表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして布は幼女を護る  作者: モッチー
第2章「絶対もふもふ戦線」
37/209

おはようございます

 眠いよぅ。

 あと50年くらい……おっと。

 ノンキして眠っている場合じゃあない、あれからどうなった?

 なんだか真っ暗だな。

 転生した最初の頃を思い出すこの閉塞感……ひょっとして、また宝箱の中か。


 ということは誰かが来るまで待機ってことですかね?


 ……あ、そうだった。

 もう幼女神様とは、お話できないんだったな。忘れてたぜ。

 いずれまた会えるみたいだから寂しくはないけども……うーむ、あの時は幼女神様がいたから話し相手には困らなかったんだよな。

 こうしてひとりで暗闇の中にいるのは、どうにも気が滅入る。

 拷問のような一カ月にも及ぶ耐久しりとりも、こうなってみると天国のような時間……とは言い難いが、まだマシだったと思う。

 ま、まあ、いずれにしてもミラちゃん辺りがすぐに来てくれるだろう。

 どういう理由で箱の中に入れたのかは、その時にでも聞けばいい。

 それまで色々と確認しておかいないとな。

 主に、ステータスとかスキルとか。


 おかしな夢を見たのだが、その内容が思い出せない。

 それ自体はよくあることだが、少しだけ覚えている部分もあった。

 システムメッセージめいた、奇妙な文章が流れていたところだ。

 たしかステータス表示がどうとか、スキル改定がどうとか……。

 まるでゲームの修正やアップデートみたいだが、恐らくあれは、この世界を運営している神様からの通達かなにかだったのだろう。

 元々、SPなんて正式な呼び方もわからん物を使ってスキルを習得できているのだから、ゲーム的なメッセージが飛んで来ても不思議じゃない。

 内容的にも、インテリジェンス・アイテムを対象としていたような気もするが……やはり夢の中のことだけあって記憶が曖昧だ。

 とにかくステータスを見ればハッキリするだろう。



――――――――――――――――――――

【クロシュ】


レベル:74

クラス:魔導布

ランク:☆☆☆(シルバー)


○能力値

 HP:1500/1500

 MP:3000/3000


○上昇値

 HP:C

 MP:B

攻撃力:D

防御力:D

魔法力:B

魔防力:B

思考力:F

加速力:F

運命力:F


○属性

【無】


○スキル

 Sランク

 【簒奪】


 Aランク

 【進化】【ステータス閲覧】【支配】【呪縛】【合体】【武装化】

 【近距離転移】【魔眼・鑑透暗予】【看破】【隠蔽】【知識の書庫】


 Bランク

 【念話】【HP譲渡】【MP譲渡】【消費MP半減】【魔力操作】

 【属性付与・光炎水】【属性耐性・炎風闇】【属性空間】


 Cランク

 【採寸】【変形】【色彩】【察知】【自動修復】【自動洗浄】【魔力放出】

 【防護結界・被膜・大盾】【警報】【緊急】【異常耐性・痺】【異常付加・痺】


○称号

 【成長する防具】【インテリジェンス・アイテム】【説明不要】

 【技巧者】【思索者】【炎獄の征伐者】【魔導布】【受け継がれし伝説】

 【最古にして最強】【強欲の片鱗】


SP:513

――――――――――――――――――――



 なんなのん?

 うーむ……色々とワケがわからないが、ひとつずつ行こう。


 まずレベルがやばい。前はどうだったっけ?

 たぶん40くらい上がってると思うんだけど、なにがあったの?

 身に覚えがないから、装備しているミラちゃんがレベル上げをしたとしか考えられない。また暗殺スライムでも狩ってたのかな。


 次にクラスが……まどうぬの?

 ルビくらい振ってくれよ。読めないよ。

 以前の呪われた布よりは良くなっていると思うし、布であることに変わりはないから、大きな変化はないだろうけど。


 で、ランクとやらだが、ここってレア度じゃなかったっけ?

 星が三つでシルバーだから、これはレア度の表示が変わったと考えるべきか。

 最高ランクは星何個なんだろう。


 HPとMPはレベルも上がったし当然こうなるわけだが。

 上昇値はどうしてこうなった?

 具体的な数字が撤去されて手抜きのステータス表示になってしまったぞ。

 この辺りを担当している神が、管理するの面倒臭くなったとしか思えんな。


 属性は無か。

 うん、最初から属性なんてなかったし強調しなくてもいいよね?

 嫌がらせ? おまえ属性ないから無って書いとくわ、っていう嫌がらせなの?

