5話商人ギルド
無事に登録初日からFランクからDランクに昇格したワタルとフランは冒険者ギルドを出た瞬間、5人程のガラの悪い男がワタルとフランを取り囲んだ。
コイツらも冒険者なのだろう。ワタルとフランが登録した時にギルド併設の酒場に居た連中だ。二人が出たところを狙ったとなるとガラは悪いが冒険者ギルドのルールは守ってるようだ。
「俺達に何か用か?」
まぁ~、予想はつくけど、一様聞いてみる。
「ふん、男には用ねえんだよ」
ワタルに睨みを効かせる男達。
「そこの姉ちゃん、オレ達とパーティー組んで良いことしようぜ」
フランはワタルの裾を掴んでるので男達から見たら一見怖がってるように見える。だが、フランはボソッと男達に向かって言う。
「なぁ、ワタル。あの男達チンピラしか見えないがどうしたら良いと思う?」
初めて見るチンピラに怖がるどころかウキウキと目を輝かせている。
フランの言葉にワタルがクスッと笑ったので男共はぶちギレて、ワタルに襲いかかった。
「ふぅ、桜流組手術・第四の投の型・桑払い」
男達が殴ってくる力を利用して投げる。ただ、それだけだがやられた方は訳が分からず、言葉で言うのは簡単だが相当な技術が必要で、ある意味達人の域である。
ワタルが桜花を使用するとこの男達のレベルだと大怪我じゃすまないので、わざと桜花を使わなかった。逆に使用しないと一般人と魔力以外は変わらないので相手の力を利用するしか今現在方法なかったのである。
「おぉ、大の男が紙のように吹き飛ばされて快感ね♪」
フランが楽しそうにウキウキ気分で言う。男達は絡んだ相手が悪かった。相手は魔王とその契約者なのだから。
男は全員を倒すと、周りから拍手喝采の嵐でいつの間にか野次馬が集まっていたようだ。話によると倒した男達はムライア王国王都を拠点にしている冒険者の中で最もガラが悪く近隣住民に迷惑かけていたらしい。なので、男達を倒したワタルに拍手喝采なのである。
ワタルの方もフランに手を出そうとしたコイツらに表情に出さないが激怒していた。
「それにしても、ワタルって強いのね。契約の意味ってあったのかな」
歩きながら、不安になってワタルに聞いてみる。
「フランと出会わなかったら、魔法の使い方分からなかったし、とっくに死んでいたよ。それに、契約のおかげでフランと同じ不老が手に入ってこれからも一緒に生きてあけるのだから」
後の祭りだが、自分が恥ずかしい事を口にしてるのに気づいて頬を紅くしている。
「そ、それって遠回しにプロポーズしてる?」
フランもさすがに気付いた。
「あぁ、フラン俺と夫婦になってくれないか?」
手を握り目と目を見つめ合っている。
「直接言われると恥ずかしね。いいよ。ワタルとなら」
これではれてワタルとフランは夫婦になった。この世界ミレイヌでは結婚のルールはなく、男と女二人が了承すれば夫婦になれる。
「夫婦になったから、これからはワタルをあなたや旦那様と呼んだ方がいいかな」
「いや、今まで通り名前でお願いします。さすがに恥ずかしい」
腕を組み歩きながらそんな話をしてると、ある建物の前についた。
「ワタル、ここは?」
「商人ギルドだよ」
冒険者ギルドなら戦闘技術があるから理解はできる。だが、商人ギルドは物を売買するギルドであるのでフランには理解出来ない。
チリンと扉を開けてワタルが入っていくのでフランも付いていく。職人も出入りしているらしく、ずいぶんと筋肉が隆起している男がチラホラ見える。
受付で紙に名前と年齢を書きステータスを見せると冒険者ギルドと同じ対応されギルドマスターの部屋まで案内された。
「オレはギルドマスターのハンだ」
