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そして布は幼女を護る  作者: モッチー
第3章「スーパー幼女大戦」
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最速で、最短で、真っ直ぐに

「ちょっと待ってください! 大昔に制定された協定法によって罪人以外の奴隷は世界的に禁止されているはずです!」


 声を荒げたのはルーゲインだ。

 その協定法とやらを俺は知らないが、事実なら話は色々とおかしくなる。ゲンブは罪人を匿っている、ということになってしまうからな。

 だが当のゲンブは事も無げに答えた。


「表立っては誰も奴隷なんて口に出さないよ。でも罪のない人たちが奴隷になっているのは紛れもなく事実だ」

「……詳しく説明してくれませんか?」

「もちろん、そのつもりだよ」


 信じられないといった様子のルーゲインと対照的に、ゲンブの落ち着いた態度と言葉は、説得力があった。

 まるっきり、ウソをついているようには見えない。


「といっても俺も聞いただけで、実際に見たわけじゃないから大まかにしか知らないんだけど……とりあえず、わかってるところから話すよ」


 気になる単語も飛び出ていたけど、今はゲンブの話に集中しよう。

 そうしてゲンブから語られた内容により、この世界の闇が浮き彫りとなった。

 まず奴隷を商品として扱っているのは自由商家連合国ヤッサムといい、つまりはひとつの国家が主導となって奴隷売買をしていたのだ。

 裏社会の小規模な出来事かと思えば、まさかの国家事業である。

 ルーゲインは沈痛な面持ちでいたし、事情を深く知らない俺ですら驚くに値するけど……これは、ほんの序盤だった。


 なにせゲンブは、商家連合が奴隷を卸している先は、まさに俺が滞在している大国、帝国だと言い始めたのだ。

 そんなバカなと反論したかったが、俺もミリアちゃんもノブナーガだって帝国のすべてを把握しているわけではないし、それは皇帝にすら言える。

 機関車なんて物が重宝されるほど広大な土地のどこかで、非合法な商売が密かに行われていても不思議ではない。

 現にゲンブは帝国へ輸送される途中の奴隷たちを救出しており、そのまま他国へ移って逃亡生活を送っているらしいのだ。

 必要なら証拠として隠れ家へ案内するとまで言われては、あとでルーゲインに確認を取らせるとしても、残念ながら事実なのだろう。


 別に、俺が帝国へ肩入れする必要もない。

 ……ないのだが、ミリアちゃんたちが健やかに暮らしている国のどこかに、そんなおぞましい裏が隠されているなどと、あまり信じたくはなかった。

 ひとつ悪い面を知ってしまえば、他の綺麗な部分にも疑いの目を向けてしまい、この世界そのものが汚いものに思えてしまう。

 例えるなら黒い悪魔を見つけて、まだ部屋のどこかに何匹も潜んでいるのではないかと、嫌々ながらも放置できずに探ってしまう……そんな心境だった。

 とはいえ現実逃避は良くないと、気を引き締めてゲンブの言葉に耳を傾ける。


 そもそもの話として、どうやって奴隷を用意しているのか。

 数人ならともかく、商売が成り立つほどの人数を確保するには、例えどこからか誘拐するにしても、各地で行方不明者が頻発しては目立ってしまうだろう。

 ルーゲインの様子では、奴隷売買は世間に露呈していないようだったし、よほど遠くから連れて来ているのか?

