53話黒猫VS風姫・前編
セツナ部隊が王と王妃を捕らえてから少し遡り。
━━━黒猫side━━━
「にゃははは、喰らえ必殺━━━猫々蹴り 」
乗ってた火の玉から勢い良く跳び跳ねると、クルクル廻りライ○ーキックさながらの鋭い蹴りが風姫ルーの顔面に直撃した。
風姫ルーをワタルと雷姫リリーから引き離す事に成功した代償として相手の怒りに油を注いでしまった。
「よっ、よくも可憐な私の顔を足蹴にしてくださりましたわね」
「にゃふふふふ、自分で可憐と言っては世話がないにゃ」
「な、なんですって」
自分の顔を蹴ったくせに謝りもせず、笑ってる黒猫に殺意が芽生えてきた。あぁ、どうやって殺してやろうと考える。
「敵に一々謝るヤツが何処にいるにゃ。もし、いたらそいつ馬鹿にゃ」
「殺してやる殺してやる。自分で死に方を選べると思いませんことよ」
「その言葉をそのまま、お返しするにゃ」
話してる内に風姫ルーは、薄く鋭いイメージで魔力を練っている。風魔法の上手い使い方のコツは、魔力を一つの刃物を薄く研ぎ、それでいて鋭く切れ味が良いイメージで魔法を行使することだ。
「にゃははは、話してるのは時間稼ぎで魔法の準備かにゃ?貴様の内に魔力が渦まいてるにゃ」
「なっ!相手の魔力が見えるのですか」
普通は魔力というのは、目には見えるものではない。だとしたら、自分の魔力量はどうやって計っているのか?それは、過去に築き上げた経験からなるものだ。一言でいえば、ただの感覚だ。
故に、ベテランな魔法使いも子供の頃は、良く魔力切れを起こしていたものだ。そうして、何回も失敗して学んでいくのだ。
ただし、黒猫と同胞である獣妖族は違う。自分の中にある体内魔力だけではなく、外にある魔力━━自然魔力も利用する仙術を使うのだ。
だとしたら、何となくそこに有るものを利用したいたら心許ない。だから、獣妖族は魔力が見える様に進化したと、とある学者が説を唱えている。
「にゃふふふふ、私は獣人ではにゃりよ。獣人とは似て非なる者………獣妖族にゃ。私こそ獣妖族の長である黒猫にゃ」
「獣妖族………聞いた事があります。外見は獣人たが、魔法とは違う力を使用すると、少数種族ゆえ滅んだと思っていましたが………そうですか、まだ生き残りがいましたか。なら、私が獣妖族に引導を渡してあげます」
「にゃははは、面白い事を言う小娘にゃ。にゃて、そう上手くいくかにゃ」
風姫ルーの言い分に、どこか笑いのツボにハマったのか黒猫は一向に大爆笑を止めようとしない。
そんな黒猫の様子に、ぶちギレ寸前の風姫ルーは風切槍スサノオの切っ先に風の魔力を集め黒猫に放つ。
「喰らえ、切風」
常人なら目に見えない風の刃だが、魔力を目に捉える獣妖族なら風の刃も丸見えであるからして、回避もお手の物だ。
風姫ルーの魔力の動きだけで、次の攻撃が何処に来るか予知が出来るお陰で最小限の動きだけで回避出来てしまう。端から見てたら、まるで風の刃自ら黒猫を避けて通ってるようだ。
「ハァハァ、なっ、何で当たらない」
「そんな単調な攻撃が当たるわけにゃいにゃ」
「くっ、ならこれでどうだ。切風乱舞」
広範囲の無作為に繰り広がる切風だ。範囲が広すぎて、いくら黒猫でもこれは回避は出来ない。
「ふははははっ、これならば避けられまい」
そう言われると、黒猫は一歩出た瞬間に周りの切風乱舞が嘘のように消えてしまった。
「なっ!一体何をやった!」
「にゃーて、何をにゃっただろうにゃ?」
「ふ、ふざけるな!」
「敵に自分の手の内を教えるニャツっているのにゃかな?いたら教えて欲しいにゃ」
「くっ………」
「可哀そうにゃから、一つだけ教えてあげるにゃ………獣妖族は魔法使いの天敵にゃから故郷を滅ぼされたのにゃ。お前の国ににゃ」
「なっ!?」
黒猫の告白に直ぐには言葉が出ない。だが、反論する。
「嘘です。そんな事聞いた事ありません。あなたは嘘を言ってます」
「にゃふふふふ、そんにゃ歴史は闇に葬られて当然かにゃ。なら、どっちが正しいにゃんて昔から決まってるにゃ」
それは一体何?と風姫ルーは首を傾ける。
「分からないかにゃ。それは………」
「それは………」
「勝った方が正義と昔から決まってるにゃ。負けた方が悪い…………至ってシンプルにゃと思わないかにゃ?」
「………確かに分かりすくて良いですね。害獣のくせに頭がまわるようですね」
「害獣じゃにゃいけど………まあいいにゃ。勝てば良いにゃから」
「ふん、その首を父上に献上いたします」
二人共に飛び出し同時に攻撃を仕掛けた。
黒猫は自らの爪を伸ばし斬りかかる。黒猫の爪は普通でも鉄なら簡単に斬り裂ける。そこに、魔力ならぬ仙力を流し込めば何でも斬り裂けると自負してる。
風姫ルーは、切風槍スサノオの切っ先に風の魔力を付与させ切れ味を増した。風魔法は切れ味に関しては攻撃特化の魔法といえよう。
「「はああぁぁぁぁぁぁ」」
ガキイイィィィィン、と爪と槍が鍔迫り合いの様に、お互い押し合っている。どうやら単純な力は互角のようだ。
その鍔迫り合い時の風圧で兵士や獣人は吹きとばされるのに、黒猫と風姫ルーは気にしない。この二人の性格は同じではと、上空で戦ってるワタルは、そう思っていた。