は大成功のようだ。
そして、暴発し行き場の無くなった光エネルギーはワタルを襲ったが無事で雷宝球を壊したのだ。
これが真実であり、奇跡かもしれない。
これにて回想終了。
━━━回想終了━━━