 その答えこそ、俺がさっきから気になっていた言葉……異世界人だった。

 ゲンブは異世界人が奴隷にされていると口にしたが、俺は当初、過去の勇者のように召喚された地球人だと思い込んでいた。

 しかし実際のところ、そう単純なものではないらしい。


「その異世界人というのは地球から?」

「それが違うようなんだ。みんなバラバラで、違う世界から来たらしい」


 俺たちの知る地球と、この世界の他にも数多くの異世界が存在するようだ。

 それを知った商家連合は、魔道具を用いて無作為に異世界人を召喚し、有能で従順な者だけを徴用、そうでない者は奴隷として売っている、というのが奴隷売買の全貌である。

 やっていることは誘拐と変わらないが、次元を越えてしまえば誰も手出しができないし、他国に悟られる心配もない。

 完璧な計画だな。唯一、胸糞が悪いという欠点を除けばだが。


 初めにゲンブがこれを知ったのは本当に偶然だったようで、ほとんど成り行きで奴隷たちを逃がす手助けをしたそうだ。

 今のところゲンブたちに追手はないようだが、予断を許さない状況であることに違いはないだろう。

 しかし匿っている奴隷たちの情報によると再び召喚が行われてしまい、新たに奴隷となった者たちが帝国へ移送される時期が近付いているという。

 もちろん助けに行きたいが、ゲンブの隠れ家は帝国から距離があるそうで、離れている間に隠れ家でなにかが起きては対処できない。


「だから私たちに救出に向かって欲しい、ということですか」

「無事に助けられたら、そのまま村で保護すればいい。その後は俺が匿っているみんなも安全な場所に住まわせたいから移住させる。お互いメリットがあるだろ?」


 ゲンブが保護した奴隷の数は十人で、情報によれば次も十人以上は確実にいるだろうとのことだ。

 もっと増えるとは、そういう意味か。

 合わせて二十人弱も村へ来てくれるなら、たしかに助かるが……。


「いえ、クロシュさん待ってください。その奴隷として扱われている方々を救出するのは僕としても賛成ですが、村へ案内するかは別ではないでしょうか。こう言ってはなんですが、その方々を信用するに足る根拠がありませんし」


 もっともな意見だな。

 気の毒な境遇だとは思うが、インテリジェンス・アイテムのパートナーとして村に住まわせるかは話が別だろう。保護するだけなら他所の街でもいいし、皇帝にでも直談判すれば動いてくれるはずだ。

 万が一、皇帝が黒幕なら武王に続いて傀儡が増えるだけだろう。


「いいや、その心配はないよ」

「なぜですか?」


 自信ありげにゲンブが言うので、その根拠を聞いてみる。


「だって、奴隷にされているのは子供たちだからね」

「すぐに出発しましょう。連合なんとかは滅ぼしても構いませんね?」

「く、クロシュさん! 落ち着いてください!」


 急に立ち上がった俺を、ルーゲインが慌てて抑えようとする。

 なんだ? ジャマをするなら今度はマジで処分するぞ。

 全開の殺気を受けたルーゲインは僅かに怯んだが、なおも引き止める。


「まだゲンブさんの話が終わっていませんし、向こうも一度は奴隷を奪われているので警備を強化しているはずです! ここは帝国へ輸送されるタイミングを窺って奇襲を仕掛けた方が確実ですよ!」

「待てません。最速で、最短で、真っ直ぐに救出に向かいます」

「子供たちが戦いに巻き込まれる危険性を無視してもですか?」

「……それも、そうですね」


 その言葉は氷柱をぶっ刺したかのように俺の頭を冷やしてくれた。

 ルーゲインの言う通りだ。

 子供たちの中には必ず幼女がいる。だからこそ一刻も早く助けなければと気が急いてしまったが、それではキズつけたり、最悪だと命を落とす可能性がある。

 ひとりだけなら絶対に護り抜ける自信があったし、転移の魔法陣という手段もあったが、居場所がばらばらだったりして手間取り、見えないところで人質にでもされたら成す術がなくなるからな。

