31話ワタルSランク商人になる
食事を楽しんでいるとワタルに話掛けてきた者がいた。それは獣妖族・猫又のキャロだった。
「お兄さん、おひさー」
「えっ、なんでSランク商人のキャロさんがいるんだ」
「そにゃー、新夜の王の戴冠式だよ。そにゃー来るって」
言われてみれば、そっかと手をポンと叩く。
「それで魔王様はあれ役に立ったかな?」
「あぁ、助かったのじゃ」
「うん?何か買ったのか?」
「それはですね、お兄さん━━━」
キャロがワタルに言おうとするがフランから物凄い殺気を感じ口を閉じた。
「いやははははっ、何でもないです。はい」
ワタルでさえ恐怖を覚える程の殺気を放たれたのだ仕方がない。
「それで今日はどうした?」
「事後報告になりますが・・・・ワタルの・・・・いえ、ワタル様の商人ランクを勝手ながらSランクにしてもらいました」
今、なんて言った?え、Sランク?Sランク!
「本当にSランク?」
「はい、Sランクです」
「どうして?俺は何も申請してないよ」
「はい、ですから私がちょいっと裏技で」
ハァー、ちょっと何やってんの!この人、仮にもSランク商人商会の会長様ですよね。
「理由を聞かせても・・・・」
「はい、私━━━いえ、私達Sランク商人商会キャッツテール一堂ワタル様の商会に合併する事に致しました」
えっ!何言ってんの?商会作った覚えないし、一体全体どつなってんの?
身に覚えない事で混乱しそうになるワタル。
「ワタル様の商会を作ったのは私でございます。こう・・・チョイチョイと裏技で」
「何でそんな事をした?」
「それは儲ける事が出来るからでございます。ワタル様の納品して貰った品々やアイディアで予想以上にもうかる事が出来ました。ワタル様の口座にも入金しましたが確認は?」
そんな短時間で入るとは思っていなかったので、もちろん確認はしていない。
「し、してませんけど・・・・」
「今すぐ確認して下さいませ。凄いことになってますから」
キャロに言われるまま、商人のギルドカードを取り出し口座のウィンドウを展開して残高を確認する。
「えっ!何この金額見たことないんだけど」
ワタルの背後から他のメンバーも口座を見ると全員驚愕━━目が銭印になっていた。
ワタルは当初金貨数枚程度だと予想していたが、白金貨5枚と王金貨1枚と記されていた。
初めて聞く貨幣で聞いて見ると、どうやら日本円で換算すると白金貨は百万円、王金貨一千万円になるそうだ。つまり、振り込まれていた金額は一千五百万円となる。
「こ、こんなに良いんですか?」
日本でいた時でもこんな大金見たことないのに━━━
「良いの良いの。私もこれ以上儲かってるだからさ。それで私は考えた。ワタル様の傘下に入れば今よりも良い夢を見せてくれるではないかと、思ったしだいであるからね」
「えっ!そんな買い被りですよ」
「謙遜しないしない。それに・・・・もう後戻りは出来ないしね」
後戻りは出来ないって・・・・あっ、最初に俺の商人のランクをSにして、商会を作ったって言ってたな。
「キャロさん分かりました」
観念してキャロの商会が傘下に入る事を承諾した。
「キャロと呼び捨てで呼んで下さいな。ワタル様の方が上司なんですから。これでSランク商会ワタル(仮)が誕生です」
「あの~、名前変えてもらえません?」
「何か良い名前でも?」
そう聞かれると何も思いつかない。ワタルは首を横に振り名前の変更は後日に回した。
「元キャッツテール本店及び支店は商会ワタル(仮)になりますので、近くまで来ましたら是非寄って下さいな」
「分かった。そしたら、商品になりそうな品を後で送っとくよ」
「助かります。ワタル様━━━いえ、会長」
「何か凄い話じゃの」
「ニャハハハ、ワタルも大金持ちかにゃ」
「うーん、まだ戦争まで時間は余りないが、キャロ明日時間があるか?何個か見てもらいたい品があるんのだが」
「あっ、はい構いません」
「後は戦争まで4日・・・それまでに武器を用意してくれるか?費用は俺のポケットマネーでよろしく頼む」
「もう会長の商会なんですから好きに使ってくれても構いませんよ」
「いや、今回は俺のポケットマネーで」
「そうですか・・・・そこまで言うなら構いませんけど、それではまた明日、詳しい時間は後でメールするので」
キャロはお辞儀するとその場から去って行った。
「ワタル、キャロが言ってた"メール"って何かの?」
「あっ、それは・・・・このことだよ」
懐からスマホを取り出し実際に操作してみて説明した。
「それ妾も欲しいのじゃ」
「今直ぐは無理だから少し待ってもらえるかな」
「いいないいな。私も」
「ワタシも良いかにゃ」
みんなにオネダリされ、了承してしまった。あぁ、どうしよう。
食事会が終わり、タナトスの戴冠式はこれで終わり参加者は次々と帰って行く中、ワタルはひっそりとルリの部屋を訪れたのである。




