ssバレンタイン一年目・前編
バレンタインと言うことでバレンタインの話書いてみました。
ただし、間に合わなかったので2つに分けました。少しバレンタイン過ぎますが続きを投稿するのでお待ち下さい。
時間軸は戦争が終わってから2ヶ月程の話です。
「桜花はいるか」
とある理由があり、ワタルが居ない隙に桜花を探すフラン。
「お呼びでしょうか?フラン様」
メイド姿の桜花がフランに近寄ってくる。
「うむ、呼んだぞ。それで頼みがあるのじゃ」
「フラン様が私めにどんな頼みでしょうか?」
「うむ、ワタルがいた世界では、もうそろそろバレンタインとやらが近いんじゃろ?それで、チョコレートとやらと言う菓子の作り方を教えて欲しいのじゃ」
「構いませんが・・・・材料はあるんですか?こちらの世界では手に入らないと思いましたが・・・・」
「うふふふふっ、それは、すでに準備してあるぞ」
フランは宝部屋から段ボールを取り出し、その中には大量の板チョコレートが入っていた。それも、ワタルの世界で売ってる某有名チョコレートである。
「こんな大量のチョコレートどうしたのですか?」
「そ、それは・・・・ワタルに買って貰ったのじゃ」
「はぁ~、仕方ないとはいえ、マスターも甘いですね」
魔法の天才フランでもワタルの娯楽魔法が使えないので、これだけはしょうがない。
「それで何を作るつもりですか?ただ単にチョコレートと言っても種類ありますよ。チョコケーキ、チョコクッキー、トリュフ、ガトーショコラ等々です。細かく言えばキリがありません」
「わ、妾の方が甘かったのかもしれないのじゃ。奥が深いよの」
「それでどれにするのですか?」
「待て待て、そう急かすな・・・・決めたぞ。ガトーショコラとやらに決めたのじゃ」
フランはどういう物かも知らずに決めたのだ。この後、試練が待ち構えてるやも知らないで━━━
「あぁぁー、先を越されたよ」
あまりのショックで膝から崩れるセツナ。
「何じゃ?セツナも桜花に習いに来たのか?」
「その通りです。私達、魔王城にいた者は料理には無縁でしたので、この際、恥を忍んで習いに来たのです」
「そうか、うん?と言う事は他のヤツらも来る可能性が━━━」
その考えは正解であった。この後、一人は除いては桜花によるチョコ作り教室に参加する事になるのである。
「それで、改めて確認します。フラン様がガトーショコラ━━━」
「うむ、どんと来いのじゃ」
「セツナ様がザッハトルテ━━━」
「あっははははっ、ノリで決めたけど、出来るかな」
「黒猫様が生チョコ━━━」
「名前からして簡単そうだにゃ」
「ルリ様がトリュフ━━━」
「ふふふふっ、高級そうね」
「リリー様は独自で作ると━━━」
「前の世界で作ってたからね。私は大丈夫よ」
桜花先生が開催するチョコ作り教室が始まった。
「最初にフラン様のガトーショコラからですね」
「あぁ、頼むのじゃ」
私服の上にエプロンを着たフランは張りきってる。
「それでは、卵を割って下さいませ」
「うむ、任せるのじゃ」
ボールに卵を割ろうとするが、力任せでバキッとグチャグチャになってしまった。
「・・・・」
「・・・・はぁ、まさか卵も割れないとは・・・・しょうがないですね」
「・・・・すまぬのじゃ」
卵を何個も犠牲にしながら、どうにか八割方キレイに割る事が出来てフランは誇らしそうである。
「おぉー、キレイに割れたのじゃ」
「合格です。次に違うボールに卵黄と卵白を分けてください。卵黄は潰さないように」
慎重に卵黄を潰さずに移していく。
「はい、大丈夫です。それでは、メレンゲを作ります。卵白にグラニュー糖と言う砂糖を少しずつ加えながら、泡立て器で角が立つまで混ぜていってください」
「はい、お任せなのじゃ。桜花先生」
透明だった卵白が生クリームのようにフワフワと白く変化していく。
「メレンゲはこれくらいでどうじゃ?先生」
桜花はメレンゲの固さを見ると了承を得た。
「卵黄も同じくグラニュー糖を加えながら混ぜてください。ただし、湯煎をしながら混ぜて下さい」
ボールに60℃程のお湯を張り、卵黄が入ったボールを入れ混ぜる。黄色い卵黄が白くもったりと変化していく。
「出来ました。先生」
「よろしいです。次はチョコを包丁で細かく砕いて下さい」
フランは剣を扱った事はあるが、おっかなびっくりで包丁を握りチョコを砕いていく。側で見てる桜花は危なげなフランにソワソワしてる。
「危なげな箇所がありましたが砕けましたね。それを湯煎して溶かし、そこに溶かしバターを入れ良くかき混ぜて下さい」
時間が立つにつれチョコが溶けていき、そこに溶かしバターを入れゴムベラで切るように混ぜていく。
「卵黄に溶かしたチョコを入れ混ぜ、メレンゲを三分の一程入れ混ぜて下さい」
「はい、先生」
「良いですよ。この、ふるい器で薄力粉と言う粉をふるって下さい。そしたら、残りのメレンゲを入れ混ぜて下さい」
すべて入れ混ぜていくと、この世界に知られていないがキャラメル色に変化していった。
「後は焼くだけです。この型に入れてオーブンにセットして下さい」
「ふぅー、やっとここまできたのじゃ」
オーブンで40分焼けば出来上がりである。
そして、40分後良い匂いがしてきた━━━チンッとオーブンのベルが鳴った。
「やっほー、出来上がったのじゃ。とても、美味しそうじゃの。これで、ワタルもメロメロじゃろう」
「完璧な仕上がりです。良く頑張りました」
「先生ー」
「フラン様」
ガシッと抱擁をかます二人。
桜花先生の合格を貰い、フランはバレンタインを待つのみである。
「次は・・・・簡単なトリュフチョコを選んだルリ様」
「我の番か。フランよりも上手く作るのじゃよ」
「なんじゃと!簡単そうな物を選んでおってからに」
「ふん、賢い選択だと言って欲しいものじゃ」
ビシビシと火花が散る程に睨みあっている。
「・・・・始めるのですか?辞めますか?」
桜花怒気を含ませた声で聞いてくる。
「は、はい、宜しくお願いします」
(ヒソヒソ・・・あんたのせいで怒らせたんじゃないのよ)
(ヒソヒソ・・・おまえのせいじゃろう)
またもや睨み合う二人だが、二人の顔すれすれで包丁が通りすぎ壁に突き刺さる。
「あら、手が滑りました。おほほほほっ」
口では言わないが『いい加減にしろよ』と伝わってくる。
それを見てたセツナと黒猫も怯えている。




