ssバレンタイン一年目・後編
先程の桜花の怒りを目の当たりにしたので、恐る恐るキッチンに立つルリ。
「それではトリュフチョコ作りを始めたいと思います。宜しくお願いします。ルリ様」
先程の怖い桜花とは別人━━━いや、別刀のように微笑む。
「は、はい、宜しくお願いします。先生」
「はい、見てたとは思いますが、チョコを包丁で刻んでボールに入れて下さい」
「そのくらい、楽勝よ」
包丁を持つとキレイにチョコを刻んでいく。フランのを見て学習したようだ。一方のフランというと口に出さないが地団駄を踏んで悔しがってる。
「次に、お鍋に生クリームを入れ沸騰するまで煮て下さい。沸騰しましたら、刻んだチョコに入れ溶かします」
沸騰した生クリームを刻んだチョコに入れて溶かしていくと、これだけでも美味しそうな匂いが漂う。
「溶けました。先生」
「お好みで洋酒を入れも良いですよ」
桜花はどこから取り出したのか、その手には洋酒のビンが握られていた。
「何と!」
お菓子にお酒を入れる発想がなかったので素直に驚く。
「これで大人なチョコに早変わりです」
「さすが先生、尊敬しますのじゃ」
桜花から洋酒のビンを受け取り、溶かしたチョコに回し掛けアルコールの匂いがプーンと匂う。
トロトロのチョコをバットに移し、冷蔵庫で30分程冷やしていく。
「固まりましたね。後もう少しですよ。一口分をラップに乗せ、包み丸く形を整いで下さい。お好みで中にドライフルーツやマシュマロを入れても良いですよ」
「おぉー、可愛いの。それに、いろんな味が楽しめて、これでワタルの心を掴むのじゃ」
全部、ラップに包み終わると1時間程冷蔵庫で冷やし固める。
━━━1時間後━━━
「ふぅ、出来たのじゃ。自分で作るのも楽しいの」
「上手く出来ましたね。良いでしょう」
合格サインを貰ったルリはキッチンから出ると次の黒猫にバトンタッチした。
「黒猫様は生チョコですね」
「はい、先生お願いします」
自分と名前と同じ黒猫の刺繍のエプロンを着用した。
「まずはチョコを包丁で砕いて下さい」
「見ていたから楽勝にゃ」
砕いたチョコをボールに入れる。
「次に生クリームを沸騰するまで煮て下さい」
「ルリと一緒だにゃ」
沸騰した生クリームを砕いたチョコに注ぎこみ、溶かしていく。チョコが溶けきらないので、湯煎をしながらゴムベラで混ぜていき溶かす。
「全部溶けたにゃ」
「はい、ここに取り出したのは、オレンジリキュールというお酒です。別名キュラソーと言いリキュールにオレンジの皮で風味を付け加えたお酒になります。そして、これはオレンジリキュールの中でオレンジキュラソーと呼ばれる種類になります」
また、何処からか取り出す桜花である。
「旨そうなお酒だにゃ」
「えぇ、美味しいです。しかし、そのまま飲むよりは料理に使われる方が多いです」
オレンジキュラソーを溶けたチョコに回しかける。
そして、バットに平らに流し冷蔵庫に入れ1時間固まるのを待つ。
━━━1時間後━━━
冷蔵庫から出来上がった生チョコを取り出す。
「出来上がったにゃー」
「後は切り出せば出来上がりです」
等間隔に生チョコを切りお皿に取り出した。
「これで終わったにゃ」
「ご苦労様です」
どや顔でフランとルリを見渡す。
「黒猫は簡単のを選んだからじゃ」
「そうじゃ、そうじゃ」
「これも戦略の内にゃ。シンプル・イズ・ベストにゃ。それに、ルリ様はワタシと、そう大差ないにゃ」
「ぐっ、う、うるさいのじゃ」
あれこれ言い争ってる内に最後セツナがくノ一装束の上からエプロン着用しキッチンに入る。
「先生よろしくお願いします」
「ふぅ、やっと常識人が来ましたね」
「やははははっ、照れます」
いや、誉めてない。この中では一番マシなだけである。
「では、始めます。チョコを刻み、湯煎で溶かします」
やはり、皆のやってるところを見ていたのかスムーズに作業が進んでいく。
「はい、大丈夫です。卵を割り卵黄と卵白に分け、卵黄に溶かしバターと粉砂糖を加えます」
「これくらいかな?それにしても、砂糖はとても高級品だから、これ売ったらどれくらいになるのだろうか?」
もし売ったら金貨数枚だろう。日本円で数万円だ。
「卵黄にチョコを入れ、ゴムベラでかき混ぜてください」
「ほわっ、甘い香り・・・今すぐ食べたい」
「ダメですよ。次に卵白でメレンゲを作って下さい」
「任せろ。楽勝よ」
数分後、メレンゲが出来上がりチョコに少しずつ加えて混ぜていく。
「はい、上出来です。その上から薄力粉とココアパウダーをふるい、混ぜて型に入れ焼き上げます」
型に入れると、オーブンに入れ180℃の温度で50分程焼き上げる。焼いてる間、オーブンからチョコの良い匂いが漂い、セツナ含め皆がヨダレを垂れそうになってる。
「はい、焼き上がりました。次に━━━」
「まだ、あるのか!」
「これで最後ですから、頑張ってください。また、チョコを砕いて下さい」
再度、チョコを砕く。
「生クリームを沸騰するまで、煮て砕いたチョコに注ぎ溶かして下さい。それをケーキに掛ければ完成です」
「出来たよ。これでワタルの心はワタシの物よ」
これで、全員バレンタイン当日を待つのみである。
━━━━バレンタインデー━━━━
「うん?みんな、揃ってどうしたんだい?」
「「「「「これ」」」」」
「あぁ、今日はバレンタインか。みんな、ありがとう」
一人では量があるので、時間が経過しない宝部屋に入れて置き後で食べることにする。
それよりも、美味しく頂きたいものが出来たため、そちらを先に食べることにした。
「あれ?ワタル食べないの?」
「一人だと量が多いからね。後で食べることにするよ。美味しいに決まってるし。それよりも、みんなを食べたいな」
「えっ!私達を食べるってまさか!」
「ムラムラしてしょうがないんだよ」
「妾は良いぞ」
「ワタシもアソコがうずいちゃって」
「ごっくん、歩夢兄と・・・ドキドキ」
「人間との性交か。我も興味あるの(これで処女とバカにされなくて済む)」
「今、発情したにゃ。早く行くにゃ」
「お部屋の準備出来ました。皆様お楽しみを」
「桜花、お前を来るんだよ」
「いえ、私は━━━」
みんなで寝室に向かい、翌日の朝までやり遂げ全員グッタリと屍のように、その翌日まで寝続けたのである。