お互い自己紹介をし、やはりステータスの不老の事を聞かれた。冒険者ギルドと夫婦を強調する以外は同じように説明した。
「これがお二人のギルドカードだ」
手渡されたギルドカードを懐に仕舞い、商人ギルドの説明を聞いた。
冒険者ギルドと同じく、ランクはあるが商売する規模で決まるらしい。
S~Eまであり、S~Bが商店をもって商売する。
Cが出店レベル、Dが行商人、Eが店も馬車も持たない感じである。
ギルドを通さない売買は自己責任でギルド施設内でのイザコザは禁止である。
後はランクによって払う年会費があること。ワタルの場合はEランクから始めるので、一人金貨二枚、フランの分を合わせて金貨四枚を払った。
「あ、そうだ。ギルドマスターに見てもらいたい品物があるのですが」
わざとらしく手をスリスリと擦り合わせるワタル。
「ん、なんだね」
「フラン、例の物を」
ワタルに言われて宝部屋から十個に小分けされた白い粉をテーブルの上に出した。
「これは何だね?」
「お砂糖でございます。先日、偶然手に入りまして」
本当は航の通販で買った1㎏300円の砂糖を100グラムに小分けしただけである。
「専門の者に見させる。少し待て!おい、ギラはいるか」
ギルドマスターに呼ばれ、バタバタと階段をかけ上がる音がする。
「なんでしょうか?ダンナ」
扉を開けたのは一見痩せて臆病そうな男だ。
「これが本物か鑑定しろ。そして、値段をつけろ」
ギラと呼ばれた男はテーブルに置かれた砂糖の一袋を手に取り驚愕の顔をした。
「ダ、ダンナ。これはも、もしかして、砂糖ですか!これ程上質な白い砂糖は見たことないぜ」
はぁ、ハンはため息を吐き、本物ならしょうがないと商談を進めることにした。
「なぁ、ワタルとフランと言ったか、この砂糖はどこで手に入れたんだ?」
最もな質問にワタルは嘘八百を並べた。本当の事は絶対に言えないのでしょうがない。
「入手経路は教え出来ません。ですが、東北の方だけと言っときましょう」
ふむっとハンは考えこみ、ギラに指示を出した。
「そりゃーそうだよな。入手経路を教えたら儲けが減るしな。おい、ギラこの砂糖の相場はいくらだと思う?」
どうやら入手経路の件は深く詮索されなくてワタルはホッと安心した。
「そうですな。希少な砂糖ですし、一袋金貨4枚で全部で40枚ですな」
やはり、砂糖はこの世界でも希少で高値で売買されるようだ。ワタルが渡した砂糖は通販で買った300円の砂糖なのだが、それが千倍以上となった。ワタルの懐はホクホクである。
「はい、その値段で大丈夫です。ありがとうございます」
「こちらこそ、お互いに良い商談できましたな。ギラ金を用意して持って来てくれ。ガッハハハ」
ワタルとハンは握手を交わした。
「今日知り合ったのは何かの縁だ。オレからお二人に依頼を冒険者として頼みたいのだがどうだろうか?」
冒険者と言われ顔を見合せ驚くワタルとフラン。
「ガッハハハ!そんなに驚く事で無いだろう。冒険者ギルド前で騒ぎを起こした本人……いや、失礼君達は被害者だったな」
あの騒ぎを観ていたのかそれでも、指名依頼を出すのには動機が弱い気がする。
「それに君達二人は登録初日でランクDに昇格した。それだけでも、驚きなのにギルド職員に数秒で勝ってしまったのだ。
ギルドの規則で登録試験ではランクDまでしか昇格出来ないからな。オレの目測では二人共に最低でランクBだろうな。本当にもったいないな」
なんと、試験の事まで知っていのか。時間はそれほど経っていないのに、凄い情報収集能力だ。それなら、指名依頼を出すのに頷ける。
「凄いな!試験の事まで知っていたとは」
「な~に、商人は冒険者とは違って、情報を武器に戦うんだよ。こんな事は造作でもないさ」
ガッハハハと豪快に笑うハン。
