39話心理戦ババ抜き前編
「あっ、ほら合ったよ。これはプリンだね」
「「ぷ、プリン!」」
スプーンと一緒に渡そうとしたら、アユムの手からプリンとスプーンが消えていた。
「「プルプルトロトロ幸せ」」
二人が電光石火の早業でアユムの持ってたプリンとスプーンを奪い取り幸せそうに食べていた。あっ!俺のプリンもない。プリンの空の容器が一つ余計にシズカの側に転がっていた。
「おい、シズカ一つ多いのは気のせいかな?」
「むぐっ!ゴホゴホ」
アユムに指摘され、シズカはプリンが喉に詰まったのか噎せている。どうやら、明らかに図星だ。
「やっぱり犯人はシズカか。俺も食べたかったのに」
「な、何のことかな」
目が泳ぎ誰から見ても動揺している。白状しないシズカにアユムはシズカの頬っぺたの端を掴み引っ張ったりグリグリと回した。
「ひゃいひゃめて。ふぉめん、ふゅるして」
左右に引っ張りポンと離してやった。
「うぅー、痛いよ。アユム、ブゥブゥ」
自分の頬を擦って相当痛かったようだ。ルルも一緒にシズカの頬を擦って痛みが引いている━━━いや、見た目から赤くなってた箇所が治ってる。
「これで大丈夫」
「おぉ、痛みがない。ルル、大好き」
シズカが治してくれたお礼としてルルに抱き付いて、ルルは一見苦しそうだが嬉しいそうで満更でもない様子である。アユムは少女漫画は読まないが、百合に見えてしまった。そんなオーラが漂っている。
「シズカ、苦しい」
「あはははは、ごめん。後、アユムは嫌い」
そっぽを向くシズカだが━━━
「そんな事言っても良いのかな?」
アユムは違う味のプリン(チョコ、バナナ、イチゴ、キャラメル等々)を取り出し並べた。
「なっ!こんなにたくさん………ジュルリ」
「さて、言う事はあるかな?」
「………アユム、だーい好き」
まぁ、謝罪ではないが良いだろう。犬の躾の待てを解除するかの様に「食べてよし」と言った瞬間に一個数秒という速さで次から次へと食べていく。まるで、早食い選手権でも見てるようだ。
呆気に捉えながら見てるとチョンチョンとルルがアユムの袖を引っ張って「私も良い?」と聞いて来たので「良いよ」と言ってあげた。
シズカが子犬だとしたらルルは子猫だろうか。様々なプリンを食べてるシズカを見ているとブンブンと尻尾が付いていたら勢い良く振ってる様子が安易に想像出来てしまう。
もう、満腹なのか食べるのを止め、こちらに駆けて来てその場に座った。
「ふぅ、もうお腹いっぱいだよ」
「ふにゅー、いっぱい」
「そりゃーあれだけ食べればいっぱいになるわな」
アユムから見た限りだと揚げ物ではないが、こっちが見ただけで胸焼けするほど食べてたもんな。うぅー、思いだしただけで吐きそう。
「さてと、アユム何か娯楽は持ってきた?」
「あれだけ食べたのに食後の運動はしないのかい」
「えぇ、デザートは別腹なの」
「そうなの」
デザートが食事になってる気が━━━地球で言うとこの女性が大好きなデザートの食べ放題みたいなものか。
男であるアユムには料理人でもあるから作る方なら食べてくれるのは嬉しいが、逆に食べる方だと理解出来ないかもしれない。
「それにね、ここだと体の成長しないしね。太る心配はないよ」
「そうなのか!初めて知ったな。それだと……………」
アユムはシズカの胸をジーッと見ていた。成長しないなら、もちろんここも成長しないということになるな。
「ちょっと!どこを見てるのよ。アユムは巨乳が好きなの。そんなに好きなの」
「いや、すまん。そんなに気にしてるとは」
「いい、アユム。アユムのために素晴らしい格言を言うわよ。良く聞いて」
「あっ、はい」
シズカの並々ならぬ威圧感につい返事をして背筋がピーンと伸びた。今逆らったら本能がいけないと警告を発している。
「良い、言うわよ。貧乳はステータスなのよ。希少価値があるのよ。以上よ」
「アユム、そうなの?」
「俺が知るか。確かに好きな人はいるかもしれないがな」
ルルも自分の胸を見てストーンと貧乳なのをショック受けてるみたいだ。
「確か、胸を揉むと大きくなるって聞いた事があるわよ。そうよね、アユム」
俺に聞くな!ていうかそういう話題は俺にふるな。反応にめっちゃ困る。
「そうなの?それじゃー、アユム揉んで?」
「なんで、俺なんだよ!自分で揉めばいいだろ」
アユムがやったら犯罪━━━いや、ここでは犯罪にはならないが、もしやったらシズカやルルを何かとある世界の開拓をしそうで怖い。見た目が小学生1年程なのでずっと純粋でいて欲しい。それがアユムの願いである。
「そんなことより、今回はこれをやらないか」
アユムが懐から取り出したのは多分これ一つで複数の遊びを出来るのはアユムは知らない。トランプだ。
「それなーに?」
ルルが興味津々のように聞いてくる。
「それはトランプっていうんだよ」
あっ、俺が言おうとして先を越された。
「どんな物なの?」
「えーとね………アユム、バトンタッチ」
知らないのかよ!しょうがないな。と転けそうななったのを我慢した。
「トランプって言うのは1~13の数字のカードが四種類の計52枚にジョーカーのカード2枚を加えた54枚のカードで様々なゲームをするんだ」
「なるほどなの」
「それくらい分かってたわよ」
この嘘つけと心の中でアユムは思った。
「それじゃー、一番簡単のでババ抜きをするか。ジョーカーを一枚抜いて均等に配れば準備完了だ。順番に引いていき同じ数字が揃ったら捨てて最後にジョーカーが残った人が負けだ」
「「わかった」」
そして、トランプのド定番のババ抜き━━━世界一長いであろうババ抜きが開始したのであった。