28話闇反魔法の特訓後編
休憩が終わり、特訓再開。
「うむ、旨かったのじゃ。ゲップ・・・・」
「「・・・・」」
「・・・・今のは忘れてくれ。忘れないとこの世界を破壊するのじゃ」
よっぽどフランはゲップしたことが恥ずかしいようだ。
「・・・・別に俺は気にしないけど━━━━」
ポカポカと子供のように叩いてくるが━━━周りからはそうは見えるだろう。だが、叩いてるのが魔王なのをお忘れなく。滅茶苦茶に痛いのだ。
「わ、分かったから。忘れるから」
そう言うと叩くのを止めたが、腕がジンジンと痛む。普通の人間なら、おそらく複雑骨折か悪くて死ぬ恐れがあると思う。
「ごほん、次にやるのはオーラの物質化じゃ。他の属性魔法の火、水や風は最初から物質化になってるのじゃが、闇と光だけはそのまま使えば黒い靄だったり、ただ眩しいだけだったりと特殊な場合しか役にたたんのじゃ。
そこで、意図的に物質化するのじゃが結構難易度が高くての。闇と光の使い手はなかなかいないのじゃ。まずは闇のオーラを糸状に物質化してみるのじゃ。これを出来るまでは二年位かかるぞ」
フランに言われた通りに闇のオーラを糸状に物質化する訓練を行うことにする。
ワタルは両手にオーラを集中させ、羊毛や綿花を紡ぐイメージで左手のオーラを右手で掴み引っ張っていくと、ヒュルヒュルと糸状というか黒い糸そのものになっていた。適当なとこで切ってフランに見せる。
「出来たようだけど、これで良いのか?」
「・・・・」
「・・・・フラン様、本当に二年かかるのですか?」
「う・・・・」
「う?」
「嘘なのじゃ嘘なのじゃ。何で一発で成功してるのじゃ。あり得ぬのじゃ。グスッ」
ワタルが本来なら二年掛かるであろう所業を一発で成功したら悔しくて泣きたくなるよな。
「・・・・何か悪い事したな」
申し訳ないと思い頭をかく。
「情けをかけるではない!余計に泣きたくなるじゃろ。魔法の天才と呼ばれた妾だが、本当の天才というのはワタルみたいなヤツの事をいうのじゃな。うっはははは」
「それは違うよ。この闇反魔法はフランから貰ったものだし、フランが教えてくれなかったら制御出来たと思えない。
それに、フランはほとんどの魔法が使えるじゃないか。凡人には出来ない芸当だと俺は思うな」
ワタルの言葉に絶望的の表情が嘘のように、パーと太陽みたく明るい笑顔になった。
「本当か!そう思ってくれるのか!」
「あぁ、俺なんかフランの足下にも及ばないよ」
「そ、そこまで言われてはしょうがないのじゃ。続きをやるのじゃ」
『フラン様はチョロいですね』
『念話でも、そんな事言わないの。まぁ、そんなとこが可愛くはあるけど・・・・』
桜花と頭に直接念話で話をする。念話で話出来るのはワタルと桜花だけなので、フランに聞かれる心配はない。
「実は物質化出来た事で妾からはもう教える事は無くなったのじゃ。後は自分で応用や創意工夫するのみじゃ」
「えっ、それじゃ━━━━」
「そうじゃ、卒業じゃ。まさか、こんなに早く卒業するとは思っていなかったのじゃよ。
暴走する時は止めてやるからの。後は自分の戦い方を見つけてみるのじゃ」
「ふぅ、それじゃ・・・・桜花・・寒桜モード」
暴走してしまった桜花の変形でリベンジしてみる。
「桜花どうだ?違和感はないか?」
『心地よい気分です。このままなら行けそうです』
桜花の調子が良好なのを確認し、闇のオーラを薄くかつ丈夫に纏ってみた。訓練する前はオーラを纏った段階で桜花が暴走してしまったので緊張する。
「桜花今度はどうだ?」
『はい、何ともありません』
「ふむ、少し不安だったが成功のようじゃの」
「フランのおかげだよ。後で何かお礼をしないと━━━」
「褒めすぎじゃよ。当たり前の事をしただけじゃし、お礼は本当はいらないのじゃが、そこまで言うのなら貰うのじゃ」
そんなに褒めては無いはずだが、フランが喜び笑顔を崩さないために黙っとこう。
「お礼は何を貰おうかの」
パーンと両手を叩き、何か思いついたようだ。
「うん?決まったのか?」
「ワタルの訓練が終わったら言うのでな。今は集中せい」
そう言われ訓練を再開する。
寒桜モードで暴走せずにオーブンを纏う事が出来、次は物質化の応用で両手の延長線上に伸ばし大きな手を作り上げた。
どんだけ丈夫なものか近くの岩を試しに軽く殴ってみた━━━━ドッガーンと一気に砕け散った。まるでダイナマイトで鉱石を発掘するみたいに。
「ふむ、どうやらワタルは魔法の才能というよりは魔法の操作に天性の才能があったようじゃの。
最初は使い方が分からぬがゆえに暴走させてしまったのじゃが一回使い方が分かれば、後は自由自在に使えてしまう訳じゃ。わっはははは」
「・・・・そう言われても俺には実感沸かないけどな。でも、なんか嬉しいな」
「うふふふふっ、ワタルの内に眠っていた力を呼び覚ましたのじゃ。楽しいの楽しいの。ワタルと一緒にいると本当に退屈しないのじゃ」
「そ、そんなに褒めても何も出ないよ」
ワタルは頬を赤く染めそっぽを向く。
「残念なのじゃ。さっきのお礼一つで我慢するかの」
そして、訓練は続きまだ見せた事無い桜花の武器変化や技を試した。皆に見せるのは後の楽しみにとっとこう。
「ふぅ、こんなものか。フラン、お礼何にするか決まったか?」
「うむ、その・・・ここで妾を抱いてくれぬか」
「えっ!ここで!」
「うむ、ダメか」
上目遣いでねだってくる。こんな頼み方されたら断れるはず無いだろう。
そして、この人口異空間でワタルとフランはお互いを愛でて、フランは肌に潤いが増し、一方のワタルはシオシオに窶れていた。