27話闇反魔法の特訓・前編
「ここはの。妾の魔法"永遠なる箱庭じゃ。人工の異世界と思って構わん。ここなら、いくら壊しても大丈夫じゃ」
まるで、本物と見間違う━━━いや、地面の感触、匂いもして本物だ。これを作り挙げる魔王フランって言葉で言い表せ無い程に凄いと実感した瞬間である。
「「・・・・」」
「ん、どうしたのじゃ?二人共黙って」
「スケールがデカ過ぎて、言葉が出なかっただけだ。改めて、フランは凄いと感じた。惚れ直したよ」
「そ、そうか。魔王ともなればこんな事容易いことよ。おっほほほほほっ」
「あぁ、マジで凄いよ」
「はい、マスターの言う通りです。これは言葉が失いました」
「わっははははっ、よし、これで貸し一つだぞ。ワタル」
「えっ、うーん、しょうがないな」
何か大きな貸しを作ったようで、後が怖いがワタルも男である。男のプライドに賭けて了承してしまったが、さて後で何をやらされるのやら。
「これこら闇魔法の指導を行う。妾を先生と呼ぶと良い」
何故かフランは着替えており、その姿は女教師のコスプレのようだ。上は長袖のカッターシャツで胸元のボタンをわざとらしく、胸の谷間見えるように開けてある。多少、シャツの丈が短いのかオヘソがチラリと覗き見える。
下はマイクロミニスカートでフランの決め細やかな美脚がまぶしい。パンティが見えそうで見えないのが逆にエロさを━━━男心をくすぐる。それに加え、伊達メガネだと思われるがメガネをしており、時々クイクイと落ちないように上げてる。
何処かの某AV女優を思わせる。
「はい、先生ー質問です」
挙手するワタル。
「はい、ワタル君」
ワタルを生徒のように指すフラン。
「そのコスプレ衣装は何ですか?そもそも、何処から手に入れたんですか?」
ワタルの質問にギクッと身震いするフラン。
「こ、コスプレ衣装とは一体全体何のことか分からないわね。それに妾━━━先生はいつもこれを着ているじゃないの。変なこと言わないで。もしかて、先生の事からかってるの?」
「いえ、先生からかってません」
「・・・・」
本当に何処で手にいれたんだろう?この世界には無いはずなのに━━━考えられる事は俺のように異世界(俺がいた現実世界)から物資を手に入れる方法が他に有る事。しかし、フランが知らないと言う事は俺以外だと確率は低くなる。うーん、謎だ。
そういう知識は何処で仕入れてくるんだ?教えていないはずだが━━━
後、桜花無言でジト目は止めて欲しい。別に俺が勧めた訳ではないし、そういう趣味でないからな。
近い内に謎が解明されるが、実は間接的にワタル自身が関わっていた事が明らかになる。それはさておき━━━
「それでフラン先生、どうすれば良いですか?」
まだ先生と生徒ごっこ遊びを続けるワタルとフラン
「んーそうね。イメージとしては着ているとは分からない程の薄い布を纏ってる感じで、それでいて、その布が鋼やオリハルコンのように頑丈なイメージでかな。それが一番自然体で」
フランの言葉を参考にして、早速やってみる。
えーと、薄い布を纏う感じで━━━━
ブォーと一瞬薄く黒光ると、良く目を凝らさないと分からない程薄いオーラを纏っていた。
「こんな感じか?」
「さすがは妾のワタルじゃ。最初のアドバイスでものにしてしまうとは驚きじゃ。妾から見ても綺麗じゃの」
もう、ごっこ遊びは飽きたのか服装はそのままで、口調が戻ってる。
「さすがはマスターです。きっと切っ掛けが必要だったと思います」
確かにアドバイスされただけで、こんなに上手くいくとはワタル自身も驚いている。
「それで、次の段階じゃの。今度は桜花を使いながらやることじゃ。自分以外に使用する方が難易度が格段に上がるからの。これが出来れば、気付かれず他人にオーラを付けることも可能になる」
「なるほど、桜花頼む」
「はい、マスター」
人から刀に戻りワタルの右手に収まる。
ワタルは目を瞑り集中する。今度は自分と一緒に桜花をオーラで包む。
「ここまでスムーズに行くとは!妾でも驚愕じゃ」
本来なら数年修行する必要があることらしく、フランでも一年は掛かったという。フランは魔法の天才と言われるけど、それは努力という対価を払ったから今の彼女がいるのだ。それでも、他の奴らよりは魔法の才に恵まれたのは間違いない。
「桜花、どんな感じだ?」
「はい、安心感があります」
コントロール不十分な時は魔力が駄々漏れに対し、今は傍目からは魔法を使用してるのか良く見ないと分からない。見た目で分かる変化としては桜花の刀身が桜色から黒く変化していた。
「名付けて"闇心"かな」
闇纏から闇心に改名した。
「おっ、格好いいと思うのじゃ」
「そ、そうか」
「うむ、自分の技に名前を付けると気が入り、威力が増すのじゃ。多分」
多分と言われ転けそうになった。
「た、多分って━━━」
「だ、だって~、名前があった方が気合いが入るじゃろ」
言ってる事は分かるが、俺も昔は中二病だったので男心がくすぐられる。
「一回どれ程のものか試したらどうじゃ?」
確かにぶっつけ本番で威力が分からないと周りの仲間まで巻き込んでしまうかもしれない。
「どれ、行くぞ。桜花」
『いつでもどうぞ!マスター』
「ふぅ、桜流一刀術第一剛の型━━━━」
桜花を逆袈裟の軌道で軽く払ってみた。
「・・・・菊一文字」
何もない空間に払っただけなので、何も起こらないと思った矢先、数秒後目測でおよそ50キロメートル離れてる富士山級の山々が横に切断されていた。
「「・・・・」」
『・・・・』
余りの広範囲で高威力により三人共声が出せないでいた。
もし、あの場で使っていたら戦争が始まる前に獣王国オウガは消滅していただろう。
「・・・・ワタル、今まで山を切った事はあるのか?」
「・・・・ないから、俺自身も驚いてる。フランならどれくらいで山を破壊出来る?」
「妾なら・・・・一時間程じゃろうな。多少準備が必要じゃからな」
『さすが、マスターです。フラン様より凄いとは・・・・』
桜花が今人化してたなら、キラキラと目を輝かせているだろう。
「ふぅ、初めての事をやったからか疲れた。少し休憩しようか。お茶と今日のお菓子としてマフィンを持ってきたんだ。多分、フランは気にいると思って」
「初めて聞く名の菓子だな。楽しみじゃの」
もう、ヨダレが垂れそうで口が決壊しそうだ。
「桜花、ティータイムの準備を」
「はい、ただ今準備を・・・・」
いつの間にか人化したメイド姿の桜花が俊敏に準備をしていく。これもワタルの教えが良いからだ。
ティータイムの準備を終え、絶景な風景を背に楽しむのであった。




