48話グリムVS武神・前編
━━━グリムside━━━
ワタルと黒猫の戦闘が開始した頃、グリムは部下を引き連れムライア王国側の兵士をバサッバサと倒しながら平原を駆けている。
「よくこんな兵力で戦争なんてする気になるのか分からんな」
「くっ、それはお前らがあんな魔法を使うからだ」
「それでも、十倍の差はあるのだぞ」
「くっ、くそ」
グリムは次々と兵士に引導を渡している。さすが、魔王の側近についてる事はある強さだ。
「フッハハハハハ、だらしない、だらしないぞ。お前ら」
「シャルロット様!」
「フッハハハハハ、この獲物は俺のだ」
ガキーン
「むっ!」
武神シャルロットの一撃に合わせ、わざと後ろに飛びダメージを逃がした。
「なっ!シャルロット様の一撃を受けて倒れないだと」
「ふむ、人間のくせになかなかのものだな。久しぶりに腕が痺れたぞ」
「ふん、嘘つけ。ダメージ1ミリも受けてないくせに良く言う」
「「ふっハハハハハ」」
グリムと武神シャルロットの二人はお互いに不気味なくらい高笑いをする。
「「うおぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁ」」
ドガン、と二人の拳はお互いの頬にめり込んだ。いきなりクロスカウンターだ。
お互い口の中が切れ血をペッと吐き出した。二人共「やるではないか」と心の中で想いニヤリと口角を上げ微笑んだ。
「よくもシャルロット様に傷を負わせたな」
一般兵が槍先をグリムに向けて構えるが━━━
「おい、俺の楽しみ奪うな。この獲物は俺のもんだと言ったばかりだぞ。もしも、奪うと言うのなら………お前から喰らってやろうか」
「ひいぃぃぃぃぃ、すみませんでした」
何か凶悪なバケモノを目にしたみたいに一般兵は散り散りに逃げて行った。まるでアリンコの様に。
「悪かったな。戦いの途中で茶々を入れて」
「いえいえ、お陰で邪魔のもはいなくなりました。謝る必要はありませんぞ」
「そうか、そう言ってくれると助かる……な」
と、お礼を言った瞬間に武神シャルロットはグリムの顔面に向けてパンチを繰り出した。
「おっ、これを避けるか」
「お互いに、まだ本気じゃないのですから当たり前だと思えますが……まだ、遊びなのでしょう?」
「くっハハハハハ、そりゃそうだ。そう言えば、まだ自己紹介まだだったな。ご老体、お名前を教えてくれ」
「儂はグリムと申す。そなた━━武神シャルロットは差別しないのだな」
「うん?人間や獣人とかの種族のこのか?アホらしい、差別とか馬鹿がやることだ」
「ほう、アホらしいと抜かすか。この国の人間とは思えんな」
「だから、このアホな国を抜けたんだ。あの父上に泣き泣き頼まれて、しょうがなく参戦してるだけだ。まぁ、今回は参戦して正解だったけどな。お前……グリムという強敵に出会えた。
さぁ、これで話は終わりだ。闘おうぜ。体が闘いたくてウズウズしてるんだ」
「いざ、尋常に勝負!」
「「うおぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁ」」
ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドかドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドかドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドかドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドかドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドかドカドカドカドかドカ
「俺のスキル"連擊倍率"を受けきるとは流石だ。狂狼のグリム」
「なにっ!儂の名前を知ってるのか?」
「冒険や傭兵をやってると噂くらいは聞くさ。伝説の獣人の話くらいは……本当に会えるとは思ってなかったがな」
連擊倍率とは、連続で攻撃をする事により、一撃の攻撃力が倍に増加していく超攻撃特化のスキルである。ただし、一旦攻撃を止めると元に戻ってしまう。
「それは光栄です。Sランク冒険者に名前を覚えて貰えるとは」
礼儀正しくお辞儀をするが━━━
「ふん、嘘くさいな」
「ありゃ、バレましたか」
「分かりやすんだよ。お前ら獣人が人間に敬意を払う訳ないしな」
「それは誤解ですよ。昔の儂ならそうだったかもしれぬが………今の儂は尊敬出来る人間もいる事を知ってるのでな。その尊敬を持って本気でお相手いたそう」
グリムは人間形態から獣人形態へと変身した。
「ガルルルル、さぁ、かかって来るがいい」
「おぉ、その姿格好いいな………耳と尻尾すごく触りたい、ボソッ」
「うん?ありが……とう」
獣人姿を誉められた事自体が初めてで、珍しく照れてる。
「うおぉりゃぁぁ」
ドカバキっ
「くっ、とぉぉりゃぁぁ」
照れたグリムに隙が出来、その隙にハイキックをお見舞いするが片腕だけで防がれた。
「危ないじゃないか」
「チッ、渾身な一撃なハズどったのに全く効いてないのかよ」
武神シャルロットは悔しがるどころか、嬉しくて堪んない表情だ。まるで、子供のようだ。
「ガルル、行くぞ。牙狼拳」
グリムの爪が鋭く鋭利になり、獣人ならではの俊敏な動きでシャルロットの懐に一気に入り込み鋭利な爪で切り裂く。
さすが、Sランクだ━━━シャルロットは紙一重で避ける。だが、避けたはずなのだが切り傷が出来ており、血がうっすらと滲んでいた。




