36話ワタルの料理・牛カツカレー異世界風・後編
カレーを煮込んでる内に一工夫としてミレイヌの食材でフランと一緒にやった最初のモンスター討伐クエストで討伐したレッドボアの肉を宝部屋から取り出し、ミレイヌ風牛カツを作りカレーと合わせてミレイヌ風牛カツカレーの出来上がりだ。
「カレーが煮込んでる内にカツを揚げよう」
「了解であります。マスター」
ワタルは宝部屋からレッドボアの肉を取り出しまな板の上に置いた。
「これはレッドボアですね。流石に片足だけでも大きいです」
ワタルの故郷の日本で生産されている一般的な和牛より二倍から三倍はレッドボアの方が大きい。
「まずは手分けして解体しよう」
「解体ならお任せであります」
ここまで大きいと普通は牛刀を用いるのが普通だが、桜花は普通の包丁を手にし「はぁー」と掛け声を叫ぶ瞬間に包丁を振るとステーキサイズ(半ポンド)に切り揃われ、骨には殆んど肉が残ってない状況だった。
「これでよろしいですか?マスター」
「あぁ、完璧だ。よし、このままでは硬いからな。筋を切って柔らかくする」
桜花の凄業に驚愕を隠せないでいるワタルは肉たたき器を桜花と二人で手際して筋切りを行う。
「筋を切った肉を小麦粉→かき混ぜた卵→パン粉の順番で付けていき揚げればレッドボアカツの出来上がりだ」
桜花がワタルに言われた通りに衣を付け、ワタル自身が油の温度を見極め油からカツを取り出す時間を決める。
「ふぅー」
ワタルは目を瞑り息を吐き、油の音の変化を聞き逃さない様に集中している。
「ここだ」
バッと菜箸でカツを掴み、半月網の上に乗せ油をきる。
「ふぅー、これでレッドボアカツの出来上がりだ」
ちょうど人数分のカツが揚げ終わったところでピィーピィーと炊飯器の音がなり、ご飯が炊き上がった。
炊飯器の蓋を開けるとモクモクと湯気立ち上ぼり炊き立ての良い香りが充満する。一粒一粒が立ち美しく光り、まるでダイヤやオパールみたいな宝石を想像する感じである。
そのご飯をカレー用器によそり、ご飯の上にレッドボアカツを乗せ、さらにワタル特製カレーをかければ出来上がりだ。
「桜花、テーブルに持って行ってくれ」
「かしこまりました。マスター」
みんなの所にレッドボアカツカレーを持って行き、全員分行き渡ったところでバンッとドアが勢い良く開けられフランが入ってきた。
「妾の部屋まで、この食欲をそそる匂いが漂ってきて集中出来るか!早くそれを食べされるのじゃ」
「「あのフランが食べ物の匂いで部屋を出てくるとは!」」
「そ、それは……誰だって気になって出てくるわい」
まぁ、外歩いていてもカレーの匂いってするからね。この家は今晩カレーかって思ったもんだ。
「さぁ、冷めない内に頂こうか」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
みんなで手を合わせ号令をした。
ぱくっもぐもぐ……ゴックン
「にゃふー、辛いにゃ。でも、辛さの中に旨味やコクがあるにゃ。辛いのに止められないにゃ。にゃーみ、水」
やっぱり猫だからか猫舌は暑さだけではなく、辛さにも弱いみたいだからな。桜花がコップ一杯の水を黒猫に渡した。
「ゴクゴクプハァー、モグモグ」
食べては飲み食べては飲みのループに突入した。しょうがないのでピッチャーを持ってきて自分で注ぐように言っておく。
「情けないぞ、黒猫よ。これくらいの辛さなど辛い内に入らぬわ。ワタル殿、お代わりを」
はやっ!俺なんかまだ半分しか食べてないのに、そこは獣人か人間かの違いか。
レッドボアカツカレーのお代わりをグリムに渡すと半分程食べたところで急に席から立ち上がった。
「うん?どうしたグリム」
「いやなに、さっきから体が暑くて筋肉が疼くんですよ」
スパイスで血行が良くなるから体が暑くなるのは分かるが、筋肉が疼くってなに!スパイスってそんな効果あったけ?レッドボアカツのせいか?分からん。
この後何か嫌な予感というか見たくない物が見てしまうようなそんな感じがする。
「ふんぬっ」
グリムが突然ボディービルダーの様にポーズをとり、その筋肉の動きだけで某漫画の様に上半身の服が弾けとんだ。
更に違うポーズをとる度にグリムの筋肉がピクピクと動き食事中でやることではない。気持ち悪い。中にはこれを喜ぶ女性はいるが残念ながら今のメンバーの中にはいない。
「おい、グリムよ」
「はっ、何でしょうか?」
返事する際もポージングを止めない。あっ、フランの眉間に血管が浮かんでる。
「今は食事中だぞ。その気持ち悪い事をさっさと止めい」
フォークを投げグリムの眉間に当り、突き刺さった。今回はカレーだからフォークは用意してなかったはずたが、どこから持ってきたんだ?とワタルは疑問に思うが、一方で誰もグリムの事を心配してなかったのである。
「フラン様もお転婆ですな」
グリムは何も無かったかの様にフォークを抜く。
「普通の人なら死んでるから、皆様は真似しないように」
天井に向かってワタルは注意するように言う。
「ワタルよ、誰に言ってるのじゃ?」
「何でもないよ」
ワタル自身、何故そう言ったのか分かっていない。何か頭に神の御告げらしきものが浮かんで言っただけであるが、その御告げがあった事は忘れていた。
『ふぅ、危なかった。つい、御告げを送ってしまった時はどうしようかと思ったが覚えてないようでよかったわい』
再び、ワタルは天井を見上げ「???」と何か聞こえた気がしたらしく数秒間、天井を見詰めていたが気のせいと思って下を向いた。
『……確かワタルと言ったか、無意識ながら適性があるやも知れぬの』
そして、謎の声の主は甲高い声で笑っていた。
「ワタル、我は水よりワインが良いのじゃ」
「飲み過ぎないように」
グラスとワインが入ったビンをルリに渡す。
「おぉーこれじゃこれじゃ。ワタル愛してるのじゃ」
「はいはい」
「現金なヤツよのー」
フランは呆れ顔で言った。
「フランは辛くないか?」
「うん?これくらいの辛さなどヘッチャラなのじゃ。だが、体は暑くなってきてるのじゃ」
「にゃふー、ねぇー脱いで良いにゃ?」
黒猫が着物の帯を緩めはだけると大事な箇所以外は見えてしまっている。フランも便乗して上着を脱ぎ薄着一枚で光の加減で透けて見えてしまう。
「脱ぐな!このエロ猫!フランも脱がないの」
「にぁははは、ワタルはいつもよりも手厳しいにゃ」
「えぇー、本当は期待してるんじゃないのかや。目が泳いでるけど」
「し、してません。そういう事はベッドの上で」
「ほら、してるのじゃ」
「ぐぅっ……」
いつもよりも騒がしい夕飯の時間は過ぎっていくのであった。