 あれか、前に担当してる神は頭が悪いとか罵ったせいなのか。反省してまーす。


 えーっと、次はスキルだが随分と見やすくなったような、そうでもないような。

 こっちもランク分けされるようになったみたいだ。

 一番は幼女神様から頂いた【簒奪】か……まあ当然だろう。

 あの方からの送り物が低ランクであるはずがない。

 もし【神衣】が残っていたら、きっとランクEXとかになってただろうな。

 新しく【知識の書庫】があるけど、これはスキル枠に入っただけで内容は以前と同じみたいだ。

 他には【鑑定】と【透視】に【暗視】、それと【予知】の四つが【魔眼】で一括りになっているくらいで変わったところはなかった。


 称号は、いくつか増えているな。

 順番に詳細を見ようか。



【魔導布】

 世界に知られた二つ名。魔法に関するすべてに大幅な補正。


【受け継がれし伝説】

 ひとつの家系にて代々受け継がれた物。該当家系に装備されると効果アップ。


【最古にして最強】

 現存する中で最も古くて強いインテリジェンス・アイテムに送られる称号。


【強欲の片鱗】

 ▽■○△◆○▲□●△◆○▽■。



 なんだか、もう本当によくわからんな。

 まどうぬの、は良いとして、受け継がれし伝説?

 それに最強はともかく最古?

 一番下のは文字化けでもしてるのか、まったく読めないし。

 俺が強欲ってのを完全に否定できないのは悔しいが、だいたいみんな強欲だろ。

 ひょっとして称号を担当する神が間違えて俺に付けちゃったんじゃないのか。

 もしくは幼女神様みたいに勢いで付けたかだな。

 みたい……というよりも本当に幼女神様じゃないよな?

 あり得そうだけど真相は闇の中だ。


 最後にSP513……まあレベルもたくさん上がってるからね。

 ミラちゃんに感謝して大切に使おう。


 ふう、だいたいこんなところか。

 結局よくわからない部分が多かったけど、眠っている間の出来事を聞けば少しはわかるんじゃないかな。

 そうなると、よりミラちゃんが来るのが待ち遠しいなぁ。

 早く来てー。早く来て―。


「……をここへ」


 お、なにか聞こえたぞ。

 まさか本当に来た? ミラちゃん来たの? これで勝つる?


 そわそわしながら待機していると、静寂と常闇の中に一筋の光が走る。


 おおお、このシチュエーションは覚えがあるぞ!

 あの時はディアナだったが、今回はミラちゃんだな?

 さあ、今こそ再会の時だ!


 完全に闇が取り払われ、外部の光景が視界に飛び込んでくる。

 そこに、いたのは……。


「おおっ……!」

「あ、あれが【魔導布】ですか」

「伝説に謳われるインテリジェンス・アイテムの……っ」

「初めて見ました……」

「前回は何十年と前でしたからな。貴殿の歳では無理もないでしょう」


 おっさん、ヒゲおっさん、ハゲおっさん、デブおっさん、最後におっさん。

 なんと、おっさんのオンパレードだ。


「ごほん……静粛に」


 そう注意したのは、近くにいた堅物そうな……おっさん。

 おい、おっさんしかいねーのかよ!

 ミラちゃんは? ねえミラちゃんは!?

 地獄の光景に錯乱しつつ、よくよく見回すと視界の端に奇妙な物体を捉えた。

 頭にすっぽりと三角の頭巾みたいな物を被り、顔の部分には銀色の仮面、全身をローブで覆い隠した世にも怪しい4人組が立っていたのだ。

 格好は似ているが配色が異なり、右から順に青、白、緑、黄色をしている。

 そいつらの背が低く、こちらが一段高い壇上にいるのに加え、最初に大勢のおっさんが見えたのに気を取られて反応が遅れたが……なんだあれ。

 傍目には奇妙かつ不気味な存在だが、俺が気になったのはそれだけじゃない。

 どうにも俺は、その4人から目が離せなかった。


「この選定方法を知らない者もいるので、確認の意味も込めて説明する」


 理由がわからず、もどかしさを覚えていると近くの堅物おっさんが口を開いた。

 おっさんの話によると、これはナントカ家の当主を決める集まりで、それを決めるのは、たぶん俺のようだ。

 たぶん、というのはさっきからマドーフ、マドーフって連呼していることと、その視線の先が俺に向いているっぽいことから魔導布……つまり俺だと推測した。

 なるほど、まどうふ、か。

 麻婆豆腐や湯豆腐の親戚かと思ったよ。

 しかし、なんで俺が当主とやらを決めなきゃならないんです?


 さらに、おっさんの話は続いた。

 

「さて、周知のことと思われるが念のために言っておくことにしよう。この【魔導布】なるインテリジェンス・アイテムは、今からおよそ300年前の聖女ミラより、代々エルドハート家に受け継がれてきた宝具である。故に――」


 ……え?