 やるなら確実に集まっているところで一息に、だ。

 そして迅速に動き、敵に一切の抵抗を許さない電撃作戦でなくてはならない。

 とすると本拠地に攻めるより、輸送している時を狙うというルーゲインの提案は理に適っているように思えた。

 深く息を吸って、荒ぶる心を鎮める。


「……すみません、それとありがとうございます。もう大丈夫です」

「い、いえ、クロシュさんの子供を大切にする意向は理解していますので」


 正確には幼女だが、まあ敢えて訂正する必要もないか。


「しかし、できればヴァイスさんにも止めて貰いたかったですね」

「我は師匠が望むなら、単騎であろうと敵地へ乗り込み敵を殲滅する所存です」

「ヴァイス、私が明らかに暴走していたら止めてください」

「了承しました」


 いや、でもこんなに俺が短気だったとは、自分で驚くね。

 それも仕方ないか。幼女が奴隷にされて酷い目に遭っているだなんて、想像するだけで魔力が昂りそうになるのだから。

 もしも、それがミリアちゃんだったらなんて、ちらっと考えただけで……。


「ほ、本当に大丈夫ですか?」

「もちろんです。ですが、なるべく早く助けられるようにしましょうか」

「……そうしましょう」

「あーっと、俺ってなんかマズいこと言っちゃった……のかな?」


 俺の様子を窺うようなゲンブは、恐る恐るそう言った。

 居心地が悪そうだけど、別におまえは悪くないぞ。

 ルーゲインも察してくれたのか、大丈夫ですよと安心させている。


「クロシュさんはちょっと……いえ、とても子供好きと言いますか、とにかく大切にしていますので、それを害する者には容赦しないんです」

「そうなのか?」

「僕が殺されそうになったのも、大部分はそれが理由でしょうし……」


 ホントによく理解しているようで感心する。

 これなら二度と過ちを犯さないだろう。


「ゲンブさんも注意してください」

「ああ、もちろんだ。子供を傷付けるやつらなんて許せないからな」

「……ゲンブとは気が合いそうな予感がしますね」


 そういえば匿っているのも子供で、たぶん幼女も含まれているはずだ。

 なるほど……たったひとりで救出し、これまで保護していただろうゲンブには尊敬の念を抱いてしまうな。

 やはり同じ防具型なだけはあると、俺はゲンブの評価を大幅に引き上げた。


 とにかく、これで人格に関しては解決と見ていいだろう。

 幼い子供のうちからしっかりと教育すれば、インテリジェンス・アイテムを悪用するような愚か者にならないだろうし、一緒に成長していくという意味でもパートナーとして相応しい。

 ただ、ひとつだけ懸念が残る。


「今回はそれでいいとしても、商家連合を潰さない限り、再び異世界人が奴隷として召喚されるのでは?」


 放っておけば村の住人候補が増える、なんて都合よくは考えない。

 村で保護するのは元の世界へ帰れないと想定したからだ。

 できることなら帰してやりたいし、そもそも召喚という名の誘拐を止めるべきなのだから。


「さっきも言ったけど特殊な装置……魔道具で召喚しているらしいんだ。でも保護した子たちの話を聞いた限りでは、その部屋の様子は覚えていたけど、部屋がどこにあるのかは覚えていないし、なにより警備が厳重だろうから……」

「潜入して破壊する、なんて簡単にはいかないワケですか」


 だから放っておく、などという選択肢は最初から存在しない。

 あるのは誰かを潜入させるか、俺が出向くか。その二つくらいだ。武王国にだって忍び込んだ経験があるのだから、決して不可能ではないだろう。

 問題は破壊に成功しても、すぐ大騒ぎになってしまい、子供たちを逃がすのが余計に難しくなる点か。下手をすれば証拠隠滅として処分される恐れもあった。

 これは順番が逆でも、魔道具を隠すといった似たような結果が予測できる。


「子供たちを助ける班と、召喚の魔道具を破壊する班で、二手に別れて同じタイミングで決行するのが無難ですね」

「え、壊すのは決定なのか?」

「ゲンブさん、やらない、という考えはクロシュさんにありませんよ。必要なら本気で商家連合を滅ぼすつもりです」

「……そこまでの覚悟があるってことか? わかった」


 ルーゲインとゲンブがぶつぶつと話している間に、俺は戦力分析を進める。

 この中でもっとも戦闘に長けているのは、たぶんヴァイスだ。彼女の能力なら仮に失敗しても、敵地から逃げ出す突破力がある。本人のやる気も充分だったし、潜入は任せるとしよう。

