34話ルリが我が家にやって来た
━━━ルリ・ブラッドの部屋━━━
ワタルは"精神と魂の狭間"でチェス大会をした後、シズカとルルにまた来る事を約束しルリのベッドの上で目覚めたのである。
「うっ・・・ここは」
ワタルはゆっくりと目を開けると、そこはベッドの上で天井を見上げていた。
「ワタルー、心配したのじゃ」
「ぐへぇっ・・・チーン」
フランが勢い良くダイブしてくるもんだから、もう一回というか永遠に眠ってしまうところだった。魂が抜け掛けた感じだ。
「あぁー、行っちゃダメなのじゃ。戻ってこーい」
フランが人魂らしき白い塊を掴んでワタルの口の中に押し戻している。シュッポンとワタルの魂が戻ると再び目を開けた。
「俺は一体何を?」
「何でもないのじゃ」
フランが誤魔化そうとするが━━━━
「何か川の向こうで死んだじいちゃんが笑顔で手招きしてたような・・・」
(あ、危なかったのじゃ。もう少しであの世行きだったのじゃ)
ワタルが変な死に様を晒す事にならなくて良かった。本当に良かった。もし、あのまま死んでいたら、この世界と共に心中を謀っていただろう。
魔王フランシスカなら少し準備は必要だろうが赤子の首を捻るくらい簡単な事だ。
「本当にワタルが目を覚まして良かったのじゃ。それで我の契約の方はどうじゃ?何か体に変わったことはないかの」
「はっきりとは分かりませんが、幾分体が軽くなった様な感じがします」
「一番手っ取り早いのがあるじゃないか?ステータスを見れば良いじゃと思うのじゃ」
フランに言われ、ワタルは手をパンと叩き「あぁ、そうだった」と思い出し「ステータスオープン」と唱えた。
三人はワタルのステータスを見て変化してる箇所を探す。スキルの項目に吸血鬼特有スキルである血液操作が増えていた。
そして、ワタルが最も驚いたのが"レベル"という項目が増えていた事だ。
この世界ミレイヌではレベルの概念は無く、ほとんどが天性のもので体の成長でステータスは増えていき、老いることで減っていく。それがこの世界ミレイヌの覆られぬ決まりである。鍛練や努力でもステータスは増減するが、雀の涙程度である。
「ワタル、このレベルとは何じゃ?初めて聞く言葉での。ルリはどうじゃ?」
「我も初めて聞く言葉よ。しかも、レベルの横に数字が書いてあるけど、意味あるのか?」
レベルにはキリが良い数字で50と書いてあった。つまり、ワタルのレベルは50ということだが、これがどのくらいの強さなのかは今現在不明である。今までレベルという概念は無かったのだから。しかも、上限もいくつなのか不明なので時間がかかりそうだ。
「うーん、そうだな。何て説明したら良いか」
ワタルは転移前の地球でやってたRPGゲームの話で説明した。レベルとは敵を倒す又は依頼や生産職なら生産をすれば手に入る経験値を一定値貯まると上がる数字で、これが上がればステータスも増えると話した。
「ほぉ、ワタルのいた世界にはそんな物があるのか」
「あぁ、仕事するようになってからはご無沙汰になっているがな。子供の頃には無我夢中でやったもんだ」
「妾もやってみたいの。そのテレビゲームとやらを」
「戦争が終わったら考えておく」
「約束じゃぞ」
確か、こっちにあるか分からないが戦争が終わり一週間程でクリスマスか。何かみんなにプレゼント用意しよう。
もちろん、ケーキやご馳走は必ず準備して、全員に露出があるサンタ衣装を着させよう。とワタルの頭の中では妄想が膨らんでいた。
起きかけのワタルが本調子になるまで三人でお茶会を楽しみ、ルリと一緒に夜王城を後にした。
やっと、ワタルの妻としてこれから一緒にいることが嬉しいのかルリはワタルと腕を組みその豊満な胸をわざと当てている。
それをフランも負けじと反対側の腕を組み胸を当て、ワタルはサンドイッチ状態である。ワタルは「・・・・・・」で歩きにくいが、この気持ち良さを我が家まで堪能していた。
「あぁぁーー、二人してズルいのよ」
ドアを開け帰ってきた三人を見たセツナが叫んだ。
「ふん、これは我がワタルの嫁になった記念じゃから良いのじゃ」
「フランの方は?」
「わ、妾は・・・・・・ついでじゃ」
「ぶーぶー、私も行けば良かった」
セツナがブーイングし、ワタルの胸に頬ずりをする。
「むふー、良い匂いがする。クンカクンカ」
「あっ、コラ何するか!離れるのじゃ」
「やだー、ワタル分を補充するのー」
「今日は我とワタルとの記念日になる日じゃぞ。二人とも離れぬか」
「「ワタルの独占は許さない」」
三人でワタルの取り合いっ子してる様子を見てるグリムと黒猫。
「いやはや、ワタル殿はいつも大変ですな」
他人事みたいにノホホーンとご老人みたいにお茶を飲んでいる。
「黒猫はされに参加しないのですかな?」
「今、行ったら死ぬだけにゃ。猫は気ままに待つにゃ」
「ふぅ、気ままなのは良いけど、変なことはするなよ」
黒猫の左側の席は空いていたはずなのだが、そちらから声が聞こえてきた。いつの間にかワタルが座っていた。