「さて、指名依頼の件だがここから二日間程の距離にあるガランという街までランクA商人の馬車の護衛だ。集合は明日の朝に正門前だ」
話が終わり丁度金貨が入った袋を持ってギラが戻って来た。
「こちらが金貨40枚入ってます。ご確認を」
ワタルは金貨の枚数を確認せず懐に仕舞った。
「確認しなくて大丈夫なので?」
「えぇ、大丈夫ですよ。ギルドを信頼してますから」
ワタルの言葉にハンがガッハハハと笑う。
「そうだな。その通りだ。商人信頼第一だ。では、明日の依頼は頼むぞ」
「はい、お任せ下さい。あ、まだ泊まる宿が決まっていないのですが、何処か良い所ありませんか?」
「ふむ、それなら天馬の角亭が良いぞ。良心的な金額設定で料理も旨いしな」
「分かりました。行ってみます」
商人ギルドを後にしたワタルとフランは天馬の角亭に向かう。
「ワタル、あの砂糖で儲かったの?」
いくらで仕入れたのか知らないフランはヒソヒソと小声でワタルに聞く。
「あぁ、儲かったよ。...これくらい」
耳打ちでフランに教えると!!がたくさんつきそうな程目を見開き驚いた。
「!!そんなに。なら、もっと買って売れば良かったでないか?」
今まで商売をやったこと無い人の意見だ。
「あまりに大量に出回ると価値が下がるんたよ。何でも希少な物程価値は高いよ」
そんなものかとフランはあんまり理解出来てないようだ。
「金を稼ぐことも人によるけど、娯楽になってしまう時があるもんだ。」
フランにはやはり理解出来ない感じである。
道中話してる内にギルドマスターのハンが教えてくれた天馬の角亭に着いた。
「いらっしゃい。泊まりかね?食事かね?」
「一泊で頼む。部屋は....二名一室で頼む」
ワタルは最初一人二室で頼むつもりだったが、チラリとフランを見たら一緒がいいと目線で訴えてたので一室にしたのだ。
「はい、一泊二人で金貨2枚になります。これが部屋のカギになります」
早速、二階に上がり部屋で寛ぐことにした。
ワタルとフランがチェックインした頃、王城ではローブのリーダーがイライラしていた。
「まだ、歩夢という男の行方はわからんのか!」
部下に怒声を飛ばすリーダー。
「す、すみません。探知が消失した地点を調べましたが何も出ていないのです」
「言い訳はいい!もう、下がれ」
部下を下がらせ、考え込むが良い考えが浮かばない。
「くそ!どうしてこうなったんだ」
イライラだけが募るのみだった。
同時刻、魔王城の王の間にウォーウルフのグリムが一人である者を待ってた。
「おじいちゃん、姫様が居なくなったって本当!?」
忍者装束を着たアイスウルフの少女が王の間に来た。
「来たか。セツナよ....ぶぐっ...げほっげほ」
セツナと呼ばれた少女は思いっきりグリムに抱きついた....いや、突進した。その際、セツナの豊満な美乳がプルンと揺れた。
「げほっ、セ、セツナよ。毎回抱きつくのはよせ」
「あっははは、ごめんなさい」
笑いながら謝るが反省はしてない様子だ。
「それよりも姫様のことだよ」
話題を変え、これはまたやるパターンだとグリムはため息を吐く。
「今回は儂も探しに行く。情報はいつもの方法でな」
「了解だよ、おじいちゃん」
風がビューと吹くとセツナの姿は消えていた。
「儂も動くとするか。フランシスカ様にも困ったものだ。お前達、城の警護は任せたぞ」
部下に任せ、グリムも魔王城を後にする。
場所は戻り、天馬の角亭では食事を終わらせたワタルとフランは部屋に居た。
「さて、明日も早いし寝るとするかな」
「まだ、寝るのは早いよ。私は....その、体がうずいて....しよ」
フランの仕草にズキューンとワタルの理性がぶっ飛んで今日の夜は長くなりそうである。