 するとクレハも同行が決定してしまい、自動的に残った俺とルーゲインが救出班へ回ることになった。

 あまり気に入らないやつだが、実際に戦った感想として、複数の魔法を操るルーゲインはなかなかに厄介だったので、味方として不足はない。

 やつが保有する中で最強のスキル【極光】は俺が奪ってしまったが、威力が高すぎて迂闊に撃てないし、本人も使う気がなさそうだから構わないだろう。

 そんな感じで俺が班分けを提示すると、特に不満も出ず決定となった。


「師匠のご下命、必ずや果たしてご覧に入れます

「ま、まあヴァイスの頼みだし、事情が事情だから手伝ってあげるけどね! でも別にアタシは、アンタの指示なんて聞くつもりは……ってちゃんと聞いてる?」

「これも罪滅ぼしのひとつですね。全力を尽くしましょう」

「一緒に行けなくて悪い……。子供たちの移住が済んだら、その時は俺もみんなの力になるから、よろしく頼んだ!」

「ええ、任せてください」


 俺ひとりでも向かう意気だったけど、こうして味方がいるのは、やはり心強いものだと、不意にミラちゃんたちのパーティを思い出してしまった。

 ディアナが突っ込み、ノットが援護、ミラちゃんが支えて、レインが補助する。

 役割を分担して、互いに助け合う理想的な仲間たち……いつか俺も、そんな仲間を作れるのだろうか?

 なんて感傷に浸っている場合じゃないか。

 まだまだ、やるべきことは多いのだ。

 気を取り直すと、俺は相談しながら作戦の詳細を詰めて行く。




 帝国から南東、海を渡った先に浮かぶ島国である商家連合は、毎日のように船を出して、帝国領土の東端にある港で積み荷を降ろすという。

 奴隷を乗せた船も表向きは貿易船に見せかけているが、その分だけ積み荷を減らさなければならず、よく観察すれば容易に判別できるそうだ。

 なので先にヴァイスとクレハが商家連合へと赴き、港で張り込みをして、どの船が目標なのかをチェックさせることとなった。


 連絡を受け取ったら、今度は俺とルーゲインが帝国側から飛び立つ。

 船が港へ着いてから襲撃すると、帝国内へと捜索の手が及んでしまう。村は港から離れているが、できるだけ疑いの目は逸らしたい。

 そこで俺たちは、襲撃ポイントを海上に定めた。

 俺もルーゲインも自由に飛べるし、転移の魔法陣で子供たちを移動させれば、どこへ逃げたのか見当も付かないだろう。

 例え帝国を疑っても、襲われたのは海上なので証人は商家連合の身内のみ。おまけに商品を盗まれたと言って捜索をするにも、具体的になにを盗まれたのか明かせなければ、他国である帝国内での捜索は絶望的だ。

