正月一年目・後編
正月の続きです。
明けましておめでとうございます。
来年もよろしくお願いします。
ワタルとグリムは女性陣より先に男物の着物である"お召一つ紋付"に着替えると上にミカンが乗ったコタツに入り待っていた。
「にゃははは、お待たせにゃん♪どうだワタル似合ってるかにゃん?」
黒猫の着物は黒と白の猫の柄で、正に名前と合っていて似合いすぎている。肩と胸元が開いてるので、セクシーよりはエロい。後ろは尻尾が三本ある分膨らみがあり尻が見えそうで見えない。
「あぁ、似合ってるけど、いつも着物着てるから新鮮味がないな」
露出が多い事はあえてスルーする。
そうしないと、からかわれるし残りの嫁ーズが怒りそうで....
「むぅー、感想それだけなのにゃ。つまんないにゃ」
つまんなくて結構。予想出来るトラブルは避けるに限る。
「ワタル~私は似合ってる?どうかな?」
黒猫の次に入って来たのは吸血姫ルリである。着てる着物は黒を基調とし赤いコウモリの柄で控え目なデザインとなっている。くるりと回りポージングを決めている。
「似合ってるよ。いつもより、清楚で落ち着いた感じで新鮮味が合って良いよ」
「ん、いつもよりと言う事はいつもそうではないと?うん?それにいつもよりの所が強調されたように聞こえたが?」
ヤバい!バレてらっしゃる。
「あっははははっ、そんな事ないよ?悪女と思った事なんてないよ?」
「悪女ですって!ワタル、そんな事思ってたの?そこから動かないでね」
ヤベッ、本音漏れちった。
ジリジリとワタルとの距離を詰めて行く吸血姫ルリに対して後退するワタル。
「ふふふふっ、逃がさないわよ。ワタル」
ガシッと吸血姫ルリがワタルの腕を掴み床に押し倒す。
あっ、これはヤバい!
これは魔法ではなくスキルの魅惑を使われワタルの目がトロンと正気を失い掛けた時に....
「止めい」
ドスと黒猫が吸血姫ルリの頭に空手チョップをくらわし、スキル魅惑を中断させた。
「痛いじゃない!何するのよ」
「お主の魅惑は悪質なのにゃ。ワタルにも止めてられるのに約束を破るのにゃ?」
うぐっと事実を言われて、ワタルに振り向き謝る。
「ワ、ワタルごめんね。大丈夫?」
「ふぅ、大丈夫だよ。魅惑を使わなくても愛してる事は一生変わらないからな。もう、使うなよ」
吸血姫ルリの瞳がハートに変わり、余計にワタルに抱き付いてきた。それはもう、ワタルの腕力だけでは引き剥がせない程に....
「ワタルワタル、私も大好きよ。ハァハァ」
「ちょっ!ルリ、止め。力強....い、痛い」
「ちょっと止めるにゃ。ち、力強いにゃ」
「ちょっと何やってん....のよ」
ドガッと吸血姫ルリを蹴っ飛ばしたのは、我らが魔王様フランシスカ、フランである。
「何時まで待っても入れないじゃない。プンスカ」
ワタルを助けた訳ではなく、何時まで待っても部屋に入れないイライラの結果、ついでにワタルを助けたのだ。
「あ、ありがとう。フラン」
「べ、べつに。それより!妾の着物姿はどうじゃ?」
フランの着物は赤色を基調とし赤と白の金魚が泳いでる柄で可愛いらしい。
「....」
「何じゃ?黙って、早よう答えんか」
「いや、改めて見惚れて....」
「「....」」
ワタルとフランが見つめ合いながら徐々に唇の距離がゼロになる瞬間邪魔が入った。
「シャラーップ!吹き飛ばしたままにして二人の空間を作るな」
((あっ、忘れてた....))
「ふん、自業自得なのに、妾の邪魔するなんて言語道断なのじゃ」
「うぐ、それは....魅惑を使ったのは悪いと思うけど、それでも私はワタルとイチャイチャしたかったんだもん」
(((うわ~、だもんって可愛いっ子ぶっちゃて引くわー)))
吸血姫ルリの見た目は20代~30代の魅惑な女性だが、中身はフランと同じく100歳は越えてるのである。
吸血姫ルリの発言にグリムが笑いを堪えてる。我慢しろよ。殺されるからな。
「ねぇ~、もう入っていい?」
セツナがピョコッと顔を出し入ってきた。
セツナの着物は青が基調とし雪の結晶の柄で非常に似合っていて、ワタルはセツナに釘付けになっていた。
「....その~、何て言えばいいか。素敵だよ」
「あ、ありがとう。そ、そのワタルも素敵」
今度はワタルとセツナが二人の世界に入り、周りを気にせずイチャイチャとしている。
グリムが後ろの方で、孫の着物姿を見る事が出来たので感激のあまり涙を流していた。
「ちょっと待てーー!最後に私が居る事忘れてないよね。寝てる間に楽しい事して」
(((ナイスだ!良くやった。夏希)))
ワタルとセツナの邪魔をした夏希に対してセツナ以外の三人は喜びグッジョブと親指を立て、セツナはムスーと不機嫌になったのである。
「夏希、邪魔しないでよ」「「「良くやった。夏希」」」
見事に声が重なり、セツナが声の主の三人の方へ振り向くが口笛を吹いて誤魔化している。
「まぁまぁ、もう少しでおせちが出来るから」
「マスター、おせちが出来上がりました」
ちょうど、おせちを持って着物を着た桜花が部屋に入って来た。
「お、これが"おせち"とやらか。たくさん入ってるな」
おせちの中身は次の通りである。
一の重:祝い肴
・数の子:子孫繁栄
・田作り(片口鰯の稚魚):五穀豊穣
・黒豆:邪気払いと勤勉に働けるように
・たたきごぼう:家の基礎が堅牢であるように
・紅白かまぼこ:赤は魔除け、白は清浄
・伊達巻:知識が増えるように
・栗きんとん:豊かさと勝負運を願う
ニの重:焼き物
・ぶり:出世を願う
・鯛:めでたい
・海老:長生きの象徴
三の重:煮物
・蓮根:将来の見通しかきくように
・里芋:子孫繁栄
・八つ頭:子孫繁栄
・くわい:子孫繁栄
・ごぼう:根を深く張り、代々続くように
与の重:酢の物・和え物
・紅白なます:平安や平和
・菊花かぶ:かぶを縁起物である菊に象ったもの
・小肌栗漬け:将来の出世、五穀豊穣
五の重:空又は好きなもの
今回は肉料理を中心にまとめてみた。
「わははははっ、遊びに来たぞ。お、豪勢で美味しそうな物があるな。それに皆揃って綺麗な服を着てるな。一瞬、場所を間違えたと思ったぞ」
今から食べようかというタイミングで獣王テンガが豪快に入って来た。
「テン坊、何の用じゃ?」
「ん、今日は正月とやらとワタル殿に聞いてな。めでたい日みたいではないか」
伝えたのがワタルと聞いて「どういう事じゃ」と念話でフランが訴えて来た。ワタルも念話で「つい、ごめん」と謝った。
獣王テンガが加わった事により、さらに賑やかになり"おせち"のそれぞれの料理の意味や着物の説明をしたり、正月にやる遊びをやったりと色々楽しんだのである。
後日になるのだが、Sランク商人商会キャッツテール会長キャロに独楽、凧にカルタ等正月玩具のアイディアを売り、ワタルの懐はウハウハになるのであった。




