41話ワタルの血が吸われる
「モグモグ?はにつのむこ」
「何言ってるか分かんねぇよ。食べるか話すかどっちかにしろ」
モグモグと今口に入ってるのをゴクンと飲み込むシズカは改めてアユムに向き直った。
「初めて食べるけど、美味しいね。これ」
シズカが手に持ってたのは、シュークリームにイチゴショートケーキだった。アイドルが食レポするかの様に満面な笑顔で美味しそう食していた。
「おい、俺がこの状態なのに、なに呑気に食べてるんだ!」
「それはしょうがないよ。勝負は私が負けで、賞品としてアユムの血をルルがご所望したからね。だから、しょうがないんだよ」
「はあぁ!何勝手に俺を賞品に……って何て言った?」
「えっ、私が負けて━━━」
「戻りすぎだ」
「ルルがご所望で━━━」
「今度は行き過ぎだ!」
「アユムが賞品で」
「惜しい、後ちょっと」
「アユムの血?」
「そう、そこだ。俺の血をどうするんだ?」
「だから、飲むんだよ。いや、ルルだから食べると言った方が良いかな?」
この際は言い方は、どうでも良い。この状況をどうにか打破しないと、時間が経つにつれルルが興奮で目がイカれてきてる。
「大丈夫だよ。痛くないからさ。むしろ、気持ち良いらしいよ」
何他人事の様に言ってるんだ!というか、何食ってんだ。食ってないで助けろ。
「ゲップ……うぃー、食った食った。そんな状態になったルルを止めるなんて芸当は私でも無理……ごめんね」
「そんな……おい、ルル正気に戻れ」
「ハァハァ、もうチューチューしても良い?我慢できないよ」
ルルの口がパカッと大きく開きキラリと大きな牙が見える。左手でアユムの両腕を押さえ込み、右手でアユムの顔の側面側を押さえ首を顕にする。
「ハァハァ、実に美味しそう」
ベローとアユムの首筋にルルの舌が這い、アユムの恐怖が「ひいぃぃぃ」と一段階増加した。この状況を打破しようと抵抗するも、やはり手足動かせずルルに良いようにされてる。
知らない人が見たら大の大人の上に小学生が乗って遊んで見えるのだが、現実は違う……違うのだ。大事なことなので二回言いました。
現実はまるで百㎏の重さがある石板が乗ってる感覚である。
「では、いただきまーす」
アユムの首筋にルルの牙がガプと射し込まれチューチューと血を吸いだした。
「チューチュー、アユムの血……おいちぃ」
あれ、意外と痛くない……むしろ気持ち良い。
あああぁぁぁ、吸われれば吸われる程気持ち良くなってくる。
「ふぅ、ご馳走様でした。ペロリッ、美味しかったです」
手を合わせ、お礼を言ってアユムの上から退いた。アユムは血を吸われた後は、力が出なかったが数分後、体中の血が戻ってきたのか起き上がりルルを見た後、驚愕を禁じ得なかった。
なんと、ルルが中学生程に成長していたのだ。身長もさることながら胸も幾分か大きくなってる様な気がする。
「ルル……成長した?」
「うーん、アユムの血を飲んだからだと思います」
「えっ!マジで」
「はい、大マジです」
「ぶー、ルルばかりズルいのよ。私もアユムの血を飲めば成長するかな?」
数回地団駄を踏んでルルに聞いてみたが――――
「それは無理でしょう。種族として体の構造が違うのですよ。クスッ」
「あー、今笑ったでしょ。良いもん良いもん。私も将来ナイスボディになるだもん。アユムもそう思うよね」
何でこっちにふってくるんだ。シズカの将来の姿がフランならナイスボディというよりはロリ巨乳だろうな。
シズカの理想な体型から五分五分というとこか。しかし、シズカも知ってるはずなんだが━━━
「あぁ、きっとなるよ」
と、真実と嘘を半々織り混ぜて言ったのだ。別に俺はロリコンではないけれど、今のフランで充分好きだ。ので、嘘は入ってるがアユム自身にとっては真実なのだ。
「アユムに血をくれた礼に、とある情報を教えてあ・げ・る」
うん?何か知りたい事あったけ?
「アユムのステータス項目に新しくレベルが追加されたと思うのだけれど、知りたくない?」
成長したせいかいつもよりもルルがお喋りになっている。何か違和感がとても有りまくりだ。
しかし、レベルの事を知ってるって事はルリと契約した事が関係してるってことか。これで、どのくらいの強さなのかが判明するかもしれない。
「あぁ、頼む。教えて欲しい」
「……分かったわ。教えてあげる。レベルと言うのはね━━━」
ルルの説明によると、およそRPGのレベルと差異は無いらしい。敵を倒せば、その敵に設定された経験値が入る。ただし、経験値が入るのは敵を倒すだけではない。
冒険者クエストクリアと商人で販売と商品の作製した際にも入るらしい。
そして、最も重要なのがレベルの限界値である。限界値の値によってはどんだけ強くなるか決まってくるからである。
「そして、レベルの限界値は9999よ」
まるでとあるやり込みゲームのようだ。日本では仕事の料理人で長い事やってなかったがゲーマーの血が騒いでくる。
「おっ、どうやら帰る時間なったようだよ」
辺りが白く光り輝き始めアユムの体を包み込み意識が朦朧となり始めた。
「また、来るからな」
「うん、待ってる♪」
「待ってる♪」
アユムの体が完全に光に包み込まれフラン達の世界へと戻ってきた。