 もし強引に動いても、遠く離れた村へ辿り着く前に取り押さえられる。


 一方で同時刻に、ヴァイスたちも怪しい施設を虱潰しに探して回る手筈だ。

 はっきり言って情報が少なすぎるので、行き当たりばったり感が拭えないが、これ以上はどうしようもない。

 俺たちだって船のどこに子供たちが収容されているのか、もし当日が雨や嵐だったら船をどうやって発見するのか、などの懸念が残されている。

 最悪の場合、港に停泊した船を沈めてしまい、その騒動の最中に逃がすという手段すら辞さないつもりだ。

 可能な限り、そうならないよう努力はするけどね。


「僕としてはもう少し詰めたいですが、ひとまず、こんなところでしょうか」

「ああ、まだ十日ほど余裕はあるから、その間にヴァイスと、クレハの二人には自由商家連合へ移動して貰おう」

「ちなみに、移動はどうするのですか?」

「師匠、我と赤は飛べるのでご心配なく」

「ねえヴァイスってばぁ……アタシのことも名前で呼んでよぉ……」


 何気にゲンブ以外の四人が飛べると判明して、飛行系スキルはそう珍しくもないのかと、ちょっとガッカリする。

 せっかくミリアちゃんを喜ばせられるスキルを得られたと思ったのに。

 ……まあ、ここに集まっているのが特別だということにしておこう。


「ルーゲイン! そこにいるんだろう!? 出てこいッ!」


 唐突に階下から怒号が響き、不覚にもビクッと肩を揺らしてしまった。

 何事かと覗き見れば、なにやら青い長髪の男が喚いている。

 目が合ったが、この部屋は秘匿されているそうだから、庭園側からでは俺がいることにすら気付けないだろう。

 というか【人化】してる?


「そこで見ているのは知っているんだ! さっさと降りて来い!」


 なおも大声で騒ぎ立て、壁を見上げる男に周囲のインテリジェンス・アイテムたちも集まって来た。

 この部屋を知らなければ、ただの頭がおかしい奴にしか見えないな。


「それで、あれはなんなのですか? ルーゲイン」


 隣で見下ろしている当人なら、なにか知っているだろうと尋ねたら、やはり顔見知りだったらしく渋い顔をしていた。


「たしか……リヴァイアと名乗っていましたね。抑止力としてみなさんを勧誘している時から僕に接触して、今も管理者に加えろと強要している者です」

「そんなに希望するのなら、加えてあげればいいでしょう――」


 他にはいないと聞いていたが、あいつも【人化】できるみたいだし。

 そう思って【鑑定】してみたら、スキル欄にあったのは【擬体】だった。



【擬体】

 魔力により肉体を形成する。僅かでもダメージを受けると消滅してMP消費。



 【人化】と【擬体】。

 この二つの大きな違いは、人間の肉体を得るか、人間の姿を模すかだ。

 例えば【人化】すると食事ができるし、長く続けていると睡眠が必要となる。攻撃を受けたらキズもできるし、血だって流れる。なにより容姿が固定される。

 一方で【擬体】は、あくまで幻だ。魔力が人間の皮を被っているようなもので、ちょっとしたダメージで魔力が抜けて消える。代わりに容姿は自由自在だった。

 あの青い長髪の男の姿は、リヴァイアとやらが想像した理想の容姿なのだろう。

 どちらが良いのかは人によるが、少なくとも【人化】を得られるような、特筆するほどのレベルに達していないのは明らかだ。


「――そういうことですか」

「クロシュさんは【鑑定】が使えるんでしたね。ではご覧になった通り、彼は能力的に、そして人格的にも不適切なんです」


 能力はともかく人格にまで言及するということは、あいつは『黒』のようだ。


「他の方々と比較すれば、たしかに能力は高い部類なのですが、協調性に欠ける上に他者への迷惑をまったく省みず、自己中心的な態度が目立ちます」


 八割くらいはジンと【幻狼】にも当て嵌まりそうだな。

 ただあの二人は、悪いやつではない。


「ちょうど打ち合わせも終わりでしたし、これで解散としましょうか。彼の相手は僕がするので、みなさんは先にお帰りください」


 そう言ってルーゲインは自ら庭園と降りて行く。

 放っておけばいいのに、律儀なやつだ。

 俺は面倒事に巻き込まれたくないので、お言葉に甘えてさっさとヴァイスと共に現実世界へ戻ったのだった。


 商家連合と、異世界人の奴隷――。

 これらをミリアちゃんに話すのは、どうにも躊躇われる。

 なにより幼い彼女を、再び戦場に立たせるなんて俺にはできそうにない。

 ノブナーガやジェノを頼る手もあったが、いつも忙しそうに家を空けているおっさんたちに、これ以上の厄介事を押し付けるのも忍びないからな。

 今回の一件は、俺たちで解決しようと心に決めた。

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