 ちょっと、待って。なんだって? 今なんて、言った?

 ミラちゃんが聖女だと?

 それは違うよ! ミラちゃんは天使ですから!

 大天使ミラちゃんと幼女神様が合わさり最強になるんです!

 おっさん方には、それがわからんのですか!


 じゃなくて……300年前?

 またまた、ご冗談を。

 そんな時間が経ってたら人じゃなくなった俺はご覧の通りで問題ないけど、人間であるミラちゃんたちは……ほら、ねえ?


 ……マジで? 本当に?


 それは、気の毒に……ってトチ狂ってる場合じゃねえ。

 どうするの。これ、どうしたらいいの?

 どうしようもないじゃん……ミラちゃんいないじゃん……。

 なんか新たな聖女の誕生を祈ってとか言ってるけど、そんなの俺からすればどうでもいいし……。

 待った。

 たしかミラちゃんから代々とか、受け継がれて、とか言ってたよな。

 ということは、ひょっとしてあれってミラちゃんの子孫なのか……?


 改めて候補者らしき四人を見つめてみる。

 妙に気になっていたのは、そのせいだった……という可能性はないな。

 そんなスキル持ってないのだから、俺に血縁者を判別できるわけがない。

 だが話の内容からすると子孫という予想は間違ってなさそうだ。

 つまり、俺はミラちゃんの子孫に装備されることになる。


 ……もし本当に、あれから300年も寝ていたとして、もう二度とミラちゃんにも会えないのだとしたら。

 それは悲しいが、本来の俺の目的は幼女に装備されることだったはず。

 だから、いずれはこうなる時が訪れていただろう。

 別れが少し早まっただけの話なのだから……。


 よし、落ち込んでばかりもいられないな。うん。

 ひとまずミラちゃんを護るという誓いを果たせなかった今は、子孫である彼女らを護ることで代わりとしようじゃないか。どうせ目当ての幼女も近くにはいなさそうだし。

 ちなみに、なぜ顔も見えないのに彼女だとわかったかと言えば、さっきから聖女がどうのと言っているからだ。

 これで男が俺を受け継ぐなんて展開はないだろう。ないよね?


 おっさんの長い話も、そろそろ終わりそうだった。

 次はいよいよ当主となる者、俺を装備する者を選ぶのだろうが、ちょっとその前に思い出したことがある。

 あの夢……たしか進化がどうとか書いてなかったかな?

 あれはスキル欄の【進化】を使えということだと思う。

 恐らくこれによって、俺はさらに強くなれるはずだ。

 ミラちゃんの時は色々と危険な目に遭い、幼女神様のおかげで助かった場面が多かった。しかし幼女神様がいない今となっては自力で対処するしかない。

 ならば、今後はより一層の強さが求められるだろう。

 進化……やるっきゃない!


 すぐさまスキル【進化】を選択すると、少しずつ俺自身が光を放ち始める。

 あれ、ちょ、これヤバいんじゃ……すごい目立つ! 目立っちゃう!

 こういう厳粛な空気で目立つのイヤなんです! やめて!

 光よ収まれ! 収まってください! 進化キャンセル! お願いします!


「な、なんだ……【魔導布】が光って……!」


 あ、おっさんがこっちに気付いちゃったぞ。

 それからも放たれる光はドンドン強くなって、もうみんな大慌てだ。わーい。

 はっはっはっ、もうどうにでもなーれ。


 俺も眩しくてなにも見えないけど、みんなが凄まじく混乱しているのはサウンドオンリーで把握できる。

 これって俺の責任になるのかなぁ……。

 人間じゃないから見逃してくれたりは、あまり期待しないでおこう。

 それより、なにか上手い言い訳はないか。

 ……こうなったら!


〈私の眠りを覚ますのは誰だ……?〉


 俺は【念話】の範囲を周辺すべてに指定した。未だに騒がしいけど【念話】なら関係ないからね。

 さっきの堅物おっさんの話では、俺はずっと眠り続けて今もなお目覚めていないことになっていたはずだ。

 つまり、この光は覚醒によるもので、俺に責任はない。

 それどころか、この場に俺を装備する資格を持つ者がいることで始めて目覚めたのだという辻褄も成り立つし、当然の帰結であると言える。

 よし、この方針でゴリ押すぞ!

 ようやく【進化】による閃光が収束した頃に、重ねて伝えておく。

 たしか、まどうふ、だったよな。


〈この【魔導布】クロシュの眠りを覚ましたのは、誰だ……?〉


 よし